透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

「暗幕のゲルニカ」を読む

2023-11-14 | A 読書日記


『暗幕のゲルニカ』原田マハ(新潮文庫2022年3月5日 12刷)

 原田マハがピカソの名画「ゲルニカ」を一級のサスペンスに仕立て上げた、それも「ゲルニカ」の制作意図に沿うような。その構想力、ストーリー展開に感動した。最後の数頁に涙。

1937年から1945年のパートと2001年~2003年のパート、「ゲルニカ」を巡るふたつのストーリーが同時に進行していく。このあたり、原田マハは巧い。

1937年からのパート。パリ万博のスペインのパビリオンの壁画として描かれた「ゲルニカ」。その制作過程をピカソの恋人、ドラ・マールが見守り続ける。

2001年からのパート。この年の9月11日、WTCに旅客機が突っ込む・・・。同時多発テロで夫を亡くしたMoMAのキュレーター八神瑤子が「ピカソの戦争」と銘打った展覧会開催のために奔走する、奮闘する。この展覧会に「ゲルニカ」は欠かせない。だが、借用交渉は困難を極め、瑤子の身に危険が及ぶ・・・。