生徒それぞれ火熾しの方法が微妙に異なっていた。火熾しの材料は古新聞、薪、コークスの3種類であった。自分のやり方であるが、最初は古新聞をひろげてそれをくしゃくしゃに丸めた「団子」を数個作り、ストーブ燃焼炉の一番下に置くのである。そしてその上に薪を乗せるのであるが、ここで硬くて大きな薪をいれても火は薪には移らないのでダメである。自分はまず薪の周りの木の樺(皮)を何枚も剥がし、それを丸めた紙の上にそっと疎らに置くのである。この皮はもちろんよく乾いたものでなければならない。そして置き方はなるべく空気が下から上に流通しやすいように隙間をあけておくのがポイントである。紙の火がいきなり太く湿った薪に移るわけはない。火熾しの下手な生徒はこの当たり前のことがわかっていないのである。下手な生徒は新聞紙が燃え尽きても太い薪の周りを少し焦がすだけで火は熾らず、しかも教室中、白煙を充満させていたのである。ここでいかに少ない白煙で薪に火をつけるかは腕の見せ所でもあった。<o:p></o:p>