透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

大法寺三重塔

2012-12-13 | A あれこれ



 先日長野県小県郡青木村の大法寺三重塔を訪ねる機会があった。全国に国宝の三重塔が13基あるが、その内の2基が長野県にある。この三重塔と、別所温泉の安楽寺の三重塔(←)だ。

手元にあるパンフレットによると、この三重塔は見返りの塔という名前で親しまれているそうだ。**塔があまりに美しいので思わずふり返るほどであるという意味からつけられたのであろう。**と解説文にある。

鑑賞眼がないので塔のプロポーションがどうの、初重の軒下の組物がこうのと書くことはできないが、中国や韓国の仏塔のずんぐりとした姿(写真でしか見たことがないが)と比べると、はるかに洗練されたプロポーションだということは分かる。石塔と木塔の違いもあるだろうが、ここは日本人の繊細な美意識が反映されているから、とした方が何というか、カッコいいだろう・・・。



この塔は1333年(正慶2年)に造営中であったことが墨書によって確認されているという。改めてこの国に連綿と続く木の文化の素晴らしさを想う。


 


マッピング

2012-12-10 | A あれこれ



 長野県朝日村にある「そば処 もえぎ野」のオーナーのTさんは昨年(2011年)の朝ドラ「おひさま」で出演者にそば打ちの指導をした。店内にはTさんとヒロインを演じた井上真央ちゃんのツーショット写真や、店までそばを食べに来た出演者のサインが飾ってある。

店内には多くのサインや写真と共に世界地図と日本地図が張ってある。来店したお客さんに出身地のところにピンを刺してもらっているとのことだが、それがすごい(写真)。

世界地図には東南アジアをはじめヨーロッパやアメリカ、オーストラリアやアフリカにもピンが刺してある。日本地図では北海道から沖縄まで、ピンが刺さっていない県はない。関東地方はもう刺すところが無いくらいピンがびっしり。

来店者の出身地をマッピングするという単純な行為が、店のPRになっている。こういうの好きだな~。


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池田町の彩色道祖神

2012-12-09 | B 石神・石仏



池田町の彩色道祖神

花崗岩に彫り込んだ双体道祖神。 風化しやすい石質なのか、いや、私の文字を読みとる能力の無さ故、側面に彫り込んである建立年が読みとれなかった。かなりくずした文字だったが、二文字、安政と読めるようにも思ったが確信はない。

道祖神には平穏な暮らしを願う人々の気持ちが込められている。繰り返し彩色され続けてきている道祖神はその気持ちが何年も何年も引き継がれて今に至っていることを示している。


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笹子トンネルの事故を考える

2012-12-09 | A あれこれ

 先日の事故で通行止めが続いている中央自動車道の笹子トンネルについて、国土交通省と中日本高速道路が、年内を目標に仮復旧させる方針を明らかにしたことを知った。

9日付朝刊の1面に**笹子トンネル 下り線にも不具合 全天井板 撤去へ**という見出しの記事が載っている。そう、天井板を撤去しないことにはトンネルの安全性は担保できない。そうして下り線の対面通行による年内の仮復旧を目指すという。

今回の事故の原因については今後の調査によって明らかにされるだろうが、1975年の完成から既に37年も経過しており、天井板を吊る鋼材をコンクリート躯体に固定している接着系アンカーの付着力低下が主因だという指摘も出てきているようだ。

既に書いたことを繰り返すが、建築や土木で使われる材料や部品には性能が低下しないものはなく、経年劣化によって、いつか設計時に見込んでいた性能を下回ってしまう。だから性能が把握できる的確な点検(目視では到底無理)をして、性能保持のためのメンテナンスが必要になるわけだ。今回の事故ではその点検をおろそかにしていたわけで、ずさんな管理、安全軽視という批判を免れることはできない。

接着系アンカーのみに長期荷重を負担させるような構造、要するに天井板と隔壁板とで幅1.2メートルあたり2トン超にもなる重量物を接着系アンカーで吊り構造にしていることが妥当なのかどうかも検証されるだろう。

笹子トンネルについて天井のPC(プレキャストコンクリート)板を吊る構造について、私は知人に知り得た情報により安全率をチェックしてもらったが、得られた数値は予想よりかなり低かった。

施工から37年経過している現時点でのチェックにはコンクリートや接着系アンカーの付着力の経年劣化、吊り材が振動することの前者への影響などを考慮する必要があるが、これらの定量的な評価ができないので現時点での安全率をチェックするためには、現場でボルトの引き抜き試験等を実施して得られるデータを反映させることが必要になる。このようにして得られる安全率は施工時よりは当然低い数値になる。一体どの位になるだろう。

専門家でもない者が、これ以上事故を推量することは控えよう・・・。笹子トンネルの事故については本稿で終わりにする。


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目視検査で分かること(加筆)

2012-12-07 | A あれこれ

■ 本稿も笹子トンネルの事故について


コンクリート躯体からテストピースの抜き取る作業の様子


圧縮強度試験機によるテストピースの強度試験の様子

コンクリート躯体のテストピースの表面がピンク色しているのは後述のフェノールフタレイン液を吹き付けたから。よく見ると表面(上下両端)近くがあまり赤変せず、中性化していることが分かる。表面の目視だけでこのようなコンクリート躯体の内部の診断をすることは出来ない。

新聞報道によると笹子トンネルの定期点検では目視によるチェックしか実施していなかったという。目視でコンクリートやアンカーボルトの異常の有無を検査することは、健康診断で医者が受診者の裸の上半身の様子を目で診て、内臓に異常があるかどうかを判断するようなものではないのか。

コンクリート躯体が健全かどうか、建築の場合は①の写真で示すようにコンクリート躯体からテストピースを抜き取って②の写真のように試験機で圧縮強度を調べる。また、テストピースの表面にフェノールフタレインを吹き付けて中性化の程度を調べる(強アルカリ性のコンクリートは空気に触れている表面から中性化が次第に内部に進行する)。コンクリートが健全で、中性化が進んでいなければテストピースは赤変する(フェノールフタレイン液を使う実験は中学生のときにしている)。

トンネルのコンクリート躯体が健全かどうかを調べる方法となると土木も建築と同様だろう。このような方法で速やかにチェックする必要があろう。そしてどの程度劣化しているのか、データを公開すべきだ。

ところで笹子トンネルの事故では天井のコンクリート板を吊っている鋼材を支える後施工アンカーがコンクリート躯体からぬけてしまったことによるものと、新聞やテレビの報道から知ったが、そのようなことが起こったのは、後施工アンカー(接着系アンカー)の性能低下によるものだろうが、同様の工法が採用されていて、笹子トンネルのように年数が経過しているトンネルでは、直ちに天井のコンクリート板撤去工事を始めるべきだ。

追記:7日付信濃毎日新聞朝刊に掲載されている記事によると首都高速道路株式会社は首都高速1号羽田線の羽田トンネルについて年内に天井板の撤去作業に着手するという。中日本高速道路株式会社が同様の決断をして、恵那山トンネルで天井板の撤去作業を始めるかどうか。


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笹子トンネルの事故で考えたこと

2012-12-06 | A あれこれ

■ 技術者の端くれとして自戒の念を込めて。

中央自動車道の笹子トンネルの事故を最初に耳にしたとき、「え?まさか・・・」と思った。しかしその後、事故に関するいくつかの情報を得て、冷静になって考えてみて「そうか、起こりうる事故だったのか・・・、いつ起きてもおかしくない事故だったんだ・・・」と思えてきた。


快適で便利な生活を支える技術は安全が担保された状態が継続されなければならないということだ。どんな技術であろうと、安全と常に対でなくてはならないという当たり前のことに改めて気付かされた。そのためには維持管理が欠かせない。日常の維持管理が伴わなくて安全が担保できるような技術など無いだろう。土木・建築ともに全て寿命のある、つまりいつかは求められている性能が発揮できなくなってしまう部品や材料だけで構成されているのだから。このごく当たり前の事実を再認識することが求められているということに気付かされた。

新聞広告の週刊誌の見出しに**世界最古もある国内「海底トンネル」は大丈夫か**とある。上記のような観点で、あれこれ工作物などを思い浮かべてみると、大丈夫かな、安全かなと 心配になるものがいくつも挙がってくる・・・。

そうか・・・、「維持管理」という言葉の意味するもの、この言葉に求められていることはとても重いのだ。この言葉の軽視(と断ずるが)によって、今回9人もの犠牲者が出てしまった・・・。


 


続 笹子トンネルで起きた事故

2012-12-04 | A あれこれ

 **以前読んだ本『クモはなぜ糸から落ちないのか』によると(残念ながらその本の所在がわからないので記憶に頼るしかないが)クモがぶら下がる糸は1本に見えるが実は2本だという。1本でクモを吊るすのに十分な強度があるいうことだが・・・。

つまり、クモがぶら下がる糸は1本が切れても大丈夫、そうフェイルセイフになっているのだ。自然界にはこのような例がいくらでも見つかるだろう。**

以上は2007年5月29日に書いたものだ。

笹子トンネルで起きた事故を報ずる新聞記事などで初めて知ったが、長さ5メートル、幅1.2メートル、厚さ8センチメートルの大きさで重量が約1.2トンというコンクリート板をたった1本の吊り棒(鋼材)で吊っていたという。しかも厳しい条件下で劣化しやすいコンクリート躯体に後施工したケミカルアンカー4本(? テレビのニュース番組で示された図が模式的な表現であれば本数は正確ではないかもしれない)で取り付けられたベースプレートから。このようにたった1本の吊り棒で吊るという設計には上記のような考え方が無いのでは・・・。

クモを見習って、吊り棒を2本にするというフェイルセイフな設計をしていたら・・・。

ただし、吊り棒の腐食ではなく、コンクリートの劣化か後施工アンカーの劣化が今回の事故の主因だと思う。コンクリート劣化についてはトンネル躯体のコンクリートの強度や中性化の程度を直ちに調べるべきだ。このことについては次稿で。

笹子トンネルと同じコンクリート板吊り構造の恵那山トンネルなどの緊急点検を3日から始めたというが、少なくとも建設年度が笹子トンネルより古いトンネルは点検をしなくても安全ではないとするのが妥当な判断だろう。直ちにコンクリート板の撤去作業を始めるべきだ。




 


笹子トンネルで起きた事故

2012-12-03 | A あれこれ

■ 昨日(2日)、中央自動車道の上り線の笹子トンネルでコンクリート製(プレキャストコンクリート板)の天井が広範囲にわたって落下し、走行中の車が下敷きになったり、火災が発生したりで9人が亡くなるという痛ましい事故が起きた。

新聞記事によると同トンネルは1977年の開通以降、大規模な改修工事は行われなかったという。定期的な点検がどの様な方法で行われていたのか分からないが、9月の点検で異常が見つからなかった、いや「見つけられなかった」ということだから、点検方法にも問題があったと考えざるを得ない。

テレビのニュース番組でコンクリート製の天井板を吊っている吊り棒、金物を見たが、1トンを超えるというコンクリート板の重量からして、信いられないような簡便なものだった。コンクリート板の中央でたった1本の吊り棒でしか吊っていない構造も信じられない。クモの糸だって2本から成るというのに。 ←過去ログ  

安全性というか、安全率はクモがぶら下がる糸の方が大きいのでは。鋼製の吊り棒は引張り力に対しては強度があるから計算上はもちろんOKなんだろうが。

トンネル本体のコンクリート躯体に、おそらく後施工したアンカーから吊り棒を下げ、その吊り棒にコンクリート板を吊るす構造だと思われるが、劣化した(車の排気ガスのダクトになっていたから、排気ガスの影響もあってコンクリートの劣化も早いはずだ)コンクリートには引き抜き力に抵抗するだけの強度、硬度が既に無いのではないか。

吊り材の腐蝕なども指摘されているが、クリティカルな状況になっていたのはコンクリートの劣化、もしくは後施工アンカーの接着力低下が主因だろう・・・。アンカーボルト周りのコンクリートがコーン状破壊していなければ、接着系アンカーの付着力低下が直接的な原因、ということになろう。

それにお互いのコンクリート板が「共持ち」状態だったとすれば、それが連鎖的な落下の原因であることは明らかだ。

定期的な点検はコンクリート(排気ガスによる中性化で、もろくボロボロになる)や後施工アンカーの劣化を把握できるような内容ではなかったのではないか。外観の目視や吊り金物の打音検査では上記のようなチェックは無理だから。(追記:その後の報道では打音検査すらしていなかったということだから驚く。)

ああ、事故が起きてからでないと、どうにもならないという体質は全く変わっていないようだ・・・。私はおよそ1ヶ月前にこのトンネルを通っている。その時、今回の事故が起こっていたら・・・。

今回の事故から、全国のインフラの徹底的な点検とメンテナンスが必要だと判断し、実行すべきだと思うがどうだろう。


事故で亡くなった方々に謹んでお悔やみを申し上げます。


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北アルプスのスケッチ

2012-12-03 | A あれこれ



 所用で北安曇郡池田町へ。昼食を済ませて、カフェ「風のいろ」でコーヒーを飲みながら、陽光を受けて雪の山肌が輝く北アルプスの峻峰の連なりが美しかったのでスケッチした。いや、正直に書けば山の名前を覚えるためにスケッチした。

常用しているダイアリーの余白に松本市内から見る常念岳に形がよく似た北葛岳(きたくずだけ 名前が分からなかったのでオーナーに教えていただいた)、針ノ木岳、その右の蓮華岳をボールペンで描いた。ボールペンだと描き直しができない。まあ、スケッチとはそういうものだと私は思うが。たまたま青と黄緑の色鉛筆を持っていたのでその場で色を着けた。

普段は写真を撮ってオシマイだが、それだとあまり印象には残らないし名前も覚えられない。このような簡単なスケッチでも稜線の様子や山肌の陰影を観て描くから記憶に残りやすい(と思う)。書くことが覚えることの基本という昔の勉強法が(いまもそうかもしれないが)身についているから。

これからは時々スケッチをしよう。


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休日のランチ カフェはおと

2012-12-02 | A あれこれ

■ 安曇野市穂高のグリーン&カフェはおと。ここで昨日(12月1日)、遠方から安曇野を訪れた知り合いの女性ふたりと楽しい語らいのひと時を過ごした。



すっかり落葉した木々に囲まれて静かに佇んでいるカフェ。

内部の様子は言葉で説明するのは難しいけれど、落ち着いた現代和風、それもちょっと民家風のあたたかで落ち着いた雰囲気。壁は漆喰仕上げだろう。柱や梁(丸太梁が1本架け渡されていた)、飾り棚、ドア枠などの木部はやや赤みを帯びた塗装が施されている。棚には形の整った小振りの観葉植物や置物が実に上品に飾られている。オーナーのセンスの良さがわかる。心配りが行き届いた空間とまとめたらいいだろうか。

紹介されたランチメニューの名前は覚えなかったけれど、木製のプレート(シンプルな食器もまたオーナーのセンスをうかがわせるもの)に置かれた自家製のパンは食感がよく、とても美味だった。バターナイフも木製だった。  こちらのブログ参照  デザートの後のコーヒーの少し苦味の効いた味は、そうだ、これがコーヒーの味だ!と思わせるものだった。

林の中に浮かんでいるかのように思わせる床レベルの設定。初冬の雪が降り続ける様を眺めながらの語らい。私はふと、吉村順三の名作、軽井沢の山荘のリビングからみる窓外の景色(写真でしか知らないが)もこんな感じではないだろうか、と思った。



気がつけば午後2時。彼女たちも予定があるだろう。再会を約束して(ン? 約束したかな)カフェを後にした・・・。


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30 工房マルシェ 12月の市

2012-12-01 | C 名刺 今日の1枚



30 Tさん 

朝日村の森の馨-morinokaで12月1日に行われる「工房マルシェ12月の市」にTさんが参加することを先日知った。今日、出かけてきた。午前中、かなり激しく吹雪くあいにくの天気だったが、会場内は大勢の人たちでにぎわっていた。

Tさんは私の名刺に記載してある電話番号などは既に知っているから、名刺を渡す必要はないが、そこは話のタネにと1枚渡した。

これでちょうど30枚。やがて100枚目を誰かに渡すことになる。一体どんな人に・・・、楽しみ。


 


ブックレビュー 1211

2012-12-01 | A ブックレビュー

 
97、98年のダイアリーに貼ってある「読書記録」

■ 30年以上も前からダイアリーに仕事や生活の記録をつけていることを先日書いた。ブログを始める前は、読み終えた本を順番に書棚に並べていって3ヶ月ごとに写真を撮ってダイアリーに貼り、手書きの読書記録に替えていた。97年は服部真澄の『鷲の驕り』に始まり、藤沢周平の作品をよく読み、妹尾河童の『河童が覗いた仕事場』で終わっている。数えると96冊読んでいた。


  

さて、11月のブックレビュー。

この2冊しか読んでいない。まあ、娘の結婚式があったりして忙しかったからと自分に言い訳しておく。

『「大発見」の思考法』山中伸弥 益川敏英/文春新書  ノーベル賞を受賞したふたりの科学者の対談を収録している。先日、理系の大学で教鞭を取る友人にこの本を紹介した。是非学生に薦めて欲しいと思ったから。

**壮大で奥深い自然に対して、しっかりと目を見開き、耳を傾ける――。自然から教えていただくという謙虚な気持ちを、ずっと持ち続けて行きたいものですね。**(203頁) ふたりの対談は益川先生のこの発言で終わっている。心に留めて置きたい。

『日本の思想』丸山真男/岩波新書  1961年に刊行されたこの本は今なお論壇で取り上げられることがあるようだ。長く読み継がれているという意味で、名著と言っていいかもしれない。1980年に読んで以来32年ぶりの再読だった。ただし読んだのはⅣ章の「である」ことと「する」こと のみ。

奥付から丸山真男が長野県生まれだということを知った。そうだったのか、理屈っぽく議論好きと言われる信州人・・・。