Sightsong

自縄自縛日記

デレク・ベイリー晩年のソロ映像『Live at G's Club』、『All Thumbs』

2014-06-07 14:34:46 | アヴァンギャルド・ジャズ

デレク・ベイリーは2005年に亡くなったが、最晩年の数年間は、スペインのバルセロナに住んでいた。そのときのソロ演奏の映像が、『Live at G's Club』(Incus、2003年)と『All Thumbs』(Incus、2003年)の2枚のDVDとして残されている。

Derek Bailey (g)

完全ソロであるから、演奏においては衰えていないベイリーの姿がそこにある、としか言いようがない。

前者は2004/2/10、バルセロナのジャズクラブでの1時間の演奏。後者は2004/7、どこかの屋上での20分強の演奏。どちらも見応えがある。屋上ライヴはベイリーの指遣いにまでクローズアップで迫っており、短いながら観る価値があると言える。

はっきりと実感できるのは、ベイリーがクリシェやコードに頼って自己再生産を行っていたのではなく、その場で新たなものを淡々と生み出していたのだということだ。ベイリーは内省的でありながら、周囲の環境にも淡々と反応している。その結果として、ベイリーの手癖をこちらが見出したような気になったとしても、それはクリシェではない。

●参照
ウィレム・ブロイカーが亡くなったので、デレク・ベイリー『Playing for Friends on 5th Street』を観る
犬童一心『メゾン・ド・ヒミコ』、田中泯+デレク・ベイリー『Mountain Stage』
デレク・ベイリー『New Sights, Old Sounds』、『Aida』
デレク・ベイリー+ジョン・ブッチャー+ジノ・ロベール『Scrutables』
デレク・ベイリーvs.サンプリング音源
デレク・ベイリーの『Standards』
『Improvised Music New York 1981』
1988年、ベルリンのセシル・テイラー
ペーター・コヴァルトのソロ、デュオ
ジャズ的写真集(6) 五海裕治『自由の意思』
トニー・ウィリアムスのメモ


ミシェル・ペトルチアーニの映像『Power of Three』

2014-06-07 09:24:01 | アヴァンギャルド・ジャズ

ミシェル・ペトルチアーニの映像『Power of Three』(Blue Note、1986年)を観る。

Michel Petrucciani (p)
Jim Hall (g)
Wayne Shorter (ts, ss)

もう随分とCDで聴いた音源だが、映像でちゃんと観るのははじめてだ(ペトルチアーニを追ったドキュメンタリー『情熱のピアニズム』でも一部挿入されていた)。CDでは、トリオでの演奏「Limbo」からはじまるのだが、このDVDでは、実際の演奏順に、ジム・ホールとペトルチアーニとのデュオ「Beautiful Love」から収録されており、ウェイン・ショーターは後半3曲での参加。こちらのほうが良いかもしれない。

それにしても、予定調和とも思えるほどの完璧なコラボレーションであり、もちろんそれは結果にすぎない。

ホールのギターの音色はひたすらエッジが丸く、増幅の結果、雲の中にいるような印象を与える。ペトルチアーニの一音一音のアタックはとても強靭であり、弾いているところを観ると左手で和音を付けてはいるものの、右手の強烈さがそれを上回っている。ここでは、和音をホールが担うような形。硬くてやわらかく、尖っていて丸い。

●参照
マイケル・ラドフォード『情熱のピアニズム』 ミシェル・ペトルチアーニのドキュメンタリー