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■ 北安曇郡松川村、安曇野ちひろ美術館がある村に立っている火の見櫓です。 この火の見櫓の特徴は短い脚です。この下にアングル単材で脚が伸びているのはよく見かけますが・・・。
火の見櫓のフォルム。櫓の曲線は前稿の穂高の火の見櫓の方が美しいです。下図のように片持ちの棒状の構造物が等分布荷重を受ける時の曲げモーメント図(BMD)を立てて左右対称にした形と相似をなすフォルムが構造的に合理的で美しい、ということになるでしょう。東京タワーがその実例です。
(ネット検索で見つけた図を使わせていただきました。)
この火の見櫓の場合、下端から2段目の横架材くらいまでは目でみてはっきり分かる曲線になっていないと・・・。
屋根と見張り台。大きさのバランスは良いですね。飾りが無くて簡素なところも良い。ここに半鐘が無いのは残念です。
1 櫓のプロポーション ★★★★
2 屋根・見張り台の美しさ ★★★★
3 脚の美しさ ★★★
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■ 長野県内の火の見櫓の数はおよそ2300基と推定されるという調査があるそうです。まだまだ観察していない火の見櫓がたくさんある、ということでこのカテゴリーはこれからも続きます。隣県にもたくさんありそうですし、全国にも・・・^^v。
この火の見櫓の特徴は大きな踊り場があることです。このように個性的でオンリーワンな火の見櫓はいいですね。
では、立ち姿の観察。
櫓の上に向かっての絞り込みは美しい曲線を描いていて、なかなかグッドです。大きな踊り場もバランスを欠いているという印象ではありません。
次は屋根と見張り台。屋根の矢羽は大き過ぎ、もう少し小さい方がいいでしょう。手すりのデザインは踊り場も見張り台も同じですね。下半分は縦しげの手すり子、上半分は上向きと下向きの♡ハートの連続、リズミカルで好ましいです。半鐘も付いています。
脚部。ブレースの下半分が埋まっています。ちょうど環状バックルの半分から下、というふうに気を使っていますが、評価ではマイナスです。
1 櫓のプロポーション ★★★★★
2 屋根・見張り台の美しさ ★★★★
3 脚の美しさ ★★
民家 昔の記録 山形県東田川郡朝日村大網(現 鶴岡市) 19800813撮影
■ 今から31年前の夏、山形県の旧朝日村に茅葺きの民家を訪ねました。当時はまだ茅葺きの民家がかなりあったのです。
茅葺きの民家の観察のポイントは屋根の棟です。ここをどのように納めるか・・・。雨漏りしやすく、腐朽もしやすい部位ですから、様々な工夫が凝らされています。雨漏りしにくく、腐りにくく、そして美しく、というわけです。
屋根棟を押さえるための「おもし」として太めの木材をX型に組んで棟に跨らせて据えたものを千木(ちぎ)といいますが、これも屋根棟納めの工夫のひとつです。
千木には自然木のままの丸太や角材に加工したものがあります。このような棟押さえは全国的に見られ、「馬乗」「馬木」「からす」「おさえ」「がっしょ(合掌)」など、様々な呼び名が文献に紹介されています。東北では千木を据えた棟を「鞍木ぐし」などと呼ぶと手元の資料にあります。
千木の数は奇数が一般的です(映画やテレビドラマのセットなどでは偶数のこともありますが・・・)。朝ドラ「おひさま」のセット、水車小屋の奥にある寄棟の茅葺き屋根も偶数ではなかったかと・・・。
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