透明タペストリー

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酒は百薬の長にあらず?

2024-02-23 | A あれこれ

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 2月20日付 信濃毎日新聞の第二社会面(24面)に、上掲した「飲酒 疾患別リスク例示 大腸がんなら日本酒1日1合相当以上 厚労省 指針決定」という見出しの記事が載っていた。記事のリード文は次の一文から始まっている。**飲酒に伴うリスクを周知し健康障害を防ぐため、厚生労働省は初の指針「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」を正式決定し、19日公表した。**


上掲記事の過去ログ

禁酒を始めたのは2016年の6月。この時は「禁酒 週3日」としていたが、今は「禁酒 週4日」として飲酒制限を続けている。昨年(2023年)52週で達成できなかったのは5週だけだった。正月やお盆のお酒がつきものの時期を含めてだから、これはすばらしい(自分を褒める)。達成率9割(47/52)。

厚生労働省が示したという「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」を同省のHPで閲覧した。不適切な飲酒を減らして、健康障害の発生を防止するために活用されることを意図したもの、という意味のことが書かれている。で、次のような表が掲載されている。値には個人差があるとの注釈がある。


厚生労働省のHPより

表の男性の欄を見ると、4 高血圧、5 胃がん、9 食堂がんは  0ℊ<  となっている。これは酒類(純アルコール)をたとえ少量でも飲むとこれらの病気の発症リスクが上がる(発症しやすくなる)ということだ。胃がんや食道がんに飲酒がこれ程の影響があることは知らなかった。肝がんの場合は思いの外許容量が多い。

** 高齢者は若い時に比べて酔いやすく、一定の酒量を超えると認知症発症や転倒のリスクが高まる。**と記事にあるが、同じ内容のことがHPにも出ている。

アルコール摂取の身体への影響のことも気になるが、この頃はそれよりもたとえ少量(缶ビール350㎖を1缶、純アルコール量14g *1)でも飲むと何もする気がなくなって、本を読もうとも思わなくなってしまい、夜を無為に過ごすことになることが切ない。

今週は既に19日から22日まで4日間禁酒したから、この3連休は飲酒可だが、さてどうするか・・・。


追記(2023.02.24)
*1 
夜、食事をしながら缶ビール(350㎖)を1缶飲んだ。
純アルコール量(g)を算出する。
350(㎖)×0.05×0.8(g/㎖)=14g (ビールのアルコール度数5% アルコールの密度0.8g/㎖) 
厚生労働省などのHPではアルコールの比重(単位無し)としているので左辺の単位が㎖、右辺がgとなっている。
両辺の単位が揃っていないのはおかしいと思うのだが。


「空想の補助線」を読む

2024-02-23 | A 読書日記

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朝カフェ読書@スタバ 2024.02.22
『空想の補助線 幾何学、折り紙、ときどき宇宙』前川 淳(みすず書房2023年)

 本書にはみすず書房の月刊『みすず』に連載された数理エッセイ10編に書き下ろしの8編を加えた18編が収録されている。

**このエッセイ集は、そのような図形や数好きとして、そして、美術・文芸好きのつぶやきとして、さらには、歴史上最も古い数理科学の末裔である天文学の一端にたずさわってきたエンジニアとして、頭の中に浮かんだあれこれを書き留めたものである。**(149頁)著者の前川 淳さんは本書について、収録されている「無限の御幣」というエッセイの中でこのように紹介している。


パスタの幾何学

前川さんの頭の中では普段目にするパスタがとても高度な数学の世界に結びつく。両者を結びつける補助線となり得るのが折り紙(いや折り紙そのものではなく、折り方を考える時の思考法)ということなんだろうか。

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ネジに似たパスタのフジッリ DELISH KITCHENのHPより

前川さんはフジッリの曲面の曲がり具合について考える。**種々のパスタの構造と造型の原理を想像するのは楽しい。**(21頁)

「パスタの幾何学」にはフジッリの形から、曲面の曲率、ガウス曲率(ガウスは天才的な数学者でぼくも名前だけは知っている)などの言葉が出てくる。マリー=ソフィ・ジェルマン という知らない女性数学者のジェルマン曲率も。

まずスパイラル(蚊取り線香のような平面図形としての螺旋)とヘリックス(螺旋階段の手すりのような立体の弦巻線)とは違う、と説明がなされ、ヘリコイド(常螺旋面)とヘリカル・コンポリュート(類似螺旋面)というフジッリと似ている曲面に話しが及ぶ。

数学的素養の無いぼくには全く無縁な世界の話。そうか、テーブルのパスタを前にしてこんな数理的なことを考える人がいるんだと驚き、面白そうな世界だなとも思った。


五百年の謎

前川さんは『メレンコリアⅠ』という有名な銅版画の左側に大きく描かれている多面体について考える。**正多面体のような一般的な多面体ではなく、ほかでは見たことのない立体なので、これはいったいどういうものなのかと気になるかたちをしているのだ。**(66頁)

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『メレンコリアⅠ』アルブレヒト・デューラー

前川さんは**〈あらゆる凸型の多面体は、面がいずれかの辺で一連につながった展開図にすることができる〉**(72頁)というこの銅版画の作者であるデューラーの予想を紹介し、話題は立体の展開図にも及ぶ。さらに立方体と正八面体とが双体関係にあることも紹介している。双体のことはだいぶ前に何かで読んだことがあり、知っていた。建築も入れ物としての立体を扱うので。


『メレンコリアⅠ』の右上にはこの魔方陣が描かれている。縦横斜めの数字の和が同じになるように数が並んでいて、下一段には15と14が並ぶ。1514はこの銅版画の作画年だという。数学者でもあったこの絵の作者・デューラーがこんな遊びをしていることに前川さんはちらっと触れるだけで、話を先に進めている。天文台のエンジニアであった前川さん(*1)の好奇心は広大な星空のようにどこまでも広がっていくのだろう。

好奇心が及ぶ領域は人それぞれ。いつまでも好奇心を失いたくないものだ。


*1 あとがきに**2023年の春、わたしは野辺山宇宙電波観測所のエンジニア職を退いた。**(183頁)とある。