この患者さんの場合、毎日の花への水やりやら夏の別荘への避暑の話やらをするので、自分はその情景を想像しながら拝聴していた。しかしそれがすべて事実の話ではないとなると少し虚無感を憶えてしまう。病名としては「作話」であるが、もちろん本人には作り話をしているという記憶はない。つまり認知症では、種々の行為において本人はまったく「悪気」はないのである。したがって「何故、そんな嘘を言うの!」と家人が怒ると、本人には作話をしたという感覚はないので「なんでそんなに怒るんだ!」とばかりにトラブルになる。つまり認知症の患者さんをかかえる家庭では「患者さんを諌めてはいけない」のである。認知症と診断されたら家族、同居人は「あきらめて受け入れること」が肝腎だそうである。でも、つらいです・・。