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私の札幌生活も17年目を迎えました。これまでのスタイルを維持しつつ原点回帰も試み、さらなるバージョンアップを目ざします。

映画 武士の一分 №326

2021-10-12 18:10:19 | 映画観賞・感想

 庶民や下級武士の哀歓を描くと右に出る者はいないと言われる藤沢周平の作品を名匠・山田洋次監督が映画化したものである。主演の木村拓哉が思いのほかとも思える演技で、上質の作品に仕上がった作品だった。

        

 昨日レポしたように、私が所属する生涯学習グループ「めだかの学校」の今年度後期の学びとして、藤沢周平作品を映画化したものを6回連続して観賞し、その感想を交流することにしている。その1本目が昨日上映された「武士の一分」である。

 映画は2006(平成18)年制作で松竹から配給された映画である。作品の舞台となる東北の小藩・海坂藩の下級武士で剣の腕はあるもののそれは生かされずに毒見役に軽んじられている三村新之丞(木村拓哉)は妻の加世(壇れい)と慎ましく暮らしていた。ところがその毒見役の役目でつぶ貝の刺身を試食したのだが、貝毒のために死線をさまよった末に失明してしまう。ここから新之丞の運命は暗転してしまうのだった…。以下はネタバレとなるため省略するが、主題は故事ことわざに「一寸の虫にも五分の魂」ということわざがあるが、そこから着想を得たものだろう。つまりいくら下級武士とはいえ、上役からあまりにも虐げられたときには命を賭して反撃する魂があるという、武士としての誇りを描いたものと私は解釈した。

  

※ 盲目の新之丞が仇敵の藩の重臣島田藤弥(坂東三津五郎)と対決するシーンです。

 さてこの映画で主演を務めた木村拓哉であるが、多くの関係者からその演技力が評価されている俳優の一人である。私はそれほど多く彼の演技を観たわけではないが、彼の演技を見ていると巧さゆえの木村拓哉の臭いを感ずる場合が多かったように思える。(そこがいいのだ!というキムタクファンが多いのだと思うが…)ところがこの作品においてはその木村臭さをあまり感じなかった、というのが正直な私の感想である。特に彼が失明してからの所作や失明したがための目の動きなど、その自然の動きは私を画面にくぎ付けにした。(山田監督の指導?それとも木村の持って生まれた巧さ?)

 ストーリーの展開も良かった。新之丞はある屈辱的な事件のために妻を離縁してしまった。しかし新之丞はそのことを悔いていた。そして、それからは奉公人の徳平(笹野高史)が作る不味い食事に耐えねばならなかった。そんなある夜、徳平は飯炊き女を招き料理を作らせた。その料理を口にした新之丞はその味に記憶を揺さぶられたのだった。その味は紛れもなく離縁した妻の加世の味だった。

   

※ この映画の主要な三人である新之丞、加世、徳平が揃ったシーンです。

 恐る恐る新之丞の傍に寄った加世は新之丞に問いかける。「私が、お分かりでがんしたか?」すると新之丞は「アホだの~、お前の煮物の味を忘れるわけねぇ。」

 徳平の温かな配慮が二人を復縁させたのだった……。 ジ・エンド…。

 映画を観終えた私はしばし感動と共にエンドロールを見続けた。何よりも木村拓哉の自然な演技がそうさせたのだと思った。併せて、木村拓哉、壇れい、笹野高史の三人が醸し出す温か~いやりとりが私をほのぼのとした気持ちにさせた。何よりもバイプレイヤーとしての笹野高史の存在感は素晴らしい!!!



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