Sightsong

自縄自縛日記

穐吉敏子@Mezzrow

2015-09-25 15:51:41 | アヴァンギャルド・ジャズ

23:20ころ(2015/9/24)に55 Barを出て、近くのSmallsでJ.D.アレンの演奏を途中から観ようかと思ったところ、満員だった。23:45からの回を待つか、通りを挟んだ姉妹店Mezzrowでアキヨシ・トシコを観るかしてはどうだと言われ、吃驚した。ええっ、穐吉敏子さんが近くにいる。

早速駆けつけてみると、狭いバーは7割方が日本人。NY在住の某ピアニストの姿もみえた。

そして向こう側で、穐吉さんがピアノを弾いている。ベースとのデュオに、少しだけトランペットが加わったようだった。

穐吉敏子 (p)
Steve Whipple (b)
不明 (tp)

穐吉さんを前回聴いたのは、20年近く前だったと思う(神田TUC)。そのときは、バド・パウエルの化身に見えて驚き感激したのだった。

現在の穐吉さんは、たまに指がもたつくこともあったが、バドの香りを濃厚に残していた。バドの晩年についても話す穐吉さん。そして、「Un Poco Loco」を弾き始めると、わたしはなぜか感極まって不覚にも泣いてしまった。涙を拭っていて恥ずかしかった。たぶんバドに対する穐吉さんの想いがこちらで勝手に重なり合ったのだろうが、これは理屈ではない。

演奏後、座っておられた穐吉さんにサインをいただいた。「そんなのお安い御用ですよ」と、さらさらと書いてくれた。

Nikon P7800


ダニー・マッキャスリン@55 Bar

2015-09-25 15:27:54 | アヴァンギャルド・ジャズ

ダニー・マッキャスリンのグループを観るため、The Stoneから55 Barまで移動した(2015/9/24)。演奏がはじまる22時には、狭いバーが立ち見客で一杯になった。前日はマイク・スターンのギグがあって、悩んだのだが結局行かなかった。どれだけ混んだのだろう。

Donny McCaslin (ts)
Henry Hey (key)
Sam Minaie (b)
Mark Guiliana (ds)

グループの目玉は、スーパー・ドラマー、マーク・ジュリアナの参加である。これまでディスクを聴いていると、あまりのハイテクにズルしているのではないかという疑いもなくはなかったのだが、本当に、異常に複雑に聴こえるリズムを叩いていた。もちろん必死の表情で叩いているのだが、それに伴うオチやノリにまったく頼ることがない凄さということなのだろうか。トニー・ウィリアムスがシーンに登場してきたときの驚きは、ジュリアナと比べるとどうだったのだろう。

マッキャスリンも、もちろん必死で吹く。それもジュリアナと同様に、ノリや手癖で処理することを完全に放棄している。ただロジックとメソッドがあり、それらに奉仕する。

最新作『Fast Future』で見せたポップさも満開で、ヴォーカルがいない分を、ヘンリー・ヘイのキーボードがカバーしているように見えた。宇宙人の音楽ではなく人間の音楽だった。

Nikon P7800

●参照
ダニー・マッキャスリン『Fast Future』(2014年)
ダニー・マッキャスリン『Casting for Gravity』(2012年)
マーク・ジュリアナ『Family First』(2015年) 


Pulverize the Sound@The Stone

2015-09-25 14:58:51 | アヴァンギャルド・ジャズ

今週はThe Stoneにてピーター・エヴァンスのレジデンシー。2日前(2015/9/22)にエヴァン・パーカーとの共演を2セット観たが、相手が相手だけに、そこで見せたピーター・エヴァンスの姿はひとつの面に過ぎないに違いない。そう思い、「Pulverize the Sound」を体感すべくまた足を運んだ(2015/9/24)。

Peter Evans (tp)
Tim Dahl (b)
Mike Pride (ds)

エヴァンスは循環呼吸奏法を含め、耳を刺すような音をひたすら吹き続けた。ティム・ダールのエレキベースは、カタルシスとエクスタシーを目指して、3人を煽った。マイク・プライドのドラムスは明日なき勢いを倒れずに持続した。何しろ、バスドラムが動かないように自分の手で押さえてバスンバスンと踏み続ける有様。

1時間の凄まじい轟音だった。「サウンドを粉々にせよ」という指令はハッタリではなかった。

客席にはクリス・ピッツィオコスも現れた。話をしていると、橋本孝之、白石民夫、吉田野乃子といったソロサックス奏者の名前が出てきた。いまのITネットワークは、そのような連携と共有をもたらす。

Fuji X-E2, XF60mmF2.4

●ピーター・エヴァンス
Rocket Science変形版@The Stone(2015年)
エヴァン・パーカー US Electro-Acoustic Ensemble@The Stone(2015年)
チャン+エヴァンス+ブランカート+ウォルター『CRYPTOCRYSTALLINE』、『Pulverize the Sound』(2013、15年)
ピーター・エヴァンス『Destiation: Void』(2013年)
『Rocket Science』(2012年)
ピーター・エヴァンス『Ghosts』(2011年)
エヴァン・パーカー+オッキュン・リー+ピーター・エヴァンス『The Bleeding Edge』(2010年)
ピーター・エヴァンス『Live in Lisbon』(2009年)
ウィーゼル・ウォルター+メアリー・ハルヴァーソン+ピーター・エヴァンス『Mechanical Malfunction』(2012年)
ウィーゼル・ウォルター+メアリー・ハルヴァーソン+ピーター・エヴァンス『Electric Fruit』(2009年)
MOPDtK『Blue』(2014年)
MOPDtK『The Coimbra Concert』(2010年)
MOPDtK『Forty Fort』(2008-09年) 

●マイク・プライド
ヨニ・クレッツマー『Book II』(2014年)
チャン+エヴァンス+ブランカート+ウォルター『CRYPTOCRYSTALLINE』、『Pulverize the Sound』(2013、15年)
マイク・プライド『Birthing Days』(2012年)
ジョン・イラバゴン『I Don't Hear Nothin' but the Blues』 (2009年)
アンドリュー・ディアンジェロ『Morthana with Pride』(2004年)


アダム・ラーション@Smalls

2015-09-24 21:22:57 | アヴァンギャルド・ジャズ

Village Vanguardでのカート・ローゼンウィンケルのギグが終わって、そのまま近くのSmallsを覗く(2015/9/23)。Zinc Barでミーシャ・ピアチゴルスキが演奏しているようなのでそちらにとも思ったが、もう少し先まで歩かなければならず、また最初ピアチゴルスキと演奏する予定だったはずのドラマーのルディ・ロイストンがこちらに入っており、聴いてみたかった。

なお、ピアチゴルスキのグループでは、アリ・ホーニグが叩いているようだった。

Adam Larson (ts)
Fabian Almazan (p)
Joshua Crumbly (b)
Rudy Royston (ds)

アダム・ラーションはいちども聴いたことがないサックス奏者であり、みるからに若い。Smallsらしきハードバップを展開するのかと思いきや、非常に個性的な音色を持ったテナーだった。何しろスモーキーで、フレーズに淀みがない。もう自信満々な感じである。

ロイストンのドラムスはキレキレで、音圧も強く、一番の喝采を浴びていた。ファビアン・アルマザンのピアノは全方位的にバランスが取れていて、きらびやかだった。

ところで何度か来た限りの印象では、このSmallsは不思議なところで、観客のリラックス度が異常に高い。みんな雑談したりスマホを使ったりしていて、中にはイチャイチャしている男女もいる。この日などは泥酔した若い女の子が踊りまくり、観客に「カモーン」と一緒に踊ろうと呼びかけていた(誰も応じなかったが)。それでもみんなが演奏を楽しみ、隙あらば前の良い席に移動してくる。わたしは好きである。

Nikon P7800


カート・ローゼンウィンケル@Village Vanguard

2015-09-24 20:50:54 | アヴァンギャルド・ジャズ

ブルックリンのRouletteからまたマンハッタンへと戻り、Village Vanguardでのカート・ローゼンウィンケルの2nd setに急いだ(2015/9/23)。

Village Vanguardは予約を電話でしか受け付けないところだが、昼間に電話してみると「金土はもうソールドアウト」との留守電で、注目度の高さがうかがえた。そんなわけで夕刻また電話して予約を入れたのだが、電車を間違えて時間がかかり、到着したのは開場の22時を過ぎていた。中はすでに満員だったが、運よく前の方の席が空いていた。

Kurt Rosenwinkel (g)
Eric Revis (b)
Nasheet Waits (ds)

3人があらわれ、おもむろに演奏しはじめたのは、なんとソニー・ロリンズの「Doxy」。しかし、ゆっくりとしたイントロからしばらくすると、最後までずっとインプロヴィゼーション爆発。何がどうなっているのか、ギターをまるでキーボードのように高速で弾きまくるローゼンウィンケル。パッセージも和音も従来のジャズギターとは異質すぎて、わけがわからない。

周囲を見渡すと、ただ呆然として聴いている人と、圧倒されて睡眠に引きずり込まれた人とが目立っていた。わたしもはじめてナマのローゼンウィンケルのプレイに接して、少なからず驚いた。

終わってから、隣に居合わせたミネアポリス在住だというアメリカ人男性が「どうだった?」と話しかけてきた。「素晴らしかった。だけどマニアックで、ショーマンシップがない。かれひとりだけ天国でプレイしているみたいだ」と言うと、激しく同意していた。いや、もちろん素晴らしかった。

Nikon P7800

●参照
Human Feel 『Galore』


エヴァン・パーカー、イクエ・モリ、シルヴィー・クルボアジェ、マーク・フェルドマン@Roulette

2015-09-24 20:26:01 | アヴァンギャルド・ジャズ

前夜に続き、エヴァン・パーカー祭(2015/9/23)。ブルックリンのRouletteに足を運んだ。The Stoneで2人の居合わせたジャズファンから、Rouletteは行きやすいところですぐ見つかるよと言われたのだが、最寄りでない駅から歩くとよくわからず、しかも途中で腹痛を覚えて冷や汗をかくことになった。到着すると何人かから声をかけられた。Rouletteは小さなホール会場で、親しみやすいつくりになっていた。

演奏前のMCによると、パーカーは、今週の月曜日(9/21)にNYで吹き込みを行い、それはIntakt Recordsから出されるそうである(メンバー不明)。なお、今週は他にJackでネッド・ローゼンバーグとのデュオ(かつての『Monkey Puzzle』の再現)があるが、そこには行くことができず残念。

Evan Parker (ts, ss)
Ikue Mori (electronics)
Sylvie Courvoisier (p)
Mark Feldman (vln)

この日の目玉はシルヴィー・クルボアジェ、マーク・フェルドマンとの共演(たしかクルボアジェとパーカーとはデュオでの録音がある)。イクエ・モリは連日の参加。

驚いたことに、パーカーのサックスとフェルドマンのヴァイオリンとは驚くほど親和性が高い。不連続の緻密な集合体たるパーカーのソロと、なめらかに連続的な音を出すフェルドマンのソロとは二重らせんのように絡み合い、はっと気が付くと、パーカーをフェルドマンとして、あるいはフェルドマンをパーカーとして聴いていた。

クルボアジェの濃淡差の大きなピアノは場の活性化のために機能した。イクエ・モリのエレクトロニクスは、星の瞬く天空を創り出すばかりでなく、ときに、流れ星を思わせる音を出したりするチャーミングなものだった。

Fuji X-E2, XF60mmF2.4

●エヴァン・パーカー
Rocket Science変形版@The Stone(2015年)
エヴァン・パーカー US Electro-Acoustic Ensemble@The Stone(2015年)
エヴァン・パーカー+土取利行+ウィリアム・パーカー(超フリージャズコンサートツアー)@草月ホール(2015年)
ジョン・エスクリート『Sound, Space and Structures』(2013年)
『Rocket Science』(2012年)
ペーター・ブロッツマンの映像『Soldier of the Road』(2011年)
ブッチ・モリス『Possible Universe / Conduction 192』(2010年)
エヴァン・パーカー+オッキュン・リー+ピーター・エヴァンス『The Bleeding Edge』(2010年)
ハン・ベニンク『Hazentijd』(2009年)
アレクサンダー・フォン・シュリッペンバッハ『ライヴ・イン・ベルリン』(2008年)
シュリッペンバッハ・トリオ『Gold is Where You Find It』(2008年)
エヴァン・パーカー+ネッド・ローゼンバーグ『Monkey Puzzle』(1997年)
エヴァン・パーカー+吉沢元治『Two Chaps』(1996年)
ペーター・コヴァルトのソロ、デュオ(1981-98年)
スティーヴ・レイシー+エヴァン・パーカー『Chirps』
シュリッペンバッハ・トリオ『Detto Fra Di Noi / Live in Pisa 1981』(1981年)
シュリッペンバッハ・トリオ『First Recordings』(1972年)


ジョシュ・エヴァンス@Smalls

2015-09-23 23:24:25 | アヴァンギャルド・ジャズ

The Stoneでピーター・エヴァンス/エヴァン・パーカーの2セットが終わった後、Smallsに足を運んだ(2015/9/22)。というのも、エメット・コーエンがピアノを弾いているというので、覗いてみようと思ったのだ。着いてみると、ジョシュ・エヴァンスのグループが演奏していた。勘違いしていた(笑)。

しかし、ジョシュ・エヴァンスもCDを出したばかりで興味があったし、よしとする。昨年(2014年)、フランク・レイシーのグループをこのSmallsで観たとき、巧いトランぺッターだなと印象に残っていた。

Josh Evans (tp)
Abraham Burton (ts)
Lummie Spann (as)
David Bryant (p)
Rashaan Carter (b)
Eric McPherson (ds)

どこかで、ジョシュ・エヴァンスのトランペットはなめらかでないと否定的に書いている文章を読んだ記憶がある。確かにエッジがギザギザで、不協和音を含み持つ金属の音である。だが、この現代の熱いハードバップを聴いていると、それが持ち味なのだと思えてきた。

そしてテナーのエイブラハム・バートンである。この人も、変にマクリーン直系のように位置づけられていたことがあって、その割にはフレーズが単調でつまらないというのがわたしの印象だった。しかし、ぶち切れんばかりに息をテナーに吹きいれる姿は、つまらぬ偏見を払拭してくれるのには十分だった。とにかく熱く、エネルギーをすべて真正面にぶつける人なのである。

Nikon P7800

●参照
フランク・レイシー@Smalls(2014年)(ジョシュ・エヴァンス参加)
マイク・ディルーボ『Threshold』(2013年)(ジョシュ・エヴァンス参加)
フランク・レイシー『Live at Smalls』(2012年)(ジョシュ・エヴァンス参加)
ラルフ・ピーターソン『Outer Reaches』(2010年)(ジョシュ・エヴァンス参加)
ルイ・ヘイズ@COTTON CLUB(2015年)(エイブラハム・バートン参加)
ルイ・ヘイズ『Return of the Jazz Communicators』(2013年)(エイブラハム・バートン参加)


Rocket Science変形版@The Stone

2015-09-23 23:00:22 | アヴァンギャルド・ジャズ

ファーストセット(エヴァン・パーカー US Electro-Acoustic Ensemble@The Stone)に引き続き、セカンドセットもThe Stoneは満員(2015/9/22)。Downtown Music Galleryのブルース氏に、お前も好きだなと言わんばかりに肩を揉まれて吃驚した。

今度は「Rocket Science」である。・・・の、はずだったが、依然としてピアノのクレイグ・テイボーンが現れない。

エヴァンス「ミステリアスなクレイグ・テイボーンはまだ来ない。いまかれのサイトをチェックしたら、このギグのことが書いてない(爆笑)。まあ、ロケット・サイエンスをはじめよう」
パーカー「それはロケット・サイエンスではない」
エヴァンス「まったくだ」

そんなわけで、テイボーンの代役として、ファースト・セットに引き続き、イクエ・モリが参加した。結果的に、ロケット・サイエンスとは異なる様相を呈したものとなり、非常に刺激された(テイボーンのピアノも観たかったのだが)。

Peter Evans (tp)
Evan Parker (ts)
Ikue Mori, Sam Pluta (electronics)

こんどはエヴァン・パーカーはテナーサックスに専念した。かれの奥深い循環呼吸奏法を聴いていると、巨大な怪竜がゆっくりと空を飛び、のたうつ姿が想像された。ピーター・エヴァンスは、やはり、甲高いトランペットの破裂音という火花によって、怪竜が支配せんとする時空間に、厭くことなく裂け目を入れ続けた。

そしてふたりのエレクトロニクスが、直前の音のサンプリングによって時間を引き戻し、掻き混ぜ、眩いほどの天球を創り出した。

濃密な1時間だった。演奏後、エヴァン・パーカーに、出たばかりの『Two Chaps』にサインをいただいた。

Fuji X-E2, XF60mmF2.4

●ピーター・エヴァンス
エヴァン・パーカー US Electro-Acoustic Ensemble@The Stone(2015年)
チャン+エヴァンス+ブランカート+ウォルター『CRYPTOCRYSTALLINE』、『Pulverize the Sound』(2013、15年)
ピーター・エヴァンス『Destiation: Void』(2013年)
『Rocket Science』(2012年)
ピーター・エヴァンス『Ghosts』(2011年)
エヴァン・パーカー+オッキュン・リー+ピーター・エヴァンス『The Bleeding Edge』(2010年)
ピーター・エヴァンス『Live in Lisbon』(2009年)
ウィーゼル・ウォルター+メアリー・ハルヴァーソン+ピーター・エヴァンス『Mechanical Malfunction』(2012年)
ウィーゼル・ウォルター+メアリー・ハルヴァーソン+ピーター・エヴァンス『Electric Fruit』(2009年)
MOPDtK『Blue』(2014年)
MOPDtK『The Coimbra Concert』(2010年)
MOPDtK『Forty Fort』(2008-09年) 

●エヴァン・パーカー
エヴァン・パーカー US Electro-Acoustic Ensemble@The Stone(2015年)
エヴァン・パーカー+土取利行+ウィリアム・パーカー(超フリージャズコンサートツアー)@草月ホール(2015年)
ジョン・エスクリート『Sound, Space and Structures』(2013年)
『Rocket Science』(2012年)
ペーター・ブロッツマンの映像『Soldier of the Road』(2011年)
ブッチ・モリス『Possible Universe / Conduction 192』(2010年)
エヴァン・パーカー+オッキュン・リー+ピーター・エヴァンス『The Bleeding Edge』(2010年)
ハン・ベニンク『Hazentijd』(2009年)
アレクサンダー・フォン・シュリッペンバッハ『ライヴ・イン・ベルリン』(2008年)
シュリッペンバッハ・トリオ『Gold is Where You Find It』(2008年)
エヴァン・パーカー+ネッド・ローゼンバーグ『Monkey Puzzle』(1997年)
エヴァン・パーカー+吉沢元治『Two Chaps』(1996年)
ペーター・コヴァルトのソロ、デュオ(1981-98年)
スティーヴ・レイシー+エヴァン・パーカー『Chirps』
シュリッペンバッハ・トリオ『Detto Fra Di Noi / Live in Pisa 1981』(1981年)
シュリッペンバッハ・トリオ『First Recordings』(1972年)

●サム・プルータ
エヴァン・パーカー US Electro-Acoustic Ensemble@The Stone(2015年)
スティーヴ・リーマン@Shapeshifter Lab(2015年)
ピーター・エヴァンス『Destiation: Void』(2013年)
ピーター・エヴァンス『Ghosts』(2011年) 


エヴァン・パーカー US Electro-Acoustic Ensemble@The Stone

2015-09-23 22:27:07 | アヴァンギャルド・ジャズ

半年ぶりのニューヨーク。パスポートコントロールが混んでいて、飛行機を降りてから荷物を受け取るまでに45分を要した。タクシーでホテルにチェックインし、ゆっくりする間もなく、地下鉄でThe Stoneに向かう。

ちょうど開演1時間前に着くと、1番目だった。次に来たデザイナーだという男とジャズの四方山話(共通言語)をしているうちに、30分もすると長蛇の列。エヴァン・パーカーがレコーディングを兼ねてNYに来ており、一連のギグが大注目なのだった。

なぜかピアノのクレイグ・テイボーンが現れないなか、演奏が始まった。

Evan Parker (ss)
George Lewis (electronics, tb)
Ikue Mori, Sam Pluta (electronics)
Ned Rothenberg (bcl, cl, shakuhachi)
Peter Evans (tp)

2メートル先に、主役のピーター・エヴァンス、パーカー、ネッド・ローゼンバーグの3人が並ぶ姿は壮観である。

パーカーはソプラノに徹し時空間をゆっくりと己の周りにまとわりつかせた。ローゼンバーグはおもにバスクラでその時空間を支えた。そしてエヴァンスは甲高く微分的な音で、時空間に裂け目を作り続けた。

さらに、サム・プルータとイクエ・モリとが創り出す、ダイヴァーシファイする宇宙。ジョージ・ルイスのトロンボーンが、逆に、飛散した者たちをこの宇宙に引き戻そうとする音に聴こえた。

そういえば、ピーター・エヴァンスと写真撮影の許可を求めて話したときに、「Mostly Other People Do the Killing」から脱退したのかどうか訊けばよかった。忘れていた。

Fuji X-E2, XF60mmF2.4 and Nikon P7800

●ピーター・エヴァンス
チャン+エヴァンス+ブランカート+ウォルター『CRYPTOCRYSTALLINE』、『Pulverize the Sound』(2013、15年)
ピーター・エヴァンス『Destiation: Void』(2013年)
『Rocket Science』(2012年)
ピーター・エヴァンス『Ghosts』(2011年)
エヴァン・パーカー+オッキュン・リー+ピーター・エヴァンス『The Bleeding Edge』(2010年)
ピーター・エヴァンス『Live in Lisbon』(2009年)
ウィーゼル・ウォルター+メアリー・ハルヴァーソン+ピーター・エヴァンス『Mechanical Malfunction』(2012年)
ウィーゼル・ウォルター+メアリー・ハルヴァーソン+ピーター・エヴァンス『Electric Fruit』(2009年)
MOPDtK『Blue』(2014年)
MOPDtK『The Coimbra Concert』(2010年)
MOPDtK『Forty Fort』(2008-09年) 

●エヴァン・パーカー
エヴァン・パーカー+土取利行+ウィリアム・パーカー(超フリージャズコンサートツアー)@草月ホール(2015年)
ジョン・エスクリート『Sound, Space and Structures』(2013年)
『Rocket Science』(2012年)
ペーター・ブロッツマンの映像『Soldier of the Road』(2011年)
ブッチ・モリス『Possible Universe / Conduction 192』(2010年)
エヴァン・パーカー+オッキュン・リー+ピーター・エヴァンス『The Bleeding Edge』(2010年)
ハン・ベニンク『Hazentijd』(2009年)
アレクサンダー・フォン・シュリッペンバッハ『ライヴ・イン・ベルリン』(2008年)
シュリッペンバッハ・トリオ『Gold is Where You Find It』(2008年)
エヴァン・パーカー+ネッド・ローゼンバーグ『Monkey Puzzle』(1997年)
エヴァン・パーカー+吉沢元治『Two Chaps』(1996年)
ペーター・コヴァルトのソロ、デュオ(1981-98年)
スティーヴ・レイシー+エヴァン・パーカー『Chirps』
シュリッペンバッハ・トリオ『Detto Fra Di Noi / Live in Pisa 1981』(1981年)
シュリッペンバッハ・トリオ『First Recordings』(1972年)

●ネッド・ローゼンバーグ 
ネッド・ローゼンバーグ@神保町視聴室(2014年)
ネッド・ローゼンバーグの音って無機質だよな(という、昔の感想)

●サム・プルータ
スティーヴ・リーマン@Shapeshifter Lab(2015年)
ピーター・エヴァンス『Destiation: Void』(2013年)
ピーター・エヴァンス『Ghosts』(2011年)

●ジョージ・ルイス
ギル・エヴァンスの映像『Hamburg October 26, 1986』
『A POWER STRONGER THAN ITSELF』を読む(1)
ムハール・リチャード・エイブラムスの最近の作品


スティーヴ・レイシー+エヴァン・パーカー『Chirps』

2015-09-21 21:29:04 | アヴァンギャルド・ジャズ

スティーヴ・レイシー+エヴァン・パーカー『Chirps』(FMP、1985年)。ソプラノサックスの即興デュオとあって、いつも聴くわけではないが、たまに棚を探す。

Steve Lacy (ss)
Evan Parker (ss)

ちょうど同じ2000年に、スティーヴ・レイシーはジャン・ジャック・アベヌル、ジョン・ベッチとのトリオで、一方、エヴァン・パーカーはエレクトロ・アコースティック・カルテットを率いて来日した。どちらが先だったか忘れたが、それぞれのライヴに駆けつけ、同じ盤にサインをいただいた。そんなわけで、これはわたしの宝物である。

ふたりの不世出のサックス奏者が、右トラック(レイシー)と左トラック(パーカー)。レイシーの細くうねうねとしたソロは、とくにベンドしたときなどに、レイシーならではの匂いを放散する。一方、パーカーは、レイシーとのデュオであることを強く意識してか、得意の循環呼吸奏法を炸裂させず、微分的で連続的な音ではなく、クラスターとしてよりまとまった音を並べる。

ふたつの耳でふたりの音を聴いていると、脳にさまざまな応力が加えられ、真四角が平行四辺形に、真ん丸が楕円になっていく。ときにふたりのソプラノがハモることがあって、瞬時にびよーんと真四角と真ん丸に戻ったりして。

●参照 スティーヴ・レイシー
レイシーは最後まで前衛だった(『New Jazz Meeting Baden-Baden 2002』)(2002年)
『富樫雅彦 スティーヴ・レイシー 高橋悠治』(2000年)
『Point of Departure』のスティーヴ・レイシー特集(『Sands』)(1998年)
チャールス・タイラー(『One Fell Swoop』)(1986年)
『Interpretations of Monk』(1981年)
富樫雅彦『セッション・イン・パリ VOL. 1 / 2』(1979年)
スティーヴ・レイシーのアヴィニヨン(1972-73年)
ザ・ジャズ・コンポーザーズ・オーケストラ(1968年)
スティーヴ・レイシー『School Days』(1960、63年)
セシル・テイラー初期作品群(1956-62年)
Ideal Bread『Beating the Teens / Songs of Steve Lacy』(2014年)
ハリー・コニック・ジュニア+ブランフォード・マルサリス『Occasion』(『Sands』にインスパイアされた演奏)(2005年)
副島輝人『世界フリージャズ記』
村上春樹 編・訳『セロニアス・モンクのいた風景』(レイシーのモンク論)
中平穂積『JAZZ GIANTS 1961-2002』

●参照 エヴァン・パーカー
エヴァン・パーカー+土取利行+ウィリアム・パーカー(超フリージャズコンサートツアー)@草月ホール(2015年)
ジョン・エスクリート『Sound, Space and Structures』(2013年)
『Rocket Science』(2012年)
ペーター・ブロッツマンの映像『Soldier of the Road』(2011年)
ブッチ・モリス『Possible Universe / Conduction 192』(2010年)
エヴァン・パーカー+オッキュン・リー+ピーター・エヴァンス『The Bleeding Edge』(2010年)
ハン・ベニンク『Hazentijd』(2009年)
アレクサンダー・フォン・シュリッペンバッハ『ライヴ・イン・ベルリン』(2008年)
シュリッペンバッハ・トリオ『Gold is Where You Find It』(2008年)
エヴァン・パーカー+ネッド・ローゼンバーグ『Monkey Puzzle』(1997年)
エヴァン・パーカー+吉沢元治『Two Chaps』(1996年)
ペーター・コヴァルトのソロ、デュオ(1981-98年)
シュリッペンバッハ・トリオ『Detto Fra Di Noi / Live in Pisa 1981』(1981年)
シュリッペンバッハ・トリオ『First Recordings』(1972年)


ジョイス・キャロル・オーツ『エデン郡物語』

2015-09-21 20:24:22 | 北米

ジョイス・キャロル・オーツ『エデン郡物語』(文化書房博文社、原著1966-72年)を読む。

本書は、ジョイス・キャロル・オーツの初期短編集3冊から、「エデン郡」という架空の地を舞台にした短編小説8作品を集めたものである。

オーツは「北部のフォークナー」と称されることがあったという。確かに、黒人という存在が白人の心にもたらす裂け目や理不尽な運命といった面においてわからなくもない。しかし、フォークナーよりもオーツのほうが遥かに陰湿で、粘着質で、悪意に満ちている。しかも、もう70代後半になるというのに、いまだに、後味の悪い作品を次々に書き続けている。2013年の『Daddy Love』なんて、偏執狂の聖職者が子供をさらい、箱に閉じ込め、精神的に支配するという話である。何のために読んだのかわからない。

この初期の作品も、とても嫌な感覚にまみれている。悪意しか持たない世界が、弱い人間に対し、取り返しのつかない歪みを与える物語ばかりだ。登場人物が正気を保っているのかどうかわからないことも怖い。読者たる自分も、そして誰もが、その狂気と無縁でないと思えてしまうことはもっと怖い。

万年ノーベル文学賞候補のオーツだが、仮に受賞したら、どのように扱われるのか楽しみでならない。

●参照
ジョイス・キャロル・オーツ『Daddy Love』(2013年)
ジョイス・キャロル・オーツ『Evil Eye』(2013年)
林壮一『マイノリティーの拳』、ジョイス・キャロル・オーツ『オン・ボクシング』(1987年)
ジョイス・キャロル・オーツ『Solstice』(1985年)


マックス・ジョンソン『Something Familier』

2015-09-21 14:22:45 | アヴァンギャルド・ジャズ

マックス・ジョンソン『Something Familier』(Fresh Sound、2014年)を聴く。

Kirk Knuffke (cor)
Max Johnson (b)
Ziv Ravitz (ds)

マックス・ジョンソンは、クリス・ピッツィオコス『Gordian Twine』にも参加しているベーシストであり、クリスと同様にまだ20代半ばと若い。骨太で、アタックが強く、ドライヴ感がある。この堂々としたあり様は、まさに剛田武さんが言うようにハードボイルドだ(>> JazzTokyoのレビュー)。

ジヴ・ラヴィッツのスティックも容赦なく強く、ドラムスをバシバシと重い鞭で叩いている。

●参照
クリス・ピッツィオコス『Gordian Twine』


ジョン・イラバゴン『Behind the Sky』

2015-09-21 09:42:47 | アヴァンギャルド・ジャズ

ジョン・イラバゴン『Behind the Sky』(Irabbgast Records、2014年)を聴く。

Tom Harrell (tp, flh)
Jon Irabagon (ts, ss)
Luis Perdomo (p)
Yasushi Nakamura (b)
Rudy Royston (ds)

聴きどころは、やはり、3曲でフィーチャーされているトム・ハレルとの共演か。身を潜めていてくぐもったような音で現れるハレルは素晴らしく、レジェンドとみなされるのも納得できようというものだ。微かな囁きから高みへとのぼっていくソロには耳を奪われる。

それはそれとして、ここでのサウンドは「コンテンポラリー系」。ルイス・ペルドモのピアノも目立っていて良いし、イラバゴン自身のサックスソロも快調。しかし、実はこちらがイラバゴンに勝手に求めるものは、諧謔も情熱もひっくるめて新しい世界を切りひらく姿なのだった。それとも、本人の指向性は実はこれなのかな。

●参照
ジョン・イラバゴン@スーパーデラックス(2015年)
バリー・アルトシュル『The 3Dom Factor』(2012年)(イラバゴン参加)
マイク・プライド『Birthing Days』(2012年)(イラバゴン参加)
MOPDtK『Blue』(2014年)(イラバゴン参加)
MOPDtK『The Coimbra Concert』(2010年)(イラバゴン参加)
MOPDtK『Forty Fort』(2008-09年)(イラバゴン参加)
トム・ハレル@Cotton Club(2015年)
トム・ハレル@Village Vanguard(2015年)
トム・ハレル『Trip』(2014年)
トム・ハレル『Colors of a Dream』(2013年)
デイヴィッド・バークマン『Live at Smalls』(2013年)(トム・ハレル参加)


侯孝賢『黒衣の刺客』

2015-09-20 23:03:11 | 中国・台湾

新宿ピカデリーにて、侯孝賢『黒衣の刺客』(2015年)を観る。

待望の侯孝賢(ホウ・シャオシェン)の新作だが、一抹の不安もあった。なぜ今になって、陳凱歌や張芸謀のような中国の巨匠がそうしたように、侯孝賢までもが武侠物を撮るのだろうか、と。結果的にはその疑念は晴れないまでも、侯孝賢ならではの素晴らしい映画をつくってくれたことがわかった。

8世紀の唐代。道士に預けられ、殺人者として育てられた女(スー・チー)は、両親のもとに戻ってくる。その使命は、かつての許婚の男(チェン・チェン)を暗殺することだった。しかし、情が女にそれを許さない。

敢えて説明を極小化したシナリオであり、観る者は人間関係すら明確に把握できない。しかし、長廻しとほのめかしによって情の髄だけを抽出したような演出が、映画を実に洗練されたものにしている。そして、カメラがまた素晴らしい。ボケを多用するわりにあざとくなく、発色は、かつて富士フイルムが出していたリバーサル・フィルムのフォルティアを思い出すほど鮮やかだ。

過剰さを棄て去ったスー・チーの演技もみごとである。

●参照
侯孝賢『レッド・バルーン』(2007年)
侯孝賢『珈琲時光』(2003年)
侯孝賢『ミレニアム・マンボ』(2001年)(スー・チー主演)
侯孝賢『憂鬱な楽園』(1996年)
侯孝賢『戯夢人生』(1993年)
侯孝賢『非情城市』(1989年)
侯孝賢『冬冬の夏休み』(1984年)
侯孝賢『風櫃の少年』(1983年)
チャウ・シンチー+デレク・クォック『西遊降魔篇』(2013年)(スー・チー主演)
キャロル・ライ『情謎/The Second Woman』(2012年)(スー・チー主演)
アンドリュー・ラウ『Look for a Star』(2009年)(スー・チー主演)
ジョニー・トー製作『スー・チー in ミスター・パーフェクト』(2003年)(スー・チー主演)


松風鉱一カルテット+石田幹雄@新宿ピットイン

2015-09-20 17:42:34 | アヴァンギャルド・ジャズ

新宿ピットイン昼の部(2015/9/20)にて、松風鉱一カルテット+石田幹雄を観る。渋谷毅オーケストラなどで接してはいたが、こうして師匠自身のグループに来るのは2年ぶりである。


Fuji X-E2, Leica Summitar 50mmF2.0開放

松風鉱一(as, ts, fl)
加藤崇之(g)
水谷浩章(b)
外山明(ds)
石田幹雄(p)

いやそれにしても、聴くたびに過激化している。

外山さんをドラムスとして迎え入れた当日、「このグループは解散だ」と松風さんが思ったという逸話があるが、その超イレギュラーなリズムは、もはや外山さんだけではない。加藤さんはエフェクターもギター叩きも奇怪な手拍子(渋オケの川端民生?)も、もうやりたい放題。石田さんは異様に強靱なピアノでその異常なる時空間に切り込んでゆき、つぎつぎに新しい構造を創り出す。水谷さんのグルーヴがなければ空中崩壊しそうなものだが、みんなゲラゲラ笑ったり微笑んだりしながらプレイしている。

松風先生はというと、エアサックス的なプレイにも磨きがかかったりして、やはり過激に渋くなっている。

●参照 松風鉱一
5年ぶりの松風鉱一トリオ@Lindenbaum(2013年)
松風鉱一カルテット@新宿ピットイン(2012年)
松風鉱一トリオ@Lindenbaum(2008年)
松風鉱一カルテット、ズミクロン50mm/f2(2007年)
松風鉱一『Good Nature』(1981年)
渋谷毅エッセンシャル・エリントン@新宿ピットイン(2015年)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2014年)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2011年)
カーラ・ブレイ+スティーヴ・スワロウ『DUETS』、渋谷毅オーケストラ
森山威男『SMILE』、『Live at LOVELY』 
反対側の新宿ピットイン
くにおんジャズ、鳥飼否宇『密林』