透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

30年前に撮った写真をネタにして

2008-01-11 | A あれこれ

 トイレットペーパーの芯を両手で持って、折ろうとしてもなかなか折れませんね。パイプ状のものが曲げようとする力に対して丈夫なことを私たちはこのような経験を通じて知っています。



上の写真はしばらく前にも取り上げた「大分県医師会館」(1959-60)。磯崎新さんのデビュー作ですが、楕円形の断面をしたコンクリートのチューブを空中に持ち上げています。このチューブが構造的に丈夫なのは先のトイレットペーパーの芯と全く同じ。



この2枚の写真は、1978年に撮ったものです。まさか30年後にこうして公開することになるなどとは夢にも思いませんでした。共に1960年代に設計された建築です。

せんだいメディアテークが山梨文化会館を透明にしたものであることは既に指摘しました。この写真によってそのことを直感的に理解してもらえると思います。

磯崎さんのデビュー作を90度回転させてチューブを垂直にしたのが「静岡新聞・静岡放送の東京支社」@新橋(写真左)。中空のシリンダー(チューブ)に2層、3層の四角いボックスを取り付けているのが分かります。残念ながらそのことを的確に捉えた写真ではありませんが。

そして、このユニットをいくつも繋げたのが「山梨文化会館」@甲府駅前(写真右)。これは磯崎さんが1960年頃構想していた、シリンダー状のジョイントコア(中空のシリンダー)相互をボックスで繋いでそこを空間とする空中都市構想を具現化したもの。

この建築が設計されたころには磯崎さんはもう独立していたはず。アイデアを置き土産にしたのでしょう。

このように磯崎さんは、「静岡新聞・静岡放送の東京支社」をいくつも繋ぐジョイント・コアシステムによる空中都市を構想し、黒川さんはこのボックスをプレファブ・ユニット化して工場であらかじめ造りいくつも取り付けるというシステムによって「中銀カプセルタワー」を設計した、と考えればふたりの構想の違いが際立って面白いと思います。

昔撮った写真で「中銀」はいいものがありませんでした。残念。