■ 建築家の坂茂さんは阪神淡路大震災の直後に仮設の教会を設計したことで知られています。紙管構造の教会。
坂さんは以前ここに書いた移動美術館(この美術館も仮設)にも構造フレームに紙管を用いています。紙管って読んでの通り、紙で出来た管です。そう、トイレットペーパーの芯の大きなものをイメージしてもらえればOKです。その直径は50cmとか70cmもあります。
今月の「新建築」には坂さんがスリランカに設計したキリンダ・ハウスが載っています。2004年の12月26日、世界有数の地震多発地帯のスマトラ沖で発生した地震による津波に襲われたスリランカ、その南部に位置するキリンダの復興住宅です(写真)。
雑誌に掲載されている写真を見ていると「豊かな住環境とは一体なんだろう」という思いに駆られます。
土とセメントを混ぜて固めて作ったブロックを積み上げた内外の壁。仕上げを施すことなくブロックが即仕上げ(内観写真に写っています)。
木のシンプルな小屋組みをそのまま表しにした天井。床はコンクリート直仕上げ。屋外、つまり自然とストレートに繋がった住まい。自然素材をそのまま使った簡素な住まいですが、なんだかとても豊かな空間です。
対照的なのが自然との繋がりを断ち切った高層マンション。石膏ボードにビニールクロス貼りの壁が一般的かと思いますが、「高級家具」などに囲まれてはいるもののなんとなくチープ、そう感じてしまうのは何故でしょう・・・。
たくさんの物に囲まれているかどうか・・・、そんなことは豊かさの指標には決してならない、ということをこの写真は表現しているかのようです。