共生社会を目ざす社会の動きは今や世界の流れである。障害がある人も、ない人も共に心豊かに生きていける社会が求められている。共生社会を目ざして札幌の街も変わろうとしている実状を聴いた。
昨日午後、札幌グランドホテルにおいて札幌市などでつくる「共生社会ホストタウン連絡協議会」の主催による「共生社会バリアフリーシンポジウム in 札幌」に参加した。
シンポジウムは、①オープニングステージ、②基調講演、③自治体からの取組報告(札幌市)、④パネルディスカッション、⑤国土交通省からの報告、と盛りだくさんの内容だった。
私は当初全日程に参加するつもりでいたのだが、半袖でのシャツで参加したため会場の冷房が効き過ぎて、それに耐えられず④、⑤には参加せずに退出してしまった。したがって、①~③まで参加できた部分についてレポしたい。
オープニングは「ぽっかぽっか’s」というトランペットとピアノ演奏で始まった。「ぽっかぽっか’s」のトランペット奏者の鈴木由紀さんは事故で右手、右足に障害が残ったのだが、片手で演奏できるトランペットを用いて演奏活動をされている方である。私は以前にも彼女たちの演奏を聴いたことがあったが、障害を抱えた方々に勇気を与える活動を続けているのは素晴らしいことだと思う。
※ 演奏する「ぽっかぽっか'S」です。
続いては、網走出身のパラアルペンスキーヤーだった狩野亮氏による「パラリンピアンとして生き、今思うこと」と題する基調講演を聴いた。狩野氏は2010年のバンクーバーパラリンピックで、滑降競技などで2個の金メダルを獲得するなど、優秀な成績を残された後、現在は引退されて社会貢献活動を精力的に展開されている方である。
※ 講演をする狩野亮氏ですが、手振れが酷い写真となりました。
講演では狩野選手の現役時代の滑降競技の様子が映し出されたが、スキーを嗜む私からしても相当なスピードで滑り降りる競技の厳しさを実感させてくれる様子を見させていただき、パラリンピックスキーのレベルの高さを実感するものだった。
現役を引退した今、狩野さんはヨーロッパで盛んな車いすの操作技術を向上させる組織を知り、そうした動きを日本にも取り入れるために努力したいと語った。真の共生社会を実現するために狩野氏のような存在は貴重だと思えた講演だった。
私が参加した中で最も感銘を覚えたのは、札幌市長の秋元克広氏による「札幌市の取組報告」だった。札幌市では「街づくり戦略ビジョン」の「まちづくりの重要概念」として①ユニバーサル(共生)、②ウェルネス(健康)、③スマート(快適・先端)、の三つを掲げているという。
そして共生社会をさらに推し進める事例として、現在、地下鉄において車いす使用者のために地下鉄の乗降の際に駅員が対応しているが、近いうちに電車への乗降の際に駅員の介助が必要ないような電車の構造を実現するための準備を進めているとのことだった。また、新幹線の札幌延伸に伴う駅周辺の改造にあたっても共生社会を推し進めるための工夫を随所に計画しているが、新幹線の延伸計画が遅延することとは関係なく計画を進めていると断言された。
※ 札幌市の取組みを報告する秋元札幌市長です。
私が感銘するのは、秋元札幌市長の姿勢である。札幌が推進しようとしている施策について市長自らが市民に説明しようとする姿勢である。私はこれまで様々なところで秋元市長ご自身が札幌市の姿勢や施策について市長自らが直接市民に説明する姿に、秋元市長の姿勢の素晴らしさを感じていたが、今回もそのことを感じさせてくれた。
私は別に秋元氏の札幌市長として、あるいは政治家としての秋元氏の姿勢を云々するつもりはないし、秋元氏を応援する立場でもない。しかし、折々に秋元市長自らが市民に対して札幌市がやろうとすることを説明されている姿には共鳴を覚えるのである。
秋元氏が札幌市長を務められているかぎり、札幌市が共生社会のさらなる進展に向かって街づくりが進められるだろう、という期待を抱きながら会場を後にした。