映画とライフデザイン

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映画「単騎千里を走る」高倉健とチャンイーモア

2008-12-30 07:17:12 | 映画(アジア)
「単騎千里を走る」実に泣ける映画であった。

こんなにいい映画だと思わなかった。題名からして、シルクロードあたりで高倉健が馬で走り回るイメージを持っていた自分の教養のなさを恥じる思いだった。

スタートは日本で、10年離れて北国の漁村にいる父高倉健の元に息子の嫁さんの寺島しのぶ から電話が入り、息子の病気が悪化しているのであってほしいとのこと。東京へ出て息子のところへ行くが息子はわだかまりがあり会わない。
戻る高倉へ嫁の寺島からビデオが届く、それは中国の田舎を取材している息子の姿である。その中で息子が中国の仮面劇「単騎千里を走る」を来年撮りに行くといっているシーンがある。高倉は息子の代わりに中国雲南省に撮りに行く。
雲南省の麗江にその俳優を訪ねに行くが、俳優は軽い罪で刑務所に入れられていることを知る。代わりでいいでないかと言われるが、どうしてもその俳優で撮ったものを息子に見せたいと言い張る。外国人が刑務所内を撮影することはありえないといわれるが事情を話して、無理やりお願いする。
ところが、いざ演じる場面になっても彼は演じない。泣き出してしまう。自分のつくった子供に会いたいという気持ちが強くてできないというのだ。高倉健は俳優の子供に会いに、雲南省の田舎にいくが。。。。

チャンイーモアの作品では「初恋のきた道」などを思わせる中国の田舎の原風景が舞台である。当然チャンイーモアらしい画像の美しさはあるが、被写体は素朴な風景である。交通も通っていない雲南省の田舎石頭村での撮影はなかなかのものである。町の中で高倉健が村中の人たちと宴会というべきか、いっせいに食事する場面があるが、このシーンが好きだ。村中が家族という感じでいい。

やくざ映画を卒業して、陰のある男を演じていたころの高倉健のイメージがチャンイーモアのイメージなのであろうか?「冬の華」、「駅」といった名作が思い浮かぶ。高倉健は冬景色が実に似合う俳優である。それは中国で出さないで日本の風景で出す。

メイキングはあまり見ないが、この作品は見てしまった。
出演者はほとんどが素人だそうだ。北京オリンピックはよりすぐりの美人ばかりがチャンイーモアの被写体だったが、この映画ではみんないわゆる大陸の人的どんくささが強い。それが本当の姿を見せていていいのだと思う。
チャンイーモア監督にとって高倉健はまさに敬愛する存在だったとのこと。高倉健の良さが本当にわかっているのが映画を見ていてよくわかる。

もっと評価されてもいい傑作だ。しかも本当に泣ける。
コメント
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