本州各地からの移住者たちによって発展してきた北海道は、その風習にも本州各地の影響が色濃く残っているところがある。日本各地の風習を研究している講師から、北海道内の季節の行事からその影響の濃淡を学んだ。
昨日夕刻、札幌市豊平館において講座「北海道ってどんなとこ? ~季節の行事をふりかえりつつ~」題して、元北海道博物館学芸員の池田貴夫氏の講義を拝聴した。
池田氏は通常の講義とは異なり、面白い手法を用いた。それは10年前に岐阜県から届いた中学生からのアンケート調査を私たちに答えてもらう形で進められた。そのアンケート調査とは、中学生の夏休みの自由研究のアンケート調査だったようだ。そのアンケートの内容は地域行事に関する内容だった。
例えば、それは次のような質問からなっていた。
1.正月についてお聞きします。
①雑煮の形は何ですか。 丸 ・ 四角 ・その他( )
②雑煮の味つけは何ですか。 しょうゆ ・ 赤みそ ・白みそ ・小豆
その他( )
③雑煮の具は何ですか。( )
④地方独自のおせちはありますか。ある場合は( )にご記入ください
ある( ) ・ない
⑤正月に食べる地方独自の行事食・郷土料理等があればご記入ください。 ( )
⑥門松やしめ飾りの飾り方について教えてください。
( )
⑦正月についての有名な行事や風習があれば教えてください。
( )
といった感じで、小正月(どんど焼)、節分、桃の節句、端午の節句、七夕、十五夜、大晦日などについて正月と同じように細かな質問が続いていた。
講座は私たち受講者が中学生の質問に答えたことを素材に進められた。
その答えは私たちの子ども時代のことを思い出して答えてほしいという講師の池田氏の要請を受けて答えたものだった。すると面白い傾向が現れた。それは受講者たちの先祖の出身地によって微妙な違いが表れてきたことだった。
ここで池田氏は北海道人の先祖が何処から移入してきたのという統計を提示した。それによると、多数を占めるのは東北、北陸地方が多いことが分かったが、四国からの移住者も目立った。そして北海道の地方によっては出身県の風習を色濃く残しているところ、また別のところでは出身県の風習をそれほど引き継いでいないところもあり、北海道によってもその実態がさまざまなようであることが分かった。
※ 北海道に移住した県別移住者のグラフです。左の青森県から南の県へ順に表したグラフです。
講師の池田氏は北関東の出身ということだったが、北海道に来て驚いたとこは大みそかにおせちを食べるという風習だったという。
※ 北海道では年越しにおせちを食する風習が、本州出身の講師には驚いたそうです。
また、北海道が産み出した独特の風習として「板カルタ」を挙げた。さらに時代とともに出身地の風習がだんだんと薄まり、北海道独自のものに変化している風習もあると指摘した。その中で、比較的出身地方の風習を現在でも色濃く残しているのは函館などの道南地方だという調査の結果も話された。
※ 北海道では下の句を読み上げて競う百人一首が一般的でした。
講義の手法に面白い試みをしていただいたためもあり、テーマの「北海道ってどんなとこ?」というについてはイマイチ印象が薄くなった感は否めないが、講座全体としては受講者が興味を抱き、積極的な発言が目立ち楽しい講座となった感が印象に残る講座だった。