原題:『劇場版トリコ 美食神の超食宝』
監督:座古明史
脚本:村山功
作画監督:香川久
出演:置鮎龍太郎/朴璐美/櫻井孝宏/岩田光央/松田賢二/北大路欣也/真矢みき
2013年/日本
子ども用アニメーションの定義
美食屋のトリコたちが、美食神のアカシアのフルコースの裏メニューに関する調達依頼のために向かった、絶海の孤島にある通称「アカシアのキッチン」と呼ばれる旧第1ビオトープにおける物語の展開について書いておきたい。
ビオトープの所長であるあやめは、かつてギリムとコンビを組んで料理を作りながら仲睦まじく暮らしていたのであるが、究極のフルコースを作るために美味しい食材を求めてギリムは旅に出たまま音信不通となってしまい、その食に対するギリムの飽くなき欲望はグルメ界の猛獣、ウルフファイアードラゴンを飲み込み融合することで、トリコたちが束になっても敵わない化け物に変身する。
ここまでのストーリーは納得出来るが、ここから不可解な展開が始まる。完全にギリムにやられたはずのトリコはコロナサンフラワーの一滴の蜜だけでよみがえり、いくら最高の食材で料理しても一人で食べる料理は美味しくないという‘道徳’を説き、それにギリムが納得してしまうのである。気持ちは分からなくはないが、それを言い出してしまうと、本作が追求しているはずの「究極のグルメ」という定義が曖昧になってしまい、多少食材は悪くても仲間と一緒に食べれば美味しくなるという‘精神論’に堕してしまう。だから本作は大人が観るものではなくて、子ども用の、いわゆる‘スポ根ドラマ’だと思うのである。