千田稔著『古事記の奈良大和路』(東方出版刊)2,100円を読んだ。産経新聞奈良版に「記紀万葉の風景」(2011年5月~12年6月)のタイトルで連載されていた記事に加筆され、一冊にまとめられたものである。msn産経ニュース(2012.12.22)《奈良県立図書情報館長が「古事記の奈良大和路」出版》によると、
奈良県立図書情報館長の千田稔さんが平成23年5月から今年6月まで、産経新聞奈良版で連載していた「記紀万葉の風景」を再構成した本「古事記の奈良大和路」が東方出版(大阪市)から出版される。連載は、古事記が生み出された奈良の風景を訪ね、古事記や日本書紀、万葉集の記述と比較しながら、古代の大和路を探求する内容となっている。
今回の本では、全45回の連載を一部補訂・再構成し、新たな写真も加えられ計90点をオールカラーで紹介。また、近辺の地図も掲載し、ゆかりの地のガイドとしても活用できる。四六版187ページ。税込み2100円で県内外の書店で25日ごろに発売。問い合わせは、東方出版((電)06・6779・9571)。
版元の紹介文には《『古事記』の生まれた奈良・大和路の土地に立ち、その風景を訪ね、『日本書紀』や『万葉集』の記述とも比較しつつ、『古事記』にひそむ古代を考究する。全45 話。写真90 点をオールカラーで収録、各話に近辺地図を付す》とある。「主要目次」は
1 稗田―官人舎人・阿礼出身の環濠集落
2 多と田原―『古事記』の編者太安万侶の故郷
3 天の香具山〈上〉―天空から降りてきた特別な山
9 宇陀―神武天皇を先導した八咫烏
10 忍坂―死者が葬られた円錐形の山
11 磯城―六世紀には王権の中枢部
14 欠史八代の地名〈中〉―浮孔、掖上、秋津島…伝わる宮
17 師木の水垣宮〈下〉―箸墓とオオモノヌシの妻
19 纏向 まほろば―ヤマトタケル、故郷を歌う
20 沙紀(佐紀)―五〇基からなる有数の大古墳群
26 磐余(伊波礼)〈下〉―始祖王朝とつながる聖地
27 当麻―履中天皇が勧められた峠越え
28 和邇(丸邇)―埴土か動物のワニに由来か
29 泊瀬(初瀬)〈上〉―軽ひつぎのみこ太子と妹の哀しい恋物語
42 勾と檜坰―渡来系集団の拠点に宣化天皇の宮
44 高天の原〈上〉―天空の神々がましますところ
45 高天の原〈下〉―原郷は中国大陸・江南地方か
あとがき
産経新聞連載中から拝読していたが、他の記事とはあまりにも書きぶりが違うので、読むのは正直シンドかった。しかし、こうしてまとまってみると、とても読みやすい。写真も増え、すべてカラーである(連載中はモノクロ)。私のFacebook友達の矢ヶ井敏美さんが、たくさん写真を提供されていて、こんなに写真がお上手とは知らなかった。江南地方(中国)の町並みの写真まで撮られていたのには驚いた。
さすがに碩学の千田氏は、このように大胆なこともズバリと書いておられる。浮孔(うきあな)村のところで《奈良県には、このように明治22年に、厳密に古代のことを考証しないで、おおよそこれでよかろうということで村名にした場合がありますから、現在の地名から古代のことを論じることは、正しい方法ではありません。例えば三宅村(現三宅町)、朝倉村(現桜井市の一部)などがそれにあたります》等々。
千田氏は「あとがき」にこのように記している。《これからの歴史への関心は、由緒ある神社仏閣に参拝し、むずかしい歴史の話を聞くだけではなく、その土地のたたずまいや風景に歴史のイメージを、自分自身で感じとるような方向に向かうと、私は予想しています》。
私も全く同感である。奈良のお寺でよく出くわす「仏女」の皆さんは、「拝観」や「勉強」に来ているというより、何かを「感じとる」ために来ているように見受けられる。だから半日、ずっと座り込み、あたかも仏さまと心の中で対話しているような具合である。
しかし、そのためにはある程度の予備知識が必要だ。『古事記の奈良大和路』は、正確で分かりやすい手引き書として活用できる。ぜひご一読をお薦めしたい。
奈良県立図書情報館長の千田稔さんが平成23年5月から今年6月まで、産経新聞奈良版で連載していた「記紀万葉の風景」を再構成した本「古事記の奈良大和路」が東方出版(大阪市)から出版される。連載は、古事記が生み出された奈良の風景を訪ね、古事記や日本書紀、万葉集の記述と比較しながら、古代の大和路を探求する内容となっている。
今回の本では、全45回の連載を一部補訂・再構成し、新たな写真も加えられ計90点をオールカラーで紹介。また、近辺の地図も掲載し、ゆかりの地のガイドとしても活用できる。四六版187ページ。税込み2100円で県内外の書店で25日ごろに発売。問い合わせは、東方出版((電)06・6779・9571)。
版元の紹介文には《『古事記』の生まれた奈良・大和路の土地に立ち、その風景を訪ね、『日本書紀』や『万葉集』の記述とも比較しつつ、『古事記』にひそむ古代を考究する。全45 話。写真90 点をオールカラーで収録、各話に近辺地図を付す》とある。「主要目次」は
1 稗田―官人舎人・阿礼出身の環濠集落
2 多と田原―『古事記』の編者太安万侶の故郷
3 天の香具山〈上〉―天空から降りてきた特別な山
9 宇陀―神武天皇を先導した八咫烏
10 忍坂―死者が葬られた円錐形の山
11 磯城―六世紀には王権の中枢部
14 欠史八代の地名〈中〉―浮孔、掖上、秋津島…伝わる宮
17 師木の水垣宮〈下〉―箸墓とオオモノヌシの妻
19 纏向 まほろば―ヤマトタケル、故郷を歌う
20 沙紀(佐紀)―五〇基からなる有数の大古墳群
26 磐余(伊波礼)〈下〉―始祖王朝とつながる聖地
27 当麻―履中天皇が勧められた峠越え
28 和邇(丸邇)―埴土か動物のワニに由来か
29 泊瀬(初瀬)〈上〉―軽ひつぎのみこ太子と妹の哀しい恋物語
42 勾と檜坰―渡来系集団の拠点に宣化天皇の宮
44 高天の原〈上〉―天空の神々がましますところ
45 高天の原〈下〉―原郷は中国大陸・江南地方か
あとがき
![]() | 古事記の奈良大和路 |
千田稔 | |
東方出版 |
産経新聞連載中から拝読していたが、他の記事とはあまりにも書きぶりが違うので、読むのは正直シンドかった。しかし、こうしてまとまってみると、とても読みやすい。写真も増え、すべてカラーである(連載中はモノクロ)。私のFacebook友達の矢ヶ井敏美さんが、たくさん写真を提供されていて、こんなに写真がお上手とは知らなかった。江南地方(中国)の町並みの写真まで撮られていたのには驚いた。
さすがに碩学の千田氏は、このように大胆なこともズバリと書いておられる。浮孔(うきあな)村のところで《奈良県には、このように明治22年に、厳密に古代のことを考証しないで、おおよそこれでよかろうということで村名にした場合がありますから、現在の地名から古代のことを論じることは、正しい方法ではありません。例えば三宅村(現三宅町)、朝倉村(現桜井市の一部)などがそれにあたります》等々。
千田氏は「あとがき」にこのように記している。《これからの歴史への関心は、由緒ある神社仏閣に参拝し、むずかしい歴史の話を聞くだけではなく、その土地のたたずまいや風景に歴史のイメージを、自分自身で感じとるような方向に向かうと、私は予想しています》。
私も全く同感である。奈良のお寺でよく出くわす「仏女」の皆さんは、「拝観」や「勉強」に来ているというより、何かを「感じとる」ために来ているように見受けられる。だから半日、ずっと座り込み、あたかも仏さまと心の中で対話しているような具合である。
しかし、そのためにはある程度の予備知識が必要だ。『古事記の奈良大和路』は、正確で分かりやすい手引き書として活用できる。ぜひご一読をお薦めしたい。