九ニ〇
九十二
一在中より被召抱候御駕・御手廻御手木之者共之事
此儀、當時迄は支配之小頭より見込を以其者相對之極
方御座候て、村方故障之儀承繕無御座候、然處、右之
内ニは農業第一ニ仕候者被召抱候間、其分之高地片付
方、村方猪て極々難澁仕、其上御奉公ニ被召抱候者は、
御暇被下候ても在所へは罷歸不申、直ニ御家中へ相勤
候歟、或は相應之有付仕、熊本え居住仕、自然と人畜
猥ヶ間敷相成申候、第一御奉公ニ罷出居申候内、折節
在所へ罷歸候ても法外之筋も御座候、別て御手木之者
は大小をも帯参候ニ付、其者之親類共も村内ニても自
然と笠高ニ相成、間ニは強儀成事共も御座候間、右躰
御抱方之節は、村方支配有無御吟味之上御極被下候様、
差候て御奉公被差放候節は、右支配之小頭より、其段
私共方へ答方御座候様有御座度奉存候
[上ノ付札]「此儀、御役所より之付紙寫左之通ニ候様、左様
ニ可被相心得候事
横紙
此儀、御手木之ものハ其通之事ニ候得共、御駕・御手
廻と申内、別て御駕之者は大躰長ヶ之極も有之由之
處、其通之者ハ容易ニ有兼候ニ付、見立次第御抱ニ
相成候、村方承合候ハヽ故障申立不罷出もの多、後
念は自然と不揃ニ可相成候、惣て御大名様方之御駕
之ものハ、大躰於江戸渡りものを被召抱候へ共、陸
奥・薩摩・此方様抔は、御國者之内を御撰セ被召仕
候故、江戸表ニても著ク有之候處、御國者故障ヶ間
敷候ハヽ、後年は自然と江戸渡り者被召仕候様ニ成
行、見苦敷可有之候、此等之儀は御惣庄屋共存不申、
輕々敷申出候と相聞へ候間、委譯を申聞、今迄之通
相心得候様、御手廻之儀は御鑓持之外、強て長ヶ等
之撰有之事とは不相見候間、吟味之上可及達候事」