先日(6/22)「第4回観光力創造塾」の参加者募集について、当ブログで紹介した(すでに定員の半分以上が埋まっている)。講演(第1部)の講師は、株式会社やまとごころ代表取締役の村山慶輔氏である。
※トップ写真は、奥山月日亭のホームページから拝借
今回の講演をお願いするにあたり、村山氏のメールマガジンの読者登録をさせていただいたところ毎日、インバウンドに関するタイムリーな情報が送られてくる。6/18(木)のメルマガのタイトルは「宿はまだまだある」だった。
本日のテーマは宿はまだまだある です。先日、アジアインバウンド観光振興会の総会でも色んなディスカッションが展開されました。その中で宿泊施設についての話が多くを占めていました。ランドオペレーターはホテルを押さえたいが、ホテルの稼働率が高く、押さえにくい…など、他にもここでは書ききれない課題も色々と噴出しています。そんななか、ランドオペレーターにとって重要なテーマは、いかに地方のルートを開拓するか? となっています。
宿が足りない という話はよくありますが、日本全国の宿が足りないわけではありません。都市部や人気のある観光地の宿は確かに高い稼働率を誇りますが、それ以外はまだまだ部屋が空いていることが多いのです。また、外国人観光客のニーズの多様化・リピーター化 の流れから地方へ足を運びたい!という動きも出てきています。
ではいかに地方に誘客するのか?例えば、ターゲットを都市部や人気の観光地で宿が取れなかった外国人観光客 とした場合、彼らの目的地からの距離感、アクセスのしやすさをまずは打ち出すことが重要です。いきなり自分の地名を認知してもらい来てもらおうとすると時間も予算もかかります。彼らの目的地は、彼らも認識しているので、そこをベースにした訴求がすんなりいきます。
これは、現地旅行会社やランドオペレーターへの売り込みも同じです。彼らも常に代替案を探しています。このホテルがダメなら、別のホテルで…というように。まずは、その代替案の候補としての使いやすさ、説明のしやすさを訴求してみるものいいでしょう。
今年1500万人を軽く超えそうなペースで外国人観光客が増加する中、宿の問題は今後もさらに顕著になってくるでしょう。いかに地方へ誘客するか?今回はターゲットをピンポイントに絞った話をしましたが、今後も色んな角度からこの方法や事例も紹介していきたいと思います!ちなみにやまとごころでは自治体のインバウンド事例を収集していますので、是非こちらも参考にしてください!本日はここまで!村山慶輔
奈良県は「ホテルが足りない。高級ホテル誘致を!」と躍起になっているが、「宿はまだまだある」という話は別のところでも聞いたことがある。
冷静に統計を見てみよう。奈良県での年間宿泊客数は263万人(平成24年)。一方、同年の県内の宿泊定員数は26,710人(宿泊施設数は528軒・客室数は7,702室)だ(平成24年奈良県宿泊統計調査 )。つまり、1日に泊まっている人は7,205人(=263万人÷365日)なのに、宿泊定員数は26,710人と、定員稼働率は27%に過ぎない。逆にいうと、毎日73%が空いているのだ。
繁閑の差(正倉院展とか吉野の桜の時期に集中する)とか、「旅館の和室は定員一杯にできない(4人部屋を4人で利用しない など)」という問題はあるにしても、平均すれば大半が空いている。決して「宿泊施設数が足りない」という話ではないのだ(客室数は7,702室、宿泊者数は7,205人だから、1室に1人泊まってもまだ余裕がある)。
空きが多いのは郡部の旅館であろう。「田舎の古い旅館には。誰も見向きもしない」という声がよく聞かれるが、外国人観光客はちょっと違う。村山氏は「外国人観光客のニーズの多様化・リピーター化の流れから地方へ足を運びたい!という動きも出てきています」というし、朝日新聞にはこんな記事も出ていた。「外国人、旅館にカモン 訪日最多…でも減り続ける宿数」(朝日新聞デジタル 6/21付)。
訪日外国人の数が過去最多を更新するなか、旅館が減り続けている。観光庁は「時代のニーズに対応できず、外国人客の取り込みにも消極的だ」と指摘。先月から経営者らを対象にした無料オンライン講座「旅館経営教室」を立ち上げた。
■旅館数、30年で半減
「旅館業は地方創生の要として期待が高まる一方、減り続けている。手を打たなければならない」。先月、観光庁が大阪市内で開いた「旅館経営教室」セミナーで、一般社団法人サービス産業革新推進機構の内藤耕・代表理事が、約90人の経営者らに呼びかけた。
厚生労働省の2013年度衛生行政報告例によると、全国の旅館数は1983年度に8万1453だったが、13年度は4万3363に半減した。また、観光庁の宿泊旅行統計調査では、14年の客室稼働率はシティホテルの78%、ビジネスホテルの73・8%に対して、旅館は35・9%しかなかった。
一方、日本政府観光局によると、14年の訪日外国人は前年より29・4%増の1341万3千人で、過去最多。観光庁の宿泊旅行統計調査によると、14年の近畿2府4県の外国人延べ宿泊者数は前年より33・2%増の1056万人だった。観光庁が今年1~3月、出国する外国人約1万人を対象にした消費動向調査では、5人に1人が訪日前、旅館に期待感を持ち、3人に1人が旅館に泊まった。
旅館は外国人に人気なのに苦境なのはなぜか。日本政策金融公庫が12年、融資先の旅館約2千社を対象に、799社から回答を得た経営実態調査によると、外国人の集客に向けた取り組みを「している」は17・6%で、「していない」は82・4%だった。
観光庁観光産業課によると多くの旅館が「外国語を話せる従業員がいない」などの理由で、外国人客の取り込みに消極的という。また、旅行形態が団体から個人に移行する中、旅館には従来通り団体客や旅行会社から回ってくる客に頼る傾向があるという。同課は「ニーズに合わせて頑張る旅館とそうではない旅館の差が大きい」と指摘する。
観光庁は旅館を「単なる宿泊施設ではなく日本文化を継承し体現するかけがえのない存在」と位置づける。そのため、数の激減に危機感を持ち、5月には大阪市など全国4カ所で経営者らを対象にしたセミナーを開催。5月から8月にかけて、計20回の無料オンライン講座「旅館経営教室」を初めて開いている。
経営の改善が訪日外国人の取り込みにもつながるとして、オンライン講座では内藤・代表理事が、無駄を減らしてサービスの質を上げる具体的な方法などについて講義する。登録者数は6月19日現在、約2900人にのぼっている。(鈴木 洋和)
■内装・庭の美 心つかむ
大阪府河内長野市の温泉旅館「南天苑(なんてんえん)」では5年前は月に数組だった外国人客が、現在は平日宿泊客の6割ほどを占める。2013年に英語版のホームページを作り、14年に中国語版と韓国語版を追加した。海外の宿泊予約サイトにも登録。宿泊客の書き込みなどがきっかけで外国人が訪れるという。米国から友人2人と訪れたジャン・バーズレーさん(64)は5月末、インターネットで南天苑を見つけ滞在した。「内装も庭も美しい。日本だからできる経験です」
南天苑のある天見温泉は、大阪・ミナミから電車で約40分の山あいにある。白浜温泉(和歌山県)や有馬温泉(兵庫県)に比べると知名度は低いが、外国人には日本人ほどの既成概念がないため、名前に引っ張られずにネットで見つけて宿泊するという。
本館は築100年ほど。これまで部屋にトイレを付けるなど維持や改修を繰り返した。山崎一弘社長(55)によると、現在の悩みは露天風呂が無いことだ。外国人にも「温泉といえば露天風呂」のイメージが定着し始めている。ネットで「大阪 温泉 露天風呂」で検索し、浮上しないのは致命的という。そこで、宴会場として利用する離れを露天風呂付き個室に改装する。資金は約1200万円で、ネットを通じて不特定多数の人から資金を募る「クラウドファンディング」を利用する。
女将(おかみ)の山崎友起子さん(56)は「外国人のお客様は和風建築や自然環境などこちらの魅力を分かってくれる。長く滞在してもらえるように、周辺地図を作るなどソフト面でも工夫したい」と話している。(鈴木洋和)
■意識変われば好転のチャンスも
和歌山大学の広岡裕一教授(観光学)の話 旅館には従業員が少なく、外国人を取り込もうという発想に至らないのが現実。早朝や夜の勤務があるなど労働時間が不規則などの理由で、人材の確保が難しい。しかし、意識が変われば好転するチャンスはある。外国人の中には、旅館に泊まりたくてもアプローチの仕方が分からない人がいる。外国人向けの旅館サイトを充実させることも大切だ。
この朝日の記事については、金田充史さん(魚佐旅館専務)がFacebookにスルドいことを書いておられた。
旅館に泊まっても、期待はずれって事で、この程度では、敢えて泊まる気にはなれず、あとは、普通のホテルでいいやって事になっている可能性もある。何故なら、旅館とはいえ、今や、温泉旅館も都市型旅館も、全て、ほとんどが、鉄筋の建物になってしまった。表から見れば、別に、旅館もホテルも変わらない。入れば、下足番の居る旅館も、ほとんど見ない。
廊下の端々には、小さな花が飾られていて、それは雰囲気を醸しているが、ホテルでも、変わらずにしてある所もある。で、部屋に入れば、そこは、和室なのだが、木の香りがしたり、土で塗られた壁ではなく、壁紙で覆われた部屋だ。あとは、洗面所とトイレ位で、これも、ホテルと変わらない。食事も、旅館だからこそって、和食のすごいのが出てくるのかと言えば、そんなに、珍しいものが出てくる訳ではない。
こんなのなら、泊まる所は、快適に泊まれて、煩わしさも無いホテルがいいやって事になり、自分で好きなのを選んで、表で食事をしてって事につながる。旅館が、旅館としての地位を、高度成長期に放棄し、手間を省いた結果、ビジネスホテルのマガイ物になってしまった事が、外国人から見た、旅館の魅力が薄い1つの原因になっている感がする。そのセーフティーネットをゲストハウスがしている感がするのは、誤りだろうか。???
私は常々、「スーパーホテルはあっても、スーパー旅館はない」と申し上げている。建物を鉄筋コンクリートにし、下足番を廃し、名物料理を出さないのなら「ビジネスホテルのまがいもの」に堕してしまうからだ。それなら「ゲストハウス」で十分、ということになる。旅館の存在意義がなくなるのだ。
観光庁は旅館を「単なる宿泊施設ではなく日本文化を継承し体現するかけがえのない存在」と位置づけている。奈良県は他府県と比べてホテル数は少ないが、旅館は多い。奈良県は神仏に抱かれた日本の聖地だ。神道、仏教に修験道。それに墨、筆、清酒、そうめん、わび茶(茶道)の発祥地。胸を張って「奈良県の旅館にカモン!」と言えるよう、外国語対応やホームページの充実に取り組んでいただきたいと願う。
※トップ写真は、奥山月日亭のホームページから拝借
今回の講演をお願いするにあたり、村山氏のメールマガジンの読者登録をさせていただいたところ毎日、インバウンドに関するタイムリーな情報が送られてくる。6/18(木)のメルマガのタイトルは「宿はまだまだある」だった。
本日のテーマは宿はまだまだある です。先日、アジアインバウンド観光振興会の総会でも色んなディスカッションが展開されました。その中で宿泊施設についての話が多くを占めていました。ランドオペレーターはホテルを押さえたいが、ホテルの稼働率が高く、押さえにくい…など、他にもここでは書ききれない課題も色々と噴出しています。そんななか、ランドオペレーターにとって重要なテーマは、いかに地方のルートを開拓するか? となっています。
宿が足りない という話はよくありますが、日本全国の宿が足りないわけではありません。都市部や人気のある観光地の宿は確かに高い稼働率を誇りますが、それ以外はまだまだ部屋が空いていることが多いのです。また、外国人観光客のニーズの多様化・リピーター化 の流れから地方へ足を運びたい!という動きも出てきています。
ではいかに地方に誘客するのか?例えば、ターゲットを都市部や人気の観光地で宿が取れなかった外国人観光客 とした場合、彼らの目的地からの距離感、アクセスのしやすさをまずは打ち出すことが重要です。いきなり自分の地名を認知してもらい来てもらおうとすると時間も予算もかかります。彼らの目的地は、彼らも認識しているので、そこをベースにした訴求がすんなりいきます。
これは、現地旅行会社やランドオペレーターへの売り込みも同じです。彼らも常に代替案を探しています。このホテルがダメなら、別のホテルで…というように。まずは、その代替案の候補としての使いやすさ、説明のしやすさを訴求してみるものいいでしょう。
今年1500万人を軽く超えそうなペースで外国人観光客が増加する中、宿の問題は今後もさらに顕著になってくるでしょう。いかに地方へ誘客するか?今回はターゲットをピンポイントに絞った話をしましたが、今後も色んな角度からこの方法や事例も紹介していきたいと思います!ちなみにやまとごころでは自治体のインバウンド事例を収集していますので、是非こちらも参考にしてください!本日はここまで!村山慶輔
奈良県は「ホテルが足りない。高級ホテル誘致を!」と躍起になっているが、「宿はまだまだある」という話は別のところでも聞いたことがある。
冷静に統計を見てみよう。奈良県での年間宿泊客数は263万人(平成24年)。一方、同年の県内の宿泊定員数は26,710人(宿泊施設数は528軒・客室数は7,702室)だ(平成24年奈良県宿泊統計調査 )。つまり、1日に泊まっている人は7,205人(=263万人÷365日)なのに、宿泊定員数は26,710人と、定員稼働率は27%に過ぎない。逆にいうと、毎日73%が空いているのだ。
繁閑の差(正倉院展とか吉野の桜の時期に集中する)とか、「旅館の和室は定員一杯にできない(4人部屋を4人で利用しない など)」という問題はあるにしても、平均すれば大半が空いている。決して「宿泊施設数が足りない」という話ではないのだ(客室数は7,702室、宿泊者数は7,205人だから、1室に1人泊まってもまだ余裕がある)。
空きが多いのは郡部の旅館であろう。「田舎の古い旅館には。誰も見向きもしない」という声がよく聞かれるが、外国人観光客はちょっと違う。村山氏は「外国人観光客のニーズの多様化・リピーター化の流れから地方へ足を運びたい!という動きも出てきています」というし、朝日新聞にはこんな記事も出ていた。「外国人、旅館にカモン 訪日最多…でも減り続ける宿数」(朝日新聞デジタル 6/21付)。
訪日外国人の数が過去最多を更新するなか、旅館が減り続けている。観光庁は「時代のニーズに対応できず、外国人客の取り込みにも消極的だ」と指摘。先月から経営者らを対象にした無料オンライン講座「旅館経営教室」を立ち上げた。
■旅館数、30年で半減
「旅館業は地方創生の要として期待が高まる一方、減り続けている。手を打たなければならない」。先月、観光庁が大阪市内で開いた「旅館経営教室」セミナーで、一般社団法人サービス産業革新推進機構の内藤耕・代表理事が、約90人の経営者らに呼びかけた。
厚生労働省の2013年度衛生行政報告例によると、全国の旅館数は1983年度に8万1453だったが、13年度は4万3363に半減した。また、観光庁の宿泊旅行統計調査では、14年の客室稼働率はシティホテルの78%、ビジネスホテルの73・8%に対して、旅館は35・9%しかなかった。
一方、日本政府観光局によると、14年の訪日外国人は前年より29・4%増の1341万3千人で、過去最多。観光庁の宿泊旅行統計調査によると、14年の近畿2府4県の外国人延べ宿泊者数は前年より33・2%増の1056万人だった。観光庁が今年1~3月、出国する外国人約1万人を対象にした消費動向調査では、5人に1人が訪日前、旅館に期待感を持ち、3人に1人が旅館に泊まった。
旅館は外国人に人気なのに苦境なのはなぜか。日本政策金融公庫が12年、融資先の旅館約2千社を対象に、799社から回答を得た経営実態調査によると、外国人の集客に向けた取り組みを「している」は17・6%で、「していない」は82・4%だった。
観光庁観光産業課によると多くの旅館が「外国語を話せる従業員がいない」などの理由で、外国人客の取り込みに消極的という。また、旅行形態が団体から個人に移行する中、旅館には従来通り団体客や旅行会社から回ってくる客に頼る傾向があるという。同課は「ニーズに合わせて頑張る旅館とそうではない旅館の差が大きい」と指摘する。
観光庁は旅館を「単なる宿泊施設ではなく日本文化を継承し体現するかけがえのない存在」と位置づける。そのため、数の激減に危機感を持ち、5月には大阪市など全国4カ所で経営者らを対象にしたセミナーを開催。5月から8月にかけて、計20回の無料オンライン講座「旅館経営教室」を初めて開いている。
経営の改善が訪日外国人の取り込みにもつながるとして、オンライン講座では内藤・代表理事が、無駄を減らしてサービスの質を上げる具体的な方法などについて講義する。登録者数は6月19日現在、約2900人にのぼっている。(鈴木 洋和)
■内装・庭の美 心つかむ
大阪府河内長野市の温泉旅館「南天苑(なんてんえん)」では5年前は月に数組だった外国人客が、現在は平日宿泊客の6割ほどを占める。2013年に英語版のホームページを作り、14年に中国語版と韓国語版を追加した。海外の宿泊予約サイトにも登録。宿泊客の書き込みなどがきっかけで外国人が訪れるという。米国から友人2人と訪れたジャン・バーズレーさん(64)は5月末、インターネットで南天苑を見つけ滞在した。「内装も庭も美しい。日本だからできる経験です」
南天苑のある天見温泉は、大阪・ミナミから電車で約40分の山あいにある。白浜温泉(和歌山県)や有馬温泉(兵庫県)に比べると知名度は低いが、外国人には日本人ほどの既成概念がないため、名前に引っ張られずにネットで見つけて宿泊するという。
本館は築100年ほど。これまで部屋にトイレを付けるなど維持や改修を繰り返した。山崎一弘社長(55)によると、現在の悩みは露天風呂が無いことだ。外国人にも「温泉といえば露天風呂」のイメージが定着し始めている。ネットで「大阪 温泉 露天風呂」で検索し、浮上しないのは致命的という。そこで、宴会場として利用する離れを露天風呂付き個室に改装する。資金は約1200万円で、ネットを通じて不特定多数の人から資金を募る「クラウドファンディング」を利用する。
女将(おかみ)の山崎友起子さん(56)は「外国人のお客様は和風建築や自然環境などこちらの魅力を分かってくれる。長く滞在してもらえるように、周辺地図を作るなどソフト面でも工夫したい」と話している。(鈴木洋和)
■意識変われば好転のチャンスも
和歌山大学の広岡裕一教授(観光学)の話 旅館には従業員が少なく、外国人を取り込もうという発想に至らないのが現実。早朝や夜の勤務があるなど労働時間が不規則などの理由で、人材の確保が難しい。しかし、意識が変われば好転するチャンスはある。外国人の中には、旅館に泊まりたくてもアプローチの仕方が分からない人がいる。外国人向けの旅館サイトを充実させることも大切だ。
この朝日の記事については、金田充史さん(魚佐旅館専務)がFacebookにスルドいことを書いておられた。
旅館に泊まっても、期待はずれって事で、この程度では、敢えて泊まる気にはなれず、あとは、普通のホテルでいいやって事になっている可能性もある。何故なら、旅館とはいえ、今や、温泉旅館も都市型旅館も、全て、ほとんどが、鉄筋の建物になってしまった。表から見れば、別に、旅館もホテルも変わらない。入れば、下足番の居る旅館も、ほとんど見ない。
廊下の端々には、小さな花が飾られていて、それは雰囲気を醸しているが、ホテルでも、変わらずにしてある所もある。で、部屋に入れば、そこは、和室なのだが、木の香りがしたり、土で塗られた壁ではなく、壁紙で覆われた部屋だ。あとは、洗面所とトイレ位で、これも、ホテルと変わらない。食事も、旅館だからこそって、和食のすごいのが出てくるのかと言えば、そんなに、珍しいものが出てくる訳ではない。
こんなのなら、泊まる所は、快適に泊まれて、煩わしさも無いホテルがいいやって事になり、自分で好きなのを選んで、表で食事をしてって事につながる。旅館が、旅館としての地位を、高度成長期に放棄し、手間を省いた結果、ビジネスホテルのマガイ物になってしまった事が、外国人から見た、旅館の魅力が薄い1つの原因になっている感がする。そのセーフティーネットをゲストハウスがしている感がするのは、誤りだろうか。???
私は常々、「スーパーホテルはあっても、スーパー旅館はない」と申し上げている。建物を鉄筋コンクリートにし、下足番を廃し、名物料理を出さないのなら「ビジネスホテルのまがいもの」に堕してしまうからだ。それなら「ゲストハウス」で十分、ということになる。旅館の存在意義がなくなるのだ。
観光庁は旅館を「単なる宿泊施設ではなく日本文化を継承し体現するかけがえのない存在」と位置づけている。奈良県は他府県と比べてホテル数は少ないが、旅館は多い。奈良県は神仏に抱かれた日本の聖地だ。神道、仏教に修験道。それに墨、筆、清酒、そうめん、わび茶(茶道)の発祥地。胸を張って「奈良県の旅館にカモン!」と言えるよう、外国語対応やホームページの充実に取り組んでいただきたいと願う。