映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

居酒屋兆治 高倉健

2009-10-18 19:59:35 | 映画(日本 昭和49~63年)
昭和58年の降旗監督高倉健コンビ作品。山口瞳原作である。函館の居酒屋の店主を高倉健が演じて、その店と彼に絡む人たちの物語を描く。よくも集めたと思わせるような名脇役がそろっている。大原麗子、伊丹十三、東野英治郎をはじめ鬼籍に入った人も多く、なつかしい感じがする。ストーリー展開の面白さよりも、函館の町の匂いをかぎながら、名優の演技を見るという作品だ。

高倉健は函館で加藤登紀子とともに居酒屋を営む。もとは地元の高校野球部のエースで、地元の造船所に就職したが、会社のリストラを担当することになり、仲間の首切りはできないとやめて居酒屋をやるようになった。お店には野球部でバッテリーを組んでいた親友の田中邦衛を始め、多彩な顧客がきている。大原麗子とは若いころつき合っていたが、お互い貧しく、彼女に結婚話がきて地元の牧場に嫁ぐのを黙って見守るしかなかった。大原麗子はそれが今でも不本意である。そんなあるとき、その牧場で火事が起きた。そして大原麗子は函館の町から失踪する。昔付き合っていた高倉健が何か知っているのでは?とかんぐる人もいるのだが。。。。。

高倉健はヤクザあがりの設定が多いが、ここでは堅気の設定。多彩なお客が多い店の店主役を楽しく演じている印象。田中邦衛もいつもどおりの安定した演技。こんな友人がいたら人生もっと楽しかったろうなあと思わせる好人物を演じる。加藤登紀子の妻役も適切である。

大原麗子の存在は脚本的には非常に微妙な感じだ。元恋人を思いつめる流れがストーリー的に不自然さを感じさせる設定。全盛時だけあってその美貌も絶頂だが、もう一つひきつけられない。しかし、ちょっと驚いたのは、彼女の晩年とどこかダブるところがあるところだ。映画を観ながらつい先ごろの話をダブらせてしまった。

伊丹十三が高倉健の先輩で地元のタクシー会社の副社長役で出てくる。居酒屋で執拗に高倉健に絡む。元々はインテリのキャラである伊丹がめずらしく与太者を演じている。ヤクザではないが、監督のときにつくったヤクザ排除映画の配役を思わせるようないやな役だ。どちらかと言うと高倉健のほうが風貌はそのものだけに不思議な感じだが、これはこれで良いのかもしれない。この翌年「お葬式」を作り、名監督の道を歩んでいく。その前の作品だけに貴重な映像。調べたら、伊丹十三、宮本信子夫妻の媒酌が山口瞳と確認してちょっとびっくり。

あとは悪役の鑑のような佐藤慶、場末のバーのマダム役がまさに地でいけてしまうちあきなおみ、「蒲田行進曲」でブレイクする前の平田満、すっとぼけながらまだ頑張っている大滝秀治、昭和30年代の飲んだくれ親父役が水戸黄門をやって貫禄がついた東野英治郎、うだつの上がらない男をやらせると天下一品の小松政夫。良い人そろえたなあ!!!本当感心する。

山口瞳のエッセイはよく読んだ。粋人で良いタッチの文章だった。今でも書棚にずいぶんとある。競馬にもグルメにもまさに人生の達人のようだった。映画の中で居酒屋の客で出てくるのはほんのご愛嬌。さぞかし名優に囲まれて楽しかったことであろう。
コメント
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