Sightsong

自縄自縛日記

上岡伸雄『ニューヨークを読む』

2014-06-13 07:13:11 | 北米

上岡伸雄『ニューヨークを読む 作家たちと歩く歴史と文化』(中公新書、2004年)を読む。

17世紀、オランダ人がマンハッタン島に植民地を建設し、ニューアムステルダムと名付けた。当然先住民がいたが、島は騙すような形で買い叩かれた。その後、イギリス統治とニューヨークへの改名、独立戦争、南北戦争、大量移民、世界大恐慌、公民権運動、「9・11」があり、その間にも、この都市は発展を続けた。

明らかに見えてくることは、いかに一部(マンハッタン島南部)を除いた地域が田舎であったか、移民や黒人にとっての格差がいかに拡大していったか、発展の上滑りのなかでどれだけ上層の人びとが狂騒的だったか(20年代のジャズ・エイジに限らない)。そして、都市が誰にも鳥瞰できないカオスとなったことが、ポール・オースターやドン・デリーロの目を通じて見えてくる。

本書はアメリカの歴史に紐付けた読書案内にもなっている。これまで敬遠していた本も読みたくなるというものだ。

●参照
尾崎哲夫『英単語500でわかる現代アメリカ』
エリカ・ロバック『Call Me Zelda』
ポール・オースター『ガラスの街』新訳(1985年)
ポール・オースター『リヴァイアサン』(1992年)
ドン・デリーロとデイヴィッド・クローネンバーグの『コズモポリス』
室謙二『非アメリカを生きる』
デイヴィッド・マレイ『Be My Monster Love』、『Rendezvous Suite』(イシュメール・リード)