![]() | 森の時間 |
前登志夫 | |
冨山房インターナショナル |
劇団小町座を主宰される小野小町(おの・こまち)さんから、こんなメールをいただいた。小野さんは「前登志夫を偲ぶ会」のメンバーである。
今年の前登志夫を偲ぶ会は、1時間のラジオ番組を作りました。先生の『森の時間』よりの朗読他、先生の過去の番組より声を再構成したり、先生作詞の川上小学校校歌などを、4月5日(水)の命日に放送します。チラシを添付しました。来年は没後十年、本当に早いです。
チラシによると、放送局は「ならどっとFM」(78.4Mhz)、放送日時は4月5日(水)15:00~16:00[再放送は 4月8日(土)21:00~22:00]である。今はインターネットのサイマルラジオで、この時間帯ならどこでも聞くことができる。
前登志夫氏の短編小説集『森の時間』(冨山房インターナショナル刊)は、けだし名著である。前登志夫氏とこの本のことは以前、「奈良ものろーぐ」(奈良日日新聞)で紹介したことがある。
白洲正子は前氏との対談で本書を引き合いに出し「先生の文章って、普通の歌人の文章と違いますよね。歌人の文章ってもの、あるじゃない。俳句の方でも違うわよ。詩人の文章も違う。先生のは、文章家の文章だわよ。そこのところが、私とっても面白いと思って。面白いと言っちゃ失礼だけども、そう思いますよ。全然違うんですもの」と話していた。チラシには本書の「夢ちがえ」から、こんな一節が紹介されている。
「年をへて待つも惜しむもやまざくら心を春はつくすなりけり」と、西行は詠んでいる。「落花のうたあまたよみけるに」と詞書がある。西行のような花狂いではないが、桜の花が咲くと、どうしても心のさわぐのを抑えることができない。桜を咲かせる頃の山野の気配や春の陽気には、ほかの季節にはない繊細な憂愁がある。それと桜の花がひとつになった時、思いがけずにわたしの情念の奥底にある妖しいものを揺さぶられてしまう。年ごとの春に山の桜が咲きはじめると、神隠しに逢うような不安と畏れを感じる。
4月5日(水)15:00~16:00[または4月8日(土)21:00~22:00]は、ぜひ「ならどっとFM」(78.4Mhz)の「前登志夫~森の時間」をお聞きください!

