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「尾根を渡る風 駐在刑事」笹本稜平

2014年04月14日 21時57分47秒 | 読書(小説/日本)

「尾根を渡る風 駐在刑事」笹本稜平

先日読んだ「駐在刑事」の続編。→「駐在刑事」笹本稜平
奥多摩の山で起こる様々な事件。
山岳小説と警察小説が同時に楽しめる。

P25
「あれ、カタクリの花でしょ?」
純香が声を上げる。立ち止まって指す先に、まだ蕾に近いカタクリの花がうなだれるように咲いている。(中略)開花期を迎えれば、花心を下にピンクがかった紫の花弁が篝火のようにそり返る。樹林帯の下草を埋めるように咲き誇るその群落は、地味な色彩にもかかわらず豪奢な印象を与える。
(以前、二子山の岩を登りに行った際、アプローチで峠の辺り、カタクリの花が咲いていたのを思い出すbyたきやん)
Erythronium japonicum flower.JPGbyウィキペディア

P246
「山にはエスカレーターもエレベーターもありません。しかし、苦しみながらの一歩一歩が、登り終えたとき自分の宝になっています。お金になるわけじゃない。名声が得られるわけでもない。しかしそれは自分の魂にとって、とれも贅沢な贈り物だという気がします」

全部で5章=5編の短編が収録されている。

①花曇りの朝
②仙人の消息
③冬の序章
④尾根を渡る風
⑤十年後のメール

④の「尾根を渡る風」はタイトルにもなっている作品で、ストーカー事件とトレイルランニングを取り上げている。異色の組み合わせのテーマをどう料理するか、腕の見せどころ。
P169
山は自然の美しさや静けさを味わうために登るもので、苦しい思いをして駆け回るのは邪道』としながらも、著者は、トレイルランニングに好意的である。

ちなみに、私は(さほど)好意的になれない。
日本の登山道は狭い。
すれ違うのがやっとの道が多い。
そこを普通の登山者とトレイルランニングする者が利用するとどうなるか?
喩えるなら、混雑する狭い道で、歩行者と自転車が通行するようなもの。
お互いストレスだし、事故が起きてもおかしくない。
それに、以前にも書いたが、動物は走っている人間を見ると、「攻撃された」、と勘違いする。
特に、秋の熊は襲ってくるので要注意。→「山と渓谷」2010年12月号
だから、「山の中で走る」という行為は感心しない。
特に、夜に走るのは良くない。危険すぎる。
(いつか、練習中、公式競技中に、熊に襲われる事故が発生するかもしれない、と危惧する)
熊の生息地なのに無関心すぎる

【ネット上の紹介】
警視庁捜査一課の敏腕刑事だった江波淳史は、取り調べ中に容疑者が自殺したことで青梅警察署水根駐在所所長へと左遷された。亡くなった女性への自責の念から、江波が望んだ異動でもあった。駐在所の仕事と暮らしにも馴れ、山歩きを趣味とする江波は徐々に自らを取り戻していく。ある日、御前山でペットの犬がいなくなったという連絡があり、山に入った江波の見つけたトラバサミが山梨で起きた殺人事件とつながっていく―。異色の「山岳+警察」小説!