それから、途中経過の報告や今後の相談事も含めて何度か彼と会った。ある時「そういえば、吉田さんにはまだD-45弾いてもらったことがなかったですよね。今のうちに是非弾いてみて下さいよ」といわれた。確かに他のギターは弾かせてもらったが、肝腎のD-45だけは弾いたことがなかった。しかし前述の如く自分には強烈なD-45の刷り込みはないし、実際自分のプレイスタイルにはあわない機種なので是が非でもすぐ弾きたいという感覚ではなかった。まあそのうちに機会があれば弾かせてもらおうと思っていたのである。そしてここにきて「今のうちに」といわれたものの、「今のうちに」という言葉の意味は「自分が生きているうちに」ということである。そう言われて「はいそうですか、じゃあ今のうちに」という言うわけにはいかない。しょうがないので「病気が治ったらそのあかつきに弾かせてもらいましょう」と彼に告げた。結局、彼のD-45に触ることは以後なかったのである。