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「さようなら、オレンジ」岩城けい

2013年11月23日 21時08分13秒 | 読書(小説/日本)

「さようなら、オレンジ」岩城けい

著者は、大学卒業後、単身オーストラリアへ。在豪二十年。
本作で、第29回太宰治賞受賞。

読みごたえのある作品だった。
とても良かった。
今年読んだ文芸作品として、トップクラス。

ネット上では、次のようにストーリーが紹介されている。

オーストラリアの田舎町に流れてきたアフリカ難民サリマは、夫に逃げられ、精肉作業場で働きつつ二人の息子を育てている。
母語の読み書きすらままならない彼女は、職業訓練学校で英語を学びはじめる。そこには、自分の夢をなかばあきらめ夫について渡豪した日本人女性「ハリネズミ」との出会いが待っていた。

この難民の女性・サリマと日本人女性の友情、成長が描かれる。

物語の核心は、サリマが下の子が通う学校で、難民として出てきた祖国アフリカについて話をしてくれ、と頼まれるところ。
P78
「お母様にお国のことを子供たちにお話していただけたら、と思いまして」
下の息子の担任の教師に声をかけられたのは、息子を迎えに行ったときだった。

発表の当日、サリマは作文を読み上げる。
けっして上手い英語ではない。
しかし、全員が胸を打たれた。

P98-99
サリマが読み終えると子供たちはしずまりかえったままだった。
(中略)
子供たちは話を聞いた後口数がたいへん少なかった。本当にびっくりしたり感動したりするとき、子供というのは表現の術を失い無口になる(後略)

【おまけの感想】
ページ数は166ページと短いが、文字密度が高い。
ほとんど改行が無く、紙面が文字で覆われている。(満腹感保証)

【ネット上の紹介/あらすじ】 
内戦のつづくアフリカから、難民としてオーストラリアの田舎町に流れてきたサリマ。母語の読み書きすらままならない彼女は、二人の息子を育てながら精肉作業場で働く一方で、英語学校に通いはじめる。そこには、自分の夢をあきらめ夫について渡豪した日本人女性「ハリネズミ」ほか、さまざまなクラスメートたちとの出会いが待っていた。 月日がたち生活が軌道にのりはじめたころ、都会へと逃げた夫から、息子たちを引き取りたいと連絡が入る。別離の前日、サリマは息子の学校からの依頼で、アフリカの故郷について子供たちに紹介することになった。友人ハリネズミが用意してくれた客観的な資料の数々。しかしサリマは、やっと使えるようになった英語で、自分の生まれ育った場所について、稚拙だが力強い作文を発表するのだった。 人種的・言語的な差別をうける中で、生まれてくる友情と絆。女性たちが支えあいながら、やがて自分の足で逞しく各々の道へと踏みだしていく。物語の底流では、母語で書く/母語以外で書くとはどういうことか問われ続ける。主旋律となる物語と書簡・メールが、交互に進行するシャープな構成で、淡々と、しかしダイナミックに描かれる大河ドラマ。