MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『偽りの人生』

2013-07-26 22:12:44 | goo映画レビュー

原題:『Todos tenemos un plan』 英題:『Everybody Has a Plan』
監督:アナ・ピーターバーグ
脚本:アナ・ピーターバーグ/アンナ・コーハン
撮影:ルシオ・ボネリ
出演:ヴィゴ・モーテンセン/ソレダ・ビジャミル/ダニエル・ファネゴ
2012年/アルゼンチン・スペイン・ドイツ

人生をやり直す必要性について

 主人公で医師のアグスティンは妻で作家のクラウディアとアルゼンチンの首都ブエノスアイレスで何不自由ない暮らしを送っていたのであるが、結婚8年目にして子供が授からないために夫婦は養子縁組をしようとしていた。しかし何故かアグスティンは乗り気にならず、それが原因で夫婦は喧嘩をしてしまう。そんな時にアグスティンの目の前に現れた人物が一卵性双生児の兄のペドロだった。ペドロは自分が末期の癌であることを告白し、苦しさに耐えられないために持ってきていた拳銃で殺して欲しいとアグスティンに頼む。そして入浴中に吐血して苦しんでいるペドロを見かねたアグスティンは兄の頭部を無理やり浴槽に沈めて溺死させてしまうのであるが、このシーンの唐突さは、例えば、『愛、アムール』(ミヒャエル・ハネケ監督 2012年)においてジョルジュがアンナを窒息死させるシーンと比較するならば、動機の弱さを感じる。
 おそらくアグスティンは兄になりすまして地元のブエノスアイレスの生まれ故郷ティグレに帰り、兄が営んでいた養蜂業で一人静かな生活をしようと目論んでいたのであろうが、地元に戻ってアグスティンは兄が犯罪グループに関わっていることを知ることになる。最初はグループのリーダーの言いなりだったアグスティンは最後には逃げることなく反旗を翻しリーダーと相打ちとなりロサに看取られながらボートの中で絶命してしまう。
 それにしても分からないのは、実の兄を殺し、裕福な暮らしを捨ててまで地元に戻ろうとしたアグスティンの心理である。そこには幼少時代に受けた屈辱に対する‘リベンジ’という側面があったのかもしれず、それがアグスティンに子供を愛させない要因だと思われるのだが、兄弟の幼少時代が具体的に描かれておらず、アグスティンに同情出来ない。何よりも問題なのは帰宅してペドロの死体を見つけたクラウディアが‘夫’がベッドの上で‘溺死’していることに疑問を感じないことである。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

怒涛の“東大ネタ”

2013-07-26 00:52:54 | Weblog

痴漢に問われた東大准教授、2審で逆転無罪判決(読売新聞) - goo ニュース
東大教授、架空業務発注2180万円詐取…逮捕(読売新聞) - goo ニュース
東大43論文に改ざん・捏造疑い 元教授グループ(朝日新聞) - goo ニュース

通勤中の電車内で女性の体を触ったとして、東京都迷惑防止条例違反(痴漢)に問われた

東京大学准教授の46歳の男性被告の控訴審で、東京高裁(山崎学裁判長)は25日に、

「被害者の証言には変遷があり、被害者は裁判官の誘導尋問に沿って答えを出しているに

過ぎず、被告を犯人とは特定できない」として、罰金40万円とした1審・東京地裁判決を

破棄し、無罪の判決を言い渡した。一方、厚生労働省の補助金を受けた研究事業を巡り、

架空業務を発注して東京大学と岡山大学から計約2180万円をだまし取った疑いがあると

して、東京地検特捜部は同日に、東大政策ビジョン研究センター教授の55歳の秋山昌範を

詐欺容疑で逮捕しており、また東京大学の調査委員会が、分子細胞生物学研究所の54歳

の加藤茂明元教授のグループの論文について、改竄や捏造もしくはその疑いがあると認定

し、計43本は撤回が妥当と判断していることなど7月25日は“東大ネタ”が豊作だった。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『SHORT PEACE』

2013-07-25 22:54:21 | goo映画レビュー

原題:『SHORT PEACE』
監督:森本晃司(オープニング)/大友克洋(火要鎮)/森田修平(九十九)/安藤裕章(GAMBO)/カトキハジメ(武器よさらば)
脚本:大友克洋(火要鎮)/森田修平(九十九)/石井克人・山本健介(GAMBO)/カトキハジメ(武器よさらば)
出演:春名風花/早見沙織/森田成一/山寺宏一/悠木碧/田村睦心/二又一成/檀臣幸
2013年/日本

オムニバスの意義について

 「原点にして至宝 『アニメ』を失った大人達へ」という惹句を添えられ、敢えて『風立ちぬ』(宮崎駿監督 2013年)と同日に公開日を設定したということはそれなりの意味と自信を持つはずではあるが、アニメーションのファンはともかく、一般の観客にとって製作者サイドのメッセージを受けとめることはなかなか至難の技ではないだろうか。「SHORT PIECE(短編)」を「SHORT PEACE(ささやかな平和)」に変えたメッセージくらいならばオープニングを含めた5作品それぞれに見いだせるものの、その5作品の間に生じるはずの‘ケミストリー’は感じられず、長時間の鑑賞が耐えられない‘大人達’を慮ったような1時間強の上映時間はまさかストーリーの構築を放棄したわけでもないのではあろうが、期待を裏切られた感は否めない。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「お父さん」から「お兄ちゃん」

2013-07-25 00:24:46 | Weblog

ローラさんの父に出された「赤手配」 海外容疑者を追う「国際指名手配」とは何か?(弁護士ドットコム) - goo ニュース
ローラさん「CM降板」の危機!? 「家族の不祥事」で契約解除は許される?(弁護士ドットコム) - goo ニュース

国民健康保険の海外療養費をだまし取ったとして、詐欺容疑で国際指名手配された父親の

せいでCM契約が打ち切られたというような話は今のところなく、相変わらず安定した人気

を維持しているローラではあるが、最近の本人の出演しているCMに感じた違和感を記して

おきたい。新しいFX/CFD取引のDMM.com証券のCMにローラと一緒に清原和博が出演

しているのであるが、23歳のローラが45歳の清原に向かって「お兄ちゃん」と呼びかける

ことは不自然だとは思うのであるが、実父の事件が発覚した時には既に清原の出演は

決まっていたはずだから、急遽、「お父さん」から「お兄ちゃん」に変えたのだと思うのである。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『隠されていた写真』

2013-07-24 23:30:13 | goo映画レビュー

原題:『The Photograph』
監督:マチェイ・アダメク
脚本:マチェイ・アダメク
撮影:トメク・ミハウォフスキ
出演:マチェイ・ワゴジンスキ/アントニ・パヴリツキ/カロリナ・ゴルチツァ/アンジェイ・ヒラ
2012年/ポーランド・ドイツ・ハンガリー
SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2013)

ある映画監督の「覚悟」

 17歳の主人公であるアダムが父親と一緒に海岸で波と戯れるシーンから始まる冒頭のシーンはアダムがDVDカメラで撮影を始めると何故か父親の姿が無くなってしまう。そんな夢から覚めたアダムは病気で療養地に向かう母親を駅で見送った後に、母親が隠していた写真を発見する。そこには妊婦の母親の姿が写っていたのであるが、一緒に写っている笑顔の男性は父親ではなかった。その写真に関する誤解は最後には解けるのであるが、アダムの映像に関する誤解はそれだけではない。雇われのバーテンダーがエヴァと海岸で仲良さそうに遊んでいるところを目撃して、挨拶をしてきたバーテンダーを無視したり、エヴァがボーイフレンドに告白するために撮ったDVDのメッセージを自分に宛てたものだと勘違いしたりしている。つまり監督は自分が撮った作品の意図が正確に観客に伝わることはありえず、正確にメッセージが受け止められるとするならば、それは例えば、最後にアダムが母親に母親と祖母が一緒に映った写真を渡したり、あるいはアダムは断られてしまったが、初老の写真家が信頼されて墓掘り人の仕事現場を撮ったりするという関係の密接さの中にしかないという覚悟があるのだと思うが、映画監督の覚悟としてはなかなか厳しいものではないだろうか。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「トルコ」という名称の使用

2013-07-24 00:43:56 | Weblog

「トルコライスの日」やめます 大使館指摘受け長崎市(朝日新聞) - goo ニュース

 ピラフとスパゲティ、トンカツを一皿に盛る、長崎市の名物トルコライスをPRしようと市が

制定した「トルコライスの日」(9月16日)は、「イスラム圏のトルコでは豚肉は食べない」

などと在日トルコ大使館に指摘され取りやめになるらしいのであるが、長崎市によると今や

市民のソウルフードとなっているトルコライスの名前の由来は「3品の盛りつけをフランス

国旗の三色旗(トリコロール)になぞらえた」「考案した店の名」など諸説あり、必ずしもトルコ

という国を指しているわけではないようだから、中止にまでする必要はないのではないかと

思う。しかしトルコという名前の使用に関して、日本は苦い思い出があり、かつてソープランド

は「トルコ風呂」と呼ばれており、1984年に改名したのであるが、恐らく呆気なく中止を決定

した理由はそのことも少なからず影響しているのだと思う。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『セブン・ボックス』

2013-07-23 22:00:43 | goo映画レビュー

原題:『7 Cajas』 英題:『7 Boxes』
監督:フアン・カルロス・マネグリア/タナ・シェムボリ
脚本:フアン・カルロス・マネグリア
撮影:リチャード・カレイアガ
出演:セルソ・フランコ/ビクトル・ソサ/ラリ・ゴンザレス/ニコ・ガルシア
2012年/パラグアイ
SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2013 脚本賞)

ヒーローになりたがらない若者の心情

 パラグアイで動画撮影機能付き携帯電話が発売された2005年4月のアスンシオンの中央市場を舞台とした本作は、主人公の17歳のビクトルが手押し車を使った運び屋という職業に就いていることを反映するように、登場人物の誰もがなかなか自分が欲しいと思うものが手に入らないというストーリーを展開させる。実際に、冒頭のシーンが示すようにビクトルはDVDでドラマを見ながら自分自身がテレビに出演することを夢見ており、姉が購買を持ちかけた動画撮影機能付き携帯電話を購入するために、ギャラは高いが危険を伴うような仕事を引き受ける。
 その後の物語の展開は文句なく面白いと思うが、気になった点を書いておきたい。自分が欲しいと思うものが手に入らないというストーリーにおいて、妊婦だったガスの妻がようやく子供を産んで自分の両手で赤ん坊を抱きしめるというシーンは良いのであるが、最後になって事件の首謀者が大金を手に入れてボートで逃げおおせてしまうというオチが腑に落ちない。あるいは入院先で自分が巻き込まれていた事件の様子をテレビで見て、自分が映っていることにビクトルが喜んでいるのであるが、それはビクトルが犯人に拳銃を突きつけられて人質になっているシーンで、決して格好が良いものではない。刑事ものや恋愛もののDVDを見ていたビクトルは自分もヒーローのようにカッコよくテレビに出たかったはずで、ただテレビに映っているだけで喜んでいる血気盛んな17歳の若者の心情が個人的にはいまいち理解出来ない。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

奈良美智と石ノ森章太郎

2013-07-23 00:58:58 | 美術

上のキャラクターの作者が誰かと問われて、奈良美智と答えられる人は現代アートに詳しい

と思うが、正解は先日NHKBSプレミアムで放送されていた『手塚治虫×石ノ森章太郎 

TV作品初回・最終回大集合』という特集の、石森章太郎作品『サイボーグ009』の最終話

(26話)の「平和の戦士は死なず」(1968年9月27日 初放送)の中で現れる「悪魔」と

呼ばれる少女の人形である。奈良が8歳の時なのであるが、まるでアンディ・ウォーホル

がアメリカのポップカルチャーからアイデアを得たように、奈良美智も石ノ森章太郎から

多少なりともアイデアを得ていたのではないのかと思ったことを書き留めておきたい。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『神奈川芸術大学映像学科研究室』

2013-07-22 22:01:26 | goo映画レビュー

原題:『神奈川芸術大学映像学科研究室』
監督:坂下雄一郎
脚本:坂下雄一郎
撮影:松井宏樹
出演:飯田芳/笠原千尋/前野朋哉
2013年/日本
SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2013 審査員特別賞) 

「真面目さ」の代償

 事件の発端は神奈川芸術大学映像学科に助手として勤めている主人公の奥田明が機材室の鍵が無いことに気づいたところから始まる。部屋に行ってみると一人の学生が撮影機材を持ち出している現場に遭遇し、さらに部屋の中では2人の学生がまさに他の機材を棚から下ろそうとしていたところだった。奥田に見つかったことで動揺した2人の学生は機材を床に落としてしまい、200万円の損失を出してしまう。
 学生が無断で撮影機材を持ち出そうとした理由は、その前に機材を借りた際に、返却期限をわずか1分ほど遅れ、一週間貸出禁止になっていたためなのであるが、やがてこの3人の学生の処分に関して学校側を右往左往させてしまう機材盗難事件が、果たして「盗難」と言えるものだったのかどうかは疑問が残る。もちろん演出上は実際に機材をクルマに積んでいる盗難事件とし、その後の事件に対する学校側の優柔不断さを皮肉を込めて描くことになり、学生たちの行動をあくまでも「事件」として扱い、「正義」を貫いた奥田が学生の信頼を得て、友人から誘われていた仕事を断るというその真面目さを非難するつもりはないのであるが、学生が起こした不祥事が本当に「盗難」だと断定出来るものだったのかをモラルではなくミステリーとして描くことも可能だったことを勘案するならば、真面目であるがゆえに映画としての面白さを取り逃してしまったという感は拭えない。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

池上彰になれない関口宏

2013-07-22 20:33:18 | Weblog

テレ東・池上彰の選挙特番視聴率10%超え 民放特番で圧勝(ORICON STYLE) - goo ニュース
強気の自民につけ込まれる“隙だらけ”メディア(プレジデントオンライン) - goo ニュース

 ここに書きたいことは池上彰のことではなくて、池上彰のように首相にツッコミを入れようと

して却って赤っ恥をかいたある男のことである。その男は安倍晋三に向かって次のように

言い放った。「でも、それはゆくゆくはやっぱり憲法9条の改正というところへ結びつけていく

ということですか」。「あの、私たちは既に9条も含めてですね、改正草案をお示しして

いますね、全てですね。で、その中において逐条的にどれをやっていくかということをお示し

をしていきたいと思います。まだ恐らく多くの方が我々の改正草案についてもご存知ないん

だろうと思います」という首相の発言を受けたその男に何故かスイッチが入って、「そうでも

ないですよ。あの、結構、勉強されて方も多くてね。やはり何か国家権力が強くなる、軍事力

が強くなる、何か昔のニッポンに返っちゃうんじゃないかって心配する声が沢山ありますよ」

という“正論”を待っていたかのように首相は、「でも、そうすると、例えば、じゃあ(自民党の

憲法草案)9条の一項と二項、どこを変えたかご存知ですか」と問い、「はい、分かって

ますよ。『サンデーモーニング』でもしっかりみなさんでお勉強いたしました」と自信たっぷりに

男は答えたものの、「あの、一項については我々変えていません。そして二項以降にさらに

自衛隊をですね、国防軍として実力組織としてちゃんとい続けています。さらにシビリアン

コントロール、国際社会においての貢献等について書いているわけでありますが、例えば、

外国を見てもですね、これだけの実力組織をしっかり基本法の中に明記していないという

事の方が寧ろおかしいんだろうとこのように思いますものね」と、したり顔で返されてしまい、

その後は岸井成格が発言を引き受けたおかげでかろうじて威厳を保てた関口宏の才能の

無さに関しては既に書いた通りで、才能が無くてもいいからせめて少しくらい勉強すれば

いいのに勉強もしていないのに、「お勉強いたしました」と平気な顔をして嘘をつく人に

参議院選挙特番のメイン司会をさせるTBSは本当に大丈夫なのだろうか


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする