天保十五年八月七日、町方根取から町方への通達
今度御花畑内ニおいて重御用物之内金御鍔等別紙之通致紛失、専御吟味有之候得共、成行相分兼候、
依之右御品之内幷余計之金地金質物ニ預或ハ買取且見当等聊カ心付之儀も有之候ハゝ、其段早速可申
出候、若御品柄ヲ恐レ申出候儀ヲ相憚候者も可有之哉、仮令買取且質物等ニ預候ても盗ものたる儀不
心付候て之儀ニ候得ハ勿論御咎等可被仰付様無之候間、少しも不憚可申出候、万一隠置追て相顕ニお
いてハ屹ト御咎被仰付筈ニ候、此段可及達旨候条、左様被相心得、町中不洩様切廻文を以可被相達候、
以上
八月七日 町方根取中
中山仁七郎殿
本行之趣は別当宅へ人呼寄不洩様可被申諭候事
覚
一、近無垢小御鍔壱
タテニミチン(微塵)糸目其外無地
一、御刀敷壱
但黒羅紗ニ浅黄裏付長サ三尺幅壱尺位
一、御服紗弐
但花色絹弐幅袷
殿様がお使いになるのであろう品が突然御花畑邸から消えてなくなったので、町方へも密かに探索を指示している。
こんな大事な品を質に入れること等あり得ない話だが、少々緊迫感が漂っているのが判る。
さてその顛末・・・
同十一日
一、重御品柄紛失いたし候処、御鍔之儀ハ成行相分候ニ付吟味ニ不及段御達有之候
どういうことだろうか。「成行相分候」という言葉からすると、何らかの事情で持ち出されたものの返却が遅れたというほどの事か・・・
殿様かもしれませんな~、まずは一見落着だが関係者は冷や汗ものであったろう。