7月22日、「サワコの朝」岩下尚史 を書いた。その時の話を大変興味深く心に感じていたのだが、最近オークションで氏の著書「芸者論」を手に入れた。
第20回和辻哲郎文化賞受賞作だが、同賞の選考委員である梅原猛は、「このように若くして老成した文章という感を強く受けたのは高橋和巳の書いたもの以来である」といっているが、読んでみるとまさしくその通りである。格調の高い作品が毎回受賞しているこの賞の性格からしても、この作品の素晴らしさがわかる。
新橋演舞場という職場環境が、この作品を醸成させるのに適していたことは間違いない。
お妾さんを第二夫人(権妻)として戸籍にのせた時代があったというような話は、秋の夜長の読書の眠気を覚まさせてくれる。
内容紹介
古代から今日にいたる芸者の歴史的変容の姿を解き明かし、その歴史と現状を紹介しつつ都市文化の本質を探る。魅力的な挿話による注釈とともに、実際には全く知られていない東京の芸者や花柳界を都市文化の核と位置づける画期的日本文化論。