彼も壮絶な「マーチン探しの旅」をしていた。しかも最高級モデルD-45の悪性サイクルに嵌っていた。これではお金がいくらあっても足りない。彼も自分と同様、初めてMartinを購入する際、試奏してみて「ん? こんな程度の音だったのか?」と疑問に思ったそうである。そして近年の量産品は当たりはずれがなく品質は均一であるものの、昔ほどの質の良さはないと彼も感じていた。したがって過去の中古品を探すしか道はなかったのである。ところがこれも後になって気がついたが1960年代、1970年代のものは、保存状態が悪いものもある。昔のものであればみんなよいわけではない。確かに昔のものは職人の丁寧な手づくりであった。そして近年ものよりも木材が豊富であったためいい材をつかっていたらしい。しかしながらやはり当たり外れも結構あり、今ではそんな程度の悪い中古ものでもビンテージと銘打って高値で売っているショップもあるのだ。しばらくしてからであるが自分も「ビンテージ=良品」ということが幻影であることに気がついたのだ。