Sightsong

自縄自縛日記

ギル・エヴァンスの映像『Hamburg October 26, 1986』

2014-06-08 12:32:27 | アヴァンギャルド・ジャズ

新宿で時間つぶしのために入ったレコード店で、ギル・エヴァンス『Hamburg October 26, 1986』というDVDを見つけた。1000円だった。

ドイツ・ハンブルグでのジャズフェスのテレビ映像らしい。「Up from the Skies」、「Little Wing」、「Sometimes」、「Voodoo Chile (Slight Return)」の4曲が収録されている。「Sometimes」はデルマー・ブラウンの曲かな、あとはジミ・ヘンドリックスの名曲。もちろん、ギルはこの10年以上前に、『Plays the Music of Jimi Hendrix』という傑作を作っている。

演奏がはじまると、そのユルさに意外な印象を持つ。ところが、このあたりがギルの魔術なのか、一見緊密なアレンジでなくても重層的なサウンドが迫ってきて、ひとつひとつの音が、鼓膜だけではなく、身体のあちこちのツボを押すようで、とても不思議。

ソロイストは、ハイラム・ブロック(g)、ビル・エヴァンス(ts)、ルー・ソロフ(tp)、ピート・レヴィン(key, vo)、ハワード・ジョンソン(tb, piccoro)。大野俊三の姿も見えるが、ソロはない。ギルはというと、もちろんキーボードを弾きながらユルく指示を出している。「Sometimes」を高音で歌うレヴィンを、顎を両手の上に置いてうっとりと眺めるギルの横顔が、何とも言えず良い表情。そして、最後の「Voodoo Chile」において、張り切りまくるハイラムとハワードはさすがの迫力。

45分の演奏を観終わって消そうとしたら、あれあれ、別の映像が入っている(プライヴェート盤ならでは)。どうやら、1984年のよみうりランドにおける「Live under the Sky」のテレビ放送のようで、画質は汚い。それでも、ジャコ・パストリアスがゲストとして加わってベースソロをここぞとばかりに見せつけ、血管が切れそうなハンニバル・マーヴィン・ピーターソンの長いトランペットソロ、ジョージ・ルイスの理知的な感じのトロンボーンソロなんかを観ることができた。メンバーの中にいたジョージ・アダムスの姿もとらえてほしかったところだが、拾い物だし贅沢は言わない。

●参照
ギル・エヴァンス『Plays the Music of Jimi Hendrix』
ギル・エヴァンス+ローランド・カーク『Live in Dortmund 1976』
ビリー・ハーパーの新作『Blueprints of Jazz』、チャールズ・トリヴァーのビッグバンド(『Svengali』)


長谷川修一『旧約聖書の謎』

2014-06-08 10:13:38 | 中東・アフリカ

長谷川修一『旧約聖書の謎 隠されたメッセージ』(中公新書、2014年)を読む。

同じ著者の前作『聖書考古学』と同様に、旧約聖書において語られている物語に、歴史的検証の光を当てて読み解いてくれる本である。これがまた、門外漢のわたしにとっても面白い。

ノアの洪水物語モーセの出エジプトヨシュアによるエリコ制服ダビデとゴリアトとの戦いなどは、いまだ史実として確立されていない。この中でも最も「かたい」とみなされ、歴史の教科書にも書かれているのは出エジプトだろう。しかし、これも、時期が不明(おそらく紀元前13世紀)、イスラエル人の数が不明(聖書では大袈裟に書いている)、ルートが不明、十戒を得たシナイ山の場所が不明(現在のシナイ半島にあったのかすら明確でない)、など、など。

聖書は口頭伝承を何らかの意図をもって形にしたものであり、異本も数多い。したがって、これらの物語も、必ずしも歴史と整合せず、長い期間に起きた事象をひとつの象徴的な事件とした可能性もあるのだという。そのルーツやバイアスが、シュメールやアッシリアの時代にあるのだとしたら、なおさらこの時代のことを勉強したくなってくる。(そういえば、大英博物館でもっとも魅かれる展示品は、アッシリア時代の遺物だった。)

●参照
長谷川修一『聖書考古学 遺跡が語る史実』
ジャック・デリダ『死を与える』 他者とは、応答とは 


どん底、沖縄、ノーマン・メイラー

2014-06-08 09:35:06 | 関東

雨の中、久しぶりに新宿三丁目の「どん底」。

OAMを立ち上げたNさんが帰京したこともあり、数人で沖縄の話。の、はずだったが、ジャクリーン・ビセットとかアヌーク・エーメとかマルクス兄弟とかディエンビエンフーとか、当然のように何がなんだかのグチャグチャ。

編集者のSさんに、本をいろいろ頂いてしまった。ジョージ・オーウェル『カタロニア賛歌』の現代思潮社版(岩波文庫版にない写真が多数挿入されている)とか、最近では古本しか手に入らないノーマン・メイラーとか。(ありがとうございます。)

<平林> あの頃、新宿にくすぶっていた奴の夜から明け方にかけての行動パターンは風月堂に4、5時間、コーヒー一杯でねばり、金のある奴はナジャへ。金のない奴はどん底へだった。
<よしお> 言っとくけど値段はどん底とそんなに変わらないの! 水割り1杯で300円だった。
『STUDIO VOICE』1998/9 特集「新宿ジャック1968」) 

●参照
どん底とか三上寛とか、新宿三丁目とか二丁目とか
新宿という街 「どん底」と「ナルシス」