外傷による創の治療であるが、まず初期は出血を止めることである。その次はいかにその場所の機能を温存しながら修復してあげることである。つまり指などぎりぎりぶらさがってくっついているような深い傷でも、いかにもとに戻すかを考慮するのである。大昔、東北地方の田舎の病院に勤めていた時の話である。いかにも「その筋」とわかる人が、左の小指の末節骨から切断したケガで来院した。切断した指先も持参した。「あ~、どうしますか?ちょっとこの指つなぎ合わせるのは無理だと思いますよー」と言ったところ、「な、なにいうんだ、つなぎ合わされちゃ困るんだ、創だけ縫ってくれ」とのこと。そういわれたので指先の断端形成をして縫合した。処置も終わり「この切断した指先どうします?こちらで処分しておきましょうか?」と言ったところ、「じょ、冗談じゃない、この指が大事なんだ、返してくれ」と・・・。切断された指先をお返ししたがその後その方は二度と病院にこられなかった。今あの方はどうしているのだろうか? 傷は感染しなかっただろうか? というかあの「落とした」自分の指はどうしたのであろうか? たぶん「落とし前」に使用したのであろう。<o:p></o:p>