すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

読書の晩秋、あちこち

2024年11月06日 | 読書
 10月中に書いていたことをすっかり失念していた。
 まさに、人生の晩秋の面持ち。


 Re77『こんがり、パン』(津村記久子、穂村弘、他 河出文庫)。副題?として「おいしい文藝」と記されているように、パンをモチーフとした短編アンソロジー。重鎮の小説家からエッセイスト、思想家まで40名が並ぶ。「米」でも「酒」でもありそうな企画だ。「食」こそが、人間を描くにふさわしい行為ということか。


 当然ながら個人の食体験に基づいたエッセイが内容だ。しかし、心に残るのは別の観点もある。開高健の文章に久々に触れたがぐんと心に残る。曰く「経験には鮮烈と朦朧がほぼ等質、等量にある」。また米原万理の著した、ソ連がパン(主食)の扱いをきっかけに財政破綻し、崩壊した歴史は根本を突いていると感じた。





 一年前に『ふゆのはなさいた』という絵本を手にしてから、安東みきえマイブームが細く続いている。図書館から借りていたが、自分でも中古本の購入を始めた。絵本以外で2冊を読了する。Re78『まるまれアルマジロ!』(理論社)は5つの短編で、冒頭の一行が全て「卵があった」。なかなかテンポのいい寓話集だ。


 Re79『天のシーソー』(理論社)は2000年発刊で、椋鳩十児童文学賞を受賞している良質な連作小説集だ。心理、情景描写の巧みさが光る。人間や社会の弱い面を突いているが、そこに留まらず希望を見いだせる箇所を描くことで、主対象とする読者層に訴えるだろう。それは、大人にも大事なことだと気づかせる。