原題:『神奈川芸術大学映像学科研究室』
監督:坂下雄一郎
脚本:坂下雄一郎
撮影:松井宏樹
出演:飯田芳/笠原千尋/前野朋哉
2013年/日本
(SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2013 審査員特別賞)
「真面目さ」の代償
事件の発端は神奈川芸術大学映像学科に助手として勤めている主人公の奥田明が機材室の鍵が無いことに気づいたところから始まる。部屋に行ってみると一人の学生が撮影機材を持ち出している現場に遭遇し、さらに部屋の中では2人の学生がまさに他の機材を棚から下ろそうとしていたところだった。奥田に見つかったことで動揺した2人の学生は機材を床に落としてしまい、200万円の損失を出してしまう。
学生が無断で撮影機材を持ち出そうとした理由は、その前に機材を借りた際に、返却期限をわずか1分ほど遅れ、一週間貸出禁止になっていたためなのであるが、やがてこの3人の学生の処分に関して学校側を右往左往させてしまう機材盗難事件が、果たして「盗難」と言えるものだったのかどうかは疑問が残る。もちろん演出上は実際に機材をクルマに積んでいる盗難事件とし、その後の事件に対する学校側の優柔不断さを皮肉を込めて描くことになり、学生たちの行動をあくまでも「事件」として扱い、「正義」を貫いた奥田が学生の信頼を得て、友人から誘われていた仕事を断るというその真面目さを非難するつもりはないのであるが、学生が起こした不祥事が本当に「盗難」だと断定出来るものだったのかをモラルではなくミステリーとして描くことも可能だったことを勘案するならば、真面目であるがゆえに映画としての面白さを取り逃してしまったという感は拭えない。