原題:『震動』 英題:『Shindo -The beat knocks her world-』
監督:平野朝美
脚本:平野朝美
撮影:市来聖史
出演:川籠石駿平/北香那/松永拓野/九太郎/小川弦/金子祐史/近藤真彩
2012年/日本
(SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2013)
伝わってこない「震動」について
演出に関して議論する以前に、肝心の脚本が上手くない。例えば、女性主人公の直が自分を捨てた母親が現れ、東京に行って一緒に暮らす決心をするのであるが、男性主人公の春樹は女性の耳が不自由になった原因は母親の暴力だったと言っている。子供を虐待していた母親が施設に連絡をしてきて引き取りたいと申し込んだとしても、施設長が認めないと思う。あるいはその施設長は、直に手話を教えたのは春樹であると直に話すのであるが、教えてもらった直が覚えていないということも考え難い。覚えているから、春樹がギターが弾けないようにするために右手薬指を骨折させた同級生たちがいる教室まで乗り込んで喧嘩をふっかけたのではなかったのか?
その喧嘩のシーンが直接描かれることはなく、タイトルにもなっている「震動」の場面は私が思い出せる限りでは、春樹がギターを購入するために一緒にいった楽器店で、大きなギターに耳をつけながら弦を爪弾いたときだけで、「震動感」はほとんど感じない。ラストシーンもグダグダで、せめて『汚れた血』(レオス・カラックス監督 1986年)のラストのジュリエット・ビノシュを見習って欲しかったのではあるが、直を演じた高校一年生の北香那の「熱演」だけは、「venetit haas」の音楽と共に強烈な印象を残す。それは熱が入った演技という意味ではなく、本当に「震動」を必要としているのかと思わせるからである。