さてそのMartinであるが当時はD-18、D-28、D-35の3機種が人気モデルであった。とにかく間近で見たことはない・・、いや、さんざんあるといったほうが正しい。それは当時御茶ノ水のK楽器と言うところが日本で唯一の代理店をしており、当時店内のガラスのショーケースには大量のMartinがつるされていた。自分はそこに毎週のように通ってただ指をくわえながら硝子越しではあるが10cmの距離でうらめしそうに穴があくほど眺めていた。1960年代後半でも確か20万円以上の値札がついていた記憶がある。たぶんラーメン1杯80円くらいの時代であった。当然、近くで生音など聞いたことはない。ライブでマイクを通しホールの遠くで聴く程度だったがそれでもその音色と音圧に感動した。しかしながら直接近くで原音に触れて感動したことはなかったのである。まあ周りから「やっぱりMartin は凄い」とさんざん聞かされ続けてきた経緯がある。そのため、音色そのものの価値判断よりも、神格化されたその偶像を崇拝していたのかもしれない。