訪日外国人観光客は昨年、1341万人に達したが…
6月20日(土)の新聞各紙に、訪日外国人観光客の行動に関する調査結果が発表された。朝日新聞「関西の外国客、京都・大阪に集中 奈良には泊まらず」によると、
国交省近畿地方整備局と移動ルート検索アプリの運営会社「ナビタイムジャパン」が、昨年11月~今年4月の6カ月間を対象に調査した。ナビタイムの訪日外国人向け英語アプリを使った約2万2300人のうち、近畿6府県と三重県を訪れた約4900人のGPSデータを使い、1キロ四方に30分以上とどまっていた人を「滞在」とみなして時間ごとに分析した。
その結果、72%が京都、大阪の2府だけに滞在。大阪では日中よりも夜間の滞在者が多かった。大阪のホテルやゲストハウスなどを拠点に関西各地に向かっている様子がうかがえる。京都は日中と夜間の数が近く、宿泊しながら観光する外国人が多いようだ。
一方、奈良県は午後1時の滞在者の合計が309人なのに対し、午後11時には71人まで落ち込んでいた。奈良県観光プロモーション課の担当者は「泊まっていただかないと観光収入が伸びない。団体客より歴史・文化に興味のある富裕層の個人旅行客に来てもらう戦略を進めている」と話す。
大阪府の滞在客の67%はアジア系で、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)やミナミの商業地区などを訪問していた。京都府は欧米系が45%を占め、神社仏閣などが人気だったという。また、和歌山県を訪れた欧米系の77%が高野山に向かっていた。(上田真由美)
産経新聞奈良版にも《7割 京都・大阪 奈良やっぱり「日帰り」》という記事が出ていて、そこには
奈良は東大寺など奈良公園周辺が人気。法隆寺(斑鳩町)や明日香村へ足を伸ばす外国人観光客はほとんどみられなかった。
奈良では「日帰り観光」の定番を払拭しようと、県が高級ホテル誘致事業などを進めているが、調査結果からは大阪、京都に比べ滞在者数の差が大きいことが浮き彫りになった。
県観光プロモーション課の担当者は「奈良市中心部だけでなく、県内を周遊してもらうような取り組みを進めている。富裕層のほか、歴史や文化に興味のある方にターゲットをしぼり、情報発信を強めていく」とている。県では今後、中国や台湾、フランスなどを中心にした海外プロモーションを強化するほか、奈良市から南部方面へのバスの運行、文化体験イベントなどを展開していくという。
奈良では昼間が309人なのに対し、午後11時には71人と、わずか23%の人しか泊まっていないのだ。これは残念なことである。これを「ナッツ・リターン」ならぬ「ナラ・リターン」と自嘲する人もいる。先月、中国人の若い男女6人のグループと夕方の電車で隣同士になった(近鉄奈良駅発 難波行き急行)。その1人(女性)に拙い英語で聞いてみると「奈良公園に行ってきた、楽しかった。これから大阪のホテルに帰る」「なぜ、奈良で泊まらないの?」「大阪に泊まると、京都も神戸も奈良も行きやすいから」という回答だった。若い人なので「買い物に便利」とは言っていなかったが…。
6/19(金)のNHKニュース(ならナビ)では、外国人観光客を中心に、大阪・京都に泊まれない人が多くなり、その人たちが神戸や奈良に泊まるケースが増えている、と報じていた。
昨日(6/20)、Facebook友達のMさんから私のタイムラインに、こんなコメントをいただいた。《朝日新聞の記事になりましたが、これについてネット上では「南部って何があんの?」「夜7時にはほぼ閉まる大仏商法だからシカたない」といった感じの意見ばかりです。もっとたくさんの方々に、このような素晴らしい取材をして頂きたいですね》。「素晴らしい取材」とは、昨日のブログ記事
「明日香村の観光振興は、こんなにスゴい!」のことである。無責任な書き込みをしたのはどんな人か分からないが(「夜7時にほぼ閉まる」は嘘八百)、シッカリと中南部に目を向ければ、観光資源には事欠かない。
近畿と三重県を訪ねた4900人のうち、奈良を(午後1時に)訪ねたのは309人と、たったの6%。そもそも、この数字(入込客数)が少なすぎる。空港も新幹線の駅もない、という不利は否めないが、これをもう少し何とかしなければ…。
よく言われるのが「観光客が奈良市にしか来ないから、夕方になると大阪や京都に泊まりに帰ってしまう。県南部に来てもらえれば、否応なしに泊まってもらえる」という話で、これには確かに一理ある。私が提案したいのは、名古屋から近鉄特急で大和八木へ。今井町や明日香村を楽しんだあとは飛鳥か吉野山泊。翌日は吉野郡の奥まで堪能してもらおう、というプランである。高野山開創1200年の今年は、吉野から一旦大阪へ出て、難波から南海電車で高野山へ、というルートも良いかも知れない。
私は「奈良はミナミが面白い」と常々申し上げている。さらにいえばディープサウス(吉野郡の奥地)は、もっと面白い。水源地の森の川上村、源泉かけ流しの十津川村、高野山のお隣で雲海の広がる野迫川村などなど。県は、奈良県内宿泊者に
上限5,000円のキャッシュバックを始めた。奈良交通バスも
半額キャッシュバックのキャンペーンを実施中だ。
宿泊費の5,000円引きにバスが半額と、こんなおトクなサービスを利用しない手はない。私はこのサービスを利用して、川上村の「ホテル杉の湯」に泊まる予定である。皆さん、ぜひ奈良県にお泊まりください!
(6/21追記)ネットで情報を検索していると、こんな話がヒットしました。
私は、20年以上東京都心部に住んでいるのですが、学生時代に勉強のため世論調査のアルバイトで、奈良県の橿原神宮辺りから明日香村(当時)一帯を2日間自転車で巡ったことがあります。(精度の高い世論調査をする場合、調査員は全国的に信頼されそうな大学の学生を使って、わざわざ東京から来た○○大学の学生アルバイト、という同情を利用して調査拒否を少なくするので、わざと遠い東京から派遣するのです)
岡寺あたりから明日香村に行く途中の山の曲線に「ああ、大和らしい」と感動し、今でも心に焼き付いています。人々が温かく、調査拒否されて苦労している私に区長さんの奧さんが一緒に回ってくれるなどしてくれて、おかげさまで、調査成功率100%ということで表彰されました。奈良の村部の人達の温かさのおかげで、電車から夕日を眺めつつ心地よい疲労の中でビールを飲んだことを覚えています。奈良の山間部はいいところだなぁ、と思いました。