原題:『Lawless』
監督:ジョン・ヒルコート
脚本:ニック・ケイヴ
撮影:ブノワ・ドゥローム
出演:シャイア・ラブーフ/トム・ハーディ/ゲイリー・オールドマン/ミア・ワシコウスカ
2012年/アメリカ
ジャックは何を恐れているのか?
禁酒法時代の1931年のアメリカにおいて密造をしていた兄弟たちの実話を元にしたようだが、ニック・ケイヴの脚本は意外と分かりにくい。例えば、主人公であるボンデュラント3兄弟は長男のハワードと次男のフォレストと三男のジャックで構成されており、三男のジャックが兄たちに負けん気を見せることが却って空回りをして失敗するというストーリーの流れは分かりやすいのであるが、何故かリーダーは長男のハワードではなく次男のフォレストであり、そのフォレストがしっかり者かというと喧嘩の際には密かにメリケンサックを使用し、女性に対しても奥手な男で、キャラクター設定として間違っているとは言わないが、ストーリーを追っていると引っかかることが多々ある。
さらに問題なのは元々問題児ではあった三男のジャックである。ジャックは独自にギャングのボスであるフロイド・バナーと売買契約を結べたことに気を良くして、密造酒の製造場所にガールフレンドのバーサ・ミニックスを連れていったのであるが、自分が取締官のチャーリー・レイクスたちに尾行されていることに全く気がつかなかった。周囲を見張っていたハワードの機転によって、レイクスを捕らえることが出来たのであるが、不思議なのは、既にフォレストが首を切られて瀕死の重傷を負っていたにも関わらず、レイクスに罵倒されながらも結局、ジャックもハワードもレイクスを殺さず、ただ顔を殴って逃走したことである。その後、先にバーサを伴って逃げたものの脚の悪いクリケットのことも考慮するならばジャックは必ずレイクスを殺さなければならないはずで、そのジャックの感情は理解しにくい。
脚本はあまり冴えなかったニック・ケイヴだが、やはり音楽は素晴らしい。ザ・ヴェルヴェット・アンダーグラウンドの「ホワイト・ライト/ホワイト・ヒート(White Light/White Heat)」がフューチャーされているが、この曲がカントリー・ミュージックとロック・ミュージックの橋渡しをしていることがよく分かった。