当然、縫合後は汚染創だったので感染が心配である。ドレーンは入れておいたのでとりあえず毎日は包交が必要である。ところが酔客のほとんどは旅行客である。いつもこのパターンであり明日には帰るため縫合後の当院通院ができない。「帰宅したらすぐに近くの病院に行ってくださいね。傷は感染するおそれがありますよ」ときちんと話はする。まあほとんど覚えていないのであろうが、いずれにせよその後の創の様子をフォローできないのはこちらとしてもとてもつらいのである。自分の処置した傷は、たとえそれがとんでもない酔客でどんなに迷惑をかけられようとも、きちんと治ってほしいと思うのである。まあ患者のためというよりも自分の処置のしかたが正しかったかどうかの確認といったほうがよい。で、この患者の経過は知らないが、縫合する時、麻酔があまり効かなかったのは患者の酒が強かったのではなく、どうも麻酔薬のアンプルの残量からすると局所麻酔薬を通常の半分しか使っていなかったようなのである。大昔のことなので自分もよく覚えていないが、これが意識的か無意識のものなのかは神のみぞ知るところである。でもきっと神様は許してくれると思うのだが・・・。<o:p></o:p>