デレク・ベイリーは2005年に亡くなったが、最晩年の数年間は、スペインのバルセロナに住んでいた。そのときのソロ演奏の映像が、『Live at G's Club』(Incus、2003年)と『All Thumbs』(Incus、2003年)の2枚のDVDとして残されている。
Derek Bailey (g)
完全ソロであるから、演奏においては衰えていないベイリーの姿がそこにある、としか言いようがない。
前者は2004/2/10、バルセロナのジャズクラブでの1時間の演奏。後者は2004/7、どこかの屋上での20分強の演奏。どちらも見応えがある。屋上ライヴはベイリーの指遣いにまでクローズアップで迫っており、短いながら観る価値があると言える。
はっきりと実感できるのは、ベイリーがクリシェやコードに頼って自己再生産を行っていたのではなく、その場で新たなものを淡々と生み出していたのだということだ。ベイリーは内省的でありながら、周囲の環境にも淡々と反応している。その結果として、ベイリーの手癖をこちらが見出したような気になったとしても、それはクリシェではない。
●参照
ウィレム・ブロイカーが亡くなったので、デレク・ベイリー『Playing for Friends on 5th Street』を観る
犬童一心『メゾン・ド・ヒミコ』、田中泯+デレク・ベイリー『Mountain Stage』
デレク・ベイリー『New Sights, Old Sounds』、『Aida』
デレク・ベイリー+ジョン・ブッチャー+ジノ・ロベール『Scrutables』
デレク・ベイリーvs.サンプリング音源
デレク・ベイリーの『Standards』
『Improvised Music New York 1981』
1988年、ベルリンのセシル・テイラー
ペーター・コヴァルトのソロ、デュオ
ジャズ的写真集(6) 五海裕治『自由の意思』
トニー・ウィリアムスのメモ