透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

美の達人 遠州

2008-01-06 | A あれこれ

 NHK教育テレビの「新日曜美術館」、今朝ようやく正月に相応しいテレビ番組を観ることができました。

今回、番組で取り上げられたのは江戸時代の初期に活躍した「美の達人・小堀遠州」。遠州といえば、京都の南禅寺方丈前庭を先日観てきたばかりです。

番組では建築家・遠州の作品として備中松山城、駿府城、名古屋城などを取り上げていましたが、印象的だったのは備中松山城でした。自然の地形を活かして既存の岩山の上に継ぎ足すように、石垣を組んで城を建てています。外観は直線的な格子窓が特徴的でモダン(?)な雰囲気を醸し出していました。

次に茶室、横浜の三渓園に移築された聴秋閣も斬新なデザイン。ちょっと装飾過多かなとも思いますが、いろいろなデザイン要素を破綻無くまとめる手腕はさすが、優れたデザイン力の持ち主だったことが分かります。

京都の大徳寺の狐蓬庵(一艘の粗末な舟という意味だそうですが)の書院式茶室忘筌にはにじり口が無く、広縁から入るように計画されています。広縁先には中鴨居が設けられ、上半分には明かり障子がはめ込まれています。

室内からは障子によって視界がかなり遮られ、開放されている下半分から手水鉢や燈篭を設えた庭園の手前の一部が切り取られて見えるという心憎い演出、遠州の美意識には驚かされます。

この茶室は非公開。もし公開!ということになったらぜひ観たい茶室です。そう日帰りでこの茶室だけを観に出かけてもいい。

番組では南禅寺の八窓席(実際には六窓だとか)も紹介されました。書院と茶室とが二枚襖で仕切られているだけという斬新な平面計画、縁側から入るようににじり口が設けられていますがこれもどうやら遠州オリジナル。

作庭家・遠州の作品としてまず取り上げられたのが岡山頼久寺の庭園。大きな波を表現しているという刈り込んだ庭木、整形された庭石(? 記憶が曖昧)。この庭にもモダンな雰囲気が漂っています。

遠州は他にも茶碗をつくり、茶会を自ら400回(確か番組では400回と紹介していました)も開き、和歌を詠み、書を楽しんだり・・・。

建築に限らず芸術作品は作者の知性と感性が統合されて生まれるものだと私は思っていますが、遠州はどちらにも優れていたんでしょう。

番組の司会をしている檀ふみさんは江戸時代のダ・ヴィンチと遠州を評していましたが、すごい芸術家がいたんですね。



■ 小堀遠州 テレビ画面を撮りました。
  (NHK教育テレビ 新日曜美術館)


この美の達人を追っかけてみるのもいいかもしれません。


システムとして考える

2008-01-06 | A 読書日記



 ロバストネス フラジリティ トレードオフ 

キーワードはこの3つのカタカナ言葉。それぞれ次のように説明されている。


ロバストネス システムが、いろいろな擾乱(じょうらん)に対してその機能を維持する能力

フラジリティ 脆弱性

トレードオフ 一方を増やすと、それ以外の以外の部分が減ってしまうような状況

飛行機、会社組織、生命現象・・・全てシステムという観点から捉えると次のようなことが指摘できるというのがこの本の結論だとまとめておく。

**結局、ロバストネスとフラジリティの関係というのは表裏一体で、どこかをロバストにすれば、必ずどこかにフラジリティが出てくるものなのです。このトレードオフは永遠に解決しません。** どこで折り合いをつけるかがポイントということだろう。

この本にはシステムの例として家族は出てこないが家族もシステム。システムの構成要素である中年オトウサンが夜の街でオネエサンに誘惑される、これはシステム外からの擾乱。ここでこのシステムのロバストネスが試される。この先の展開は・・・、省略。

アルコールなブログでもないのにくだらないことを書いてしまったが、システムの具体例(ジャンボジェット機やルイ・ヴィトン、吉野家、癌など)を取り上げてロバストネスという概念を分かりやすく説明している。興味深い本、おすすめ。

ロバストネスという言葉はこの本を読むまで知らなかった。既知のホメオスタシスという言葉とどう違うのか、この本には説明がある。ロバストネスは機能の保持、ホメオスタシスは状態の保持だという。機能と状態、なんとなく分かるような、分からないような・・・。

年末年始の本 予定通り4冊読了。