「ふるさと銀河線 軌道春秋」高田郁
高田郁さんは、かつて漫画原作を生業としていた。
短編集「軌道春秋」(漫画・深沢かすみ)を、小説としてリライトしたのが本作品。
P285
(「あとがき」著者の言葉)
生きにくい時代です。辛いこと悲しいことが多く、幸福は遠すぎて、明日に希望を見いだすことも難しいかも知れない。それでも、遠い遠い先にある幸福を信じていたい――そんな想いを、本編の登場人物たちに託しました。
軌道春秋と言うだけあって、ローカル線が出てくる。
関西人にもなじみの電車や駅が登場してうれしい。
「車窓家族」では、『大阪と神戸を結ぶ私鉄電車の沿線に』とあるが、阪急か阪神電車のことでしょう。
「ムシヤシナイ」では、『JR大阪環状線の駅のT駅は、私鉄電車と接続するため』とあるが、T駅=鶴橋で、近鉄でしょう。(あるいは、T駅=天王寺で、南海は廃線なので、近鉄南大阪線?)
『みをつくし料理帖』のような大きな起伏、怒濤の展開はない。
だが、ほっこりした気分になるようになっている。
あるいは、人生について考えたり、とか。
高田郁作品らしく、食べ物、食事のシーンの描写が上手い。
短編集なので、小鉢に盛られた、いろんな味の料理を楽しむ感覚で読める。
【ネット上の紹介】
両親を喪って兄とふたり、道東の小さな町で暮らす少女。演劇の才能を認められ、周囲の期待を集めるが、彼女の心はふるさとへの愛と、夢への思いの間で揺れ動いていた(表題作)。苦難のなかで真の生き方を追い求める人びとの姿を、美しい列車の風景を織りこみながら描いた珠玉の短編集。