吉田クリニック 院長のドタバタ日記

日頃の診療にまつわることや、お知らせ、そして世の中の出来事について思うところ書いています

知らぬは私だけ? その7

2011年02月09日 06時55分12秒 | インポート

 認知症の症状は多彩である。この時初めて認知症の患者さんとじっくりと診療させていただいた。もっとも1年弱も認知症だと認識せずに外来診療していたのだが大きな事故もなくてよかった。認知症の特徴は「自分が物忘れしたことに気がついていないこと」である。例えば「約束の時間が何時だったか忘れていました」というのは約束した事実を覚えているので認知症ではない。ところが「時間の約束なんかしていませんよ」と約束した事実を忘れてしまうのが認知症である。つまり過去の行為や事実を忘れてしまうのが特徴なのである。したがって時にトラブルの原因となるようである。


知らぬは私だけ? その6

2011年02月08日 06時20分40秒 | インポート

 それにしても本来あってはならないのだが、どこの世界でも担当者が交替すると受けられるべきサービス内容が低下する傾向がある。しかしファストフード業界だけはマニュアルを遵守させることにより、いつ、どこにいっても均一なサービスを受けられる。半面、サービス内容は画一的であり、サービス内容の低下はないもののそれ以上も期待できない。どちらが良いのか結論は出ないが医療現場で患者さんが長年にわたり通院し、外来担当医が4人目にもなると、この人は当初何で通院していたのか最初のいきさつが見えないこともある。幸い外来通院当初から外来看護師に交替がなく数年来の経過を知っていたため事なきをえた。しかしながら患者さんを多人数でフォローアップすることの問題点も認識したようだ。


知らぬは私だけ? その5

2011年02月07日 05時58分04秒 | インポート

 しかしどう考えても処方日数と来院サイクルがあわない。「あっ す すみません、そっ そうでしたね。毎月来られているし・・・」 あまりの毅然とした態度にこちらも怯んでしまいそう答えざるをえなかった。しかしその患者さんの診察終了後に外来の看護師に唐突に言われた。「あれ、先生知らなかったの? あの患者さん痴呆症(現:認知症)ですよ。 広い庭で毎日花に囲まれている話や、伊豆の別荘の話はみんな作り話ですよー」 えっ?そんな話、聞いてないよー。どうやら脳梗塞で入院中はかなりの神経症状はあったのだが外来通院中に徐々に軽快しつつ現在の状態にようやく落ち着いたようであった。だからこれでもかなり「いい状態になった」のだそうだ。この流れは外来では周知の事実のようだった。長年にわたり4人も医者がかわるとなかなか最初のニュアンスが伝わらない。まるで伝言ゲームで情報の正確性が徐々に減衰していくような感じである。あ~恥かいた(笑)。


知らぬは私だけ? その4

2011年02月05日 07時17分03秒 | インポート

 外来を受け持って1年弱が経過したが、こちらとしてもいつお役ごめんになるかもしれないリリーフ投手である。しかし怠薬している患者さんに対してはきちんとした服薬指導も必要である。しかも血圧はあまりコントロールされていない。「さて、どうしたもんか」と思いつつもリリーフの身の上なのであまり出すぎた厳しい指導も控えていた。ある日、なにげなく「あの~きちんとお薬飲まれていますか?」と聞いたところ、目を丸くして「えっ? きちんとかかさず毎日飲んでいるじゃないですか。しかも毎月必ず通院しているし・・・」と言われた。えっ?? 本当にそうなのであろうかと自分の耳を疑った。あまりにも毅然とした態度で言うので、一瞬こちらの間違いかと思った。


知らぬは私だけ? その3

2011年02月04日 06時44分29秒 | インポート

 この患者さんは高齢の女性である。いつも笑顔ではきはきと受け答えをする。家の庭はかなりひろく、かなり多種類の花を育てているらしい。数年前に都内のお屋敷を売って、ここ隣県の郊外に越してきたと言っていた。毎日水やりをして手入れするだけで半日はかかってしまうが「毎日、沢山のお花たちと会話をしてとても幸せです」と嬉しそうに話していた。また昔のアルバムを持参してくれた。見ると旧制高女時代の写真である。どうやらかなり裕福な家庭に育ったお嬢さんらしい。また時々話の中では「今年の夏はずっと伊豆の別荘で暮らしましたの。緑が多くていいですわよ」と資産家のようである。少し気になったのは薬を1か月分処方するのだが通院が2~3ヶ月に1回なのである。薬ののみ忘れなど怠薬しているそぶりは全く感じられない。でも日数と処方薬の数があわないのである。


知らぬは私だけ? その2

2011年02月03日 06時24分51秒 | インポート

 ある患者さんのカルテを読み返した。数年前に軽い脳梗塞で救命センターに入院した患者さんである。この患者さんの外来担当医は転勤、転任で、すでに何人か交代し自分で4人目である。脳代謝改善薬と降圧剤が処方されているだけで特別な治療はない。隣県から2時間かけて通院されているが別に大学病院の外来でフォローするような状態ではない。こんなに遠いのにこちらまで通院させているのか、あるいは本人が望んでいるのかわからない。しかしながら中には待ち時間が長くても、また通院距離が遠くとも「やっぱり大学病院が好き」という患者さんも数多くいるのも事実である。しかもこの患者さんは数年以上も通院しているので、自分のようなリリーフ投手の分際が「お近くの医院さんに通院してもいいんですよ」と今更、出すぎたことは口が裂けても言えないのである。


知らぬは私だけ? その1

2011年02月02日 06時38分26秒 | インポート

 大学勤務医時代の話である。救命センターでも退院後の患者さん用に「フォローアップ外来」というものがある。当初は教授など上の先生方が受け持っていたが、担当先生の転任などで時々外来に穴があくことがある。自分はその都度リリーフ的に「穴埋め」に狩り出されていた。後年になってからは自分の外来となったが、当時はもちろん後任の先生が決まるまでのワンポイントリリーフであった。まあ「外来臨時補助医」であるので患者さんとは短い付き合いであろう。しかしリリーフであってもまずその外来に通院してくる患者さんのプロフィールや既往を知ることが必要である。その患者さんのカルテで過去の記載をすべて読み直し、どのような疾患で入院し、そして退院後はどのような投薬が行われているかを把握することになる。一時的なリリーフであっても情報がなければ診療できないので過去のカルテを読み返した。


科学研究費 その4

2011年02月01日 06時00分48秒 | インポート

別に特に義理をたてて回答する必要はない。回答する義務もない。忙しい時間を割いて回答しても無償であるし、また「回答ありがとうございました」で済まされてしまう。自分には現在、保健所や役所や患者さんに提出しなければいけない書類が山ほどある。その「山」の中に、このような失礼なアンケートを入れてあげるつもりは毛頭ない。自分も過去、救命士などのプレホスピタルケアに関する調査・研究をやらせて頂いたが、情報を収集するということは並大抵のことではなかった。足を棒にして日参し、信頼が得られるまでには相当な時間と労力と誠意が必要とされた。このようなイスに座って情報収集するという研究姿勢には協力するつもりはない。しかも選択肢の作り方によっていくらでも意図する結果を導けるアンケートという手法に基づいた研究は、その情報処理の正確性やevidenceの信頼性に疑問が残るため研究計画としても賛同はしにくい。いずれにせよ「平成**年度〇〇省科学研究・・・」などと仰々しい表題がついていても、個人研究のアンケート協力であったら、そのままゴミ箱行きである。クリニックのゴミは事業所ゴミなので廃棄すると有料になる。処分料くらい送ってほしいものだ(笑)。(この項終わり)