透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

「大嘗祭」を読む

2019-01-08 | A 読書日記



 昨日(7日)が仕事始めで、今日が朝カフェ読書始め。読むなら今でしょの『大嘗祭 天皇制と日本文化の源流』工藤 隆/中公新書。正月から読んでいた本書を読み終えた。

「第八章 稲収穫儀礼から天皇位継承儀礼へ」この章のリード文は次の通り。**東南アジアの稲収穫儀礼では(古くは長江以南地域のそれも)、その主役は女性であった。日本でも同様な儀礼はすでに、女王が祭祀をつかさどっていた邪馬台国時代には存在していただろう。しかし卑弥呼の死後は、女性の祭祀権への男王の侵入・介入が進み、次第に男王が挙行する〈男の新嘗〉へと変質していく。そして、六〇〇年代末には、原型の〈女のニイナメ〉の要素を残しつつも、天皇位継承の政治儀礼としての側面を強めた整備が開始され、やがて、形式化の進んだ平安朝大嘗祭へと転換する。**(217頁)

この文章に加えて、「終章 日本的心性の深層」の**平安朝大嘗祭の前段の、稲と造酒児(さかつこ)を主役とする部分は、東南アジアあるいは長江以南地域の水田稲作儀礼に源があるのだった。**(243頁)を引けば本書で著者・工藤氏の論考の趣旨を示すことができているのでは。

上記の論考の傍証(でもないか)として、工藤氏は古事記の神話の海幸彦山幸彦とそっくりの神話がインドネシア地域に多く伝承されていることや、稲羽の素兎(いなばのしろうさぎ)神話と類似する神話がマレー半島やインドネシア地域に存在することが知られていることを紹介している。

本書にはルビ付きでなければ到底読むことができない引用文なども多く、すらすらと読むことはできなかったが、興味深い論考で、付箋を何枚も貼ることになった。

知らない世界を覗いてみるのは楽しい。