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「駐在刑事」笹本稜平

2014年04月09日 21時15分15秒 | 読書(小説/日本)

「駐在刑事」笹本稜平

主人公は、事情があって、警視庁捜査一課から奥多摩にある駐在所へ左遷される。
そこに起こる、様々な事件。
いくつか文章を紹介する

北鎌尾根についてふれた箇所。
P208
(前略)湯俣温泉から水俣川を遡行して北鎌尾根に取り付くこのクラッシックルートだった。
大天井岳から水俣川支流の天井沢に降り、そこから北鎌沢を登り返して長いアプローチを省略するショートカットが最近好まれているらしいが、体力的に有利なそのコースを孝夫は邪道だという。(中略)
「せっかくフルコースのディナーが用意されているのに、オードブルもスープも抜きで、のっけからメインディッシュに齧りつくようなもんだよ。それじゃ優雅さを欠くね。山に対して失礼だよ」

P208
本当のクラシックルートというなら末端の北鎌尾根第二峰から始めるのが筋だが、藪が手ごわく展望も悪いその部分は割愛し、北鎌沢右俣から第七峰と第八峰のあいだの北鎌のコルに出て、そこから縦走するほうが賢明だと孝夫は言う。そしてそのぶん時間に余裕ができるから、湯俣温泉の小屋で一泊して、深山幽谷の一夜をのんびり楽しもうと提案した。

全部で6編収録されている。
それぞれ独立した話だが、関連があって、連作長編となっている。

①終わりのない悲鳴
②血痕とタブロー
③風光る
④秋のトリコロール
⑤茶色い放物線
⑥春嵐が去って

後半になるほど、内容が充実して面白くなってくる。
⑤⑥は、芸のできる犬が登場して、楽しませてくれる。

先日読んだ「春を背負って」が良かったので、本作品を読んだ。→「春を背負って」笹本稜平
本作品も警察小説でありながら、山が舞台の連作長編。
これが警察小説なのか、ってくらい、山に関する記述が多い。
そこが、この作品の楽しくて良いところ。

【ネット上の紹介】
警視庁捜査一課から青梅警察署水根駐在所所長へ。取り調べ中に容疑者が服毒自殺したことで左遷された警部補、江波淳史。自責の念を背負う元刑事は、奥多摩の捜査において生身の人間としての自分を取り戻せるか。冒険小説の第一人者が挑む警察小説。組織とぶつかりながらも、自ら信じる捜査を貫く様を描く。