原題:『7 Cajas』 英題:『7 Boxes』
監督:フアン・カルロス・マネグリア/タナ・シェムボリ
脚本:フアン・カルロス・マネグリア
撮影:リチャード・カレイアガ
出演:セルソ・フランコ/ビクトル・ソサ/ラリ・ゴンザレス/ニコ・ガルシア
2012年/パラグアイ
(SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2013 脚本賞)
ヒーローになりたがらない若者の心情
パラグアイで動画撮影機能付き携帯電話が発売された2005年4月のアスンシオンの中央市場を舞台とした本作は、主人公の17歳のビクトルが手押し車を使った運び屋という職業に就いていることを反映するように、登場人物の誰もがなかなか自分が欲しいと思うものが手に入らないというストーリーを展開させる。実際に、冒頭のシーンが示すようにビクトルはDVDでドラマを見ながら自分自身がテレビに出演することを夢見ており、姉が購買を持ちかけた動画撮影機能付き携帯電話を購入するために、ギャラは高いが危険を伴うような仕事を引き受ける。
その後の物語の展開は文句なく面白いと思うが、気になった点を書いておきたい。自分が欲しいと思うものが手に入らないというストーリーにおいて、妊婦だったガスの妻がようやく子供を産んで自分の両手で赤ん坊を抱きしめるというシーンは良いのであるが、最後になって事件の首謀者が大金を手に入れてボートで逃げおおせてしまうというオチが腑に落ちない。あるいは入院先で自分が巻き込まれていた事件の様子をテレビで見て、自分が映っていることにビクトルが喜んでいるのであるが、それはビクトルが犯人に拳銃を突きつけられて人質になっているシーンで、決して格好が良いものではない。刑事ものや恋愛もののDVDを見ていたビクトルは自分もヒーローのようにカッコよくテレビに出たかったはずで、ただテレビに映っているだけで喜んでいる血気盛んな17歳の若者の心情が個人的にはいまいち理解出来ない。