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モノとの幸せな関係

2018年11月12日 | 読書
 「スキャナー 記憶のカケラをよむ男」は一昨年の映画。あまり話題にはならなかったが、脚本家の古沢良太が書いていたので手にとってみた。しかし小説としてはさほど…という評価で、映画そのものをみたい気がする。古沢は最近ちょっと冴えないので、ドラマ『外事警察』のような渋い作品を期待しているが…。



2018読了105
 『小説版 スキャナー』(古沢良太  集英社文庫)



 ある女教師の失踪、そしてそれが連続殺人事件と重なっていく。登場する売れなくなった漫才師が持つ「スキャニング」つまり物や場所に残った記憶や感情(残留思考)を読み取る能力によって、解決に向かうストーリーである。二転三転のある展開で、演出の仕方によってはずいぶん楽しめると思った。スキャン(走査)そのものが映像的だ。


 それにしても、物や場所に人の思いが残るという想像は誰しもするのではないか。例えば長く使った物は、たとえ安価であっても愛着が残るのは普通だし、誰かとの思い出がある品物、風景などはなおさらであろう。科学的には考えられなくとも、あってほしいという願いは自然な感情だ。それが物語化されることは誰でも密かに期待している


 BS12で再放送している『ゴーイングマイホーム』というドラマで、映画撮影に使うためにある民家から古い重箱を借りる場面。その重箱に込められた思いが語られる設定で「大きな神様は信じないけれど、小さな神様は信じている」というような台詞があった。そういう感性を持つ人が多いのがこの国だ。出逢いは人に限定されるものではない。


 そう言えば『ほぼ日』サイトに、糸井重里がある人から「ほぼ日手帳」が様々な会社から真似されている現状について訊かれ、決定的な違いがあると答えていた。それは何かというと、その商品に対する思いだという。願いを持って開発し、意見を集め改良を重ねてきた自負を感じる。作り手だけでなく買い手もそういう意識を持てたら幸せだ。

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