糖尿病といえば内服薬やインスリンで治療中の患者さんには低血糖発作という心配がつきまとう。血糖値がさがりすぎておこる種々の症状である。軽ければ、イライラ感、手の振るえ、冷や汗、空腹感などがあり、重ければこん睡状態になる。教科書にはこの程度しか記載がない。ところが実際の臨床ではこのような症状を知っていてもまだまだ事足りないのである。大体、症状が軽ければ患者さんが察知して「あ これは血糖が下がっているな。飴をなめよう」と自ら悪化を防止する。重症の低血糖なら意識がなくなるので、周囲の人はあわてて救急車をよんで病院に直行する。ところがその中間の状態、あるいは非定型的な症状の場合がもっともやっかいなのである。どだい症状なんてもともとごまんとある。最初からその疾患が念頭にないと見つけられるわけはない。見つければ名医、見逃せば「ヤブ」というのは荷が重い。しかも見つけても「低血糖になったのは薬のさじ加減が悪いためであんたのせいだろう」と言われかねない。辛いはなしである。