映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

伊集院静の本1

2011-09-04 17:09:06 | 
週に5回は本屋に行くが、ここのところ伊集院静さんの本がメインのところにおいているので少々驚いている。一体どうしたんだろう。売れているみたいだ。

ましてや「いねむり先生」なんて本まで書いている。故阿佐田哲也こと色川武大さんのことだ。
考えてみると阿佐田哲也さんが亡くなってなんと22年もたつのである。今年はいわゆる23回忌ということなのであろう。自分が文筆家としての伊集院静を知るようになったのも、阿佐田哲也の競輪に関するエッセイを読んでからだと思う。
昭和の最後のころ、麻雀でその名を知られた阿佐田哲也が競輪の予想に力を入れるようになった。同時に週刊誌に競輪エッセイを書くようになっていた。これが実におもしろかった。まったく競輪に興味のなかった自分もそのエッセイに引き寄せられ、競輪を見に行くようになった。車券もかった。ここ15年近く車券を買ったこともないが、年末のグランプリだけはテレビで見てしまう。競馬とは違い競輪は賭けなくても見ているだけでおもしろい。

そこに伊集院静氏のことが書いてあった。
伊集院静が故夏目雅子のご主人であったのはあまりにも有名だ。もちろんその時も知っていた。彼女が結婚する前は数人の女性で彼のことをとりあっていたと記憶する。なんでそんなにもてるんだろうと思っていたら、阿佐田哲也のエッセイによれば風来坊のようだった。そして阿佐田哲也ばかりでなく、伊集院静に興味を持つようになっていた。ずいぶんと優しいエッセイを書いていた。

自分の書棚は転勤も多いので、必要最小限にして残りは品川の家の元父の書斎だった書棚に押し込んでいる。その必要最小限の棚から絶対にはみでない本の中に「阿佐田哲也の競輪教科書」と伊集院静の「夢は枯野を」がある。もともとは雑誌の連載である。この2冊には62年ころから阿佐田哲也が亡くなるまでの平成元年4月くらいの2人の様子が詳細に書いてある。これを何度読んだであろうか。
自分も昭和の最後から平成入ってしばらくは割と自堕落な生活をしていた。でも伊集院静のエッセイを見るとおれよりひどい奴がいるもんだと思っていた。完ぺきにアル中状態でギャンブル依存症もひどい。ものすごく廃れた生活をした人だと思っていた。たぶんこの人長生きしないなあと思っていた。美しい篠ひろ子さんという奥様を得て、今持って生きていらっしゃるのは凄いとしか言いようにない。
阿佐田哲也こと色川武大によれば、人生の運は最終プラスマイナスゼロになるようだと書いている。伊集院静のプラスマイナスのヴォラティリテイは凄いなんてもんじゃない。東北にいらっしゃるので今回の地震で被災されたようだが、ここにきて大きなプラスもゲットしている。そんなことは彼にとってはどうでもいいことなんだろうけど、阿佐田哲也の本の縮図を伊集院静が演じているようで興味深い。

今日久々に「夢は枯野を」を読んでみた。この本は競輪の旅回りの本である。全国の競輪場に勝負しに行くわけである。スタートは阿佐田哲也との対談である。そこから競輪を語っていく。滝沢正光、中野浩一、井上茂徳という3大スターとの関わりも随所に書いてある。凄い役者がいた時の競輪だけに読んでいておもしろい。しかも、単に競輪競技にはとどまらない味のある文章が続く。競輪選手への愛情のようなものも感じる。年齢がまだ30代後半だったせいもあるので、人生観的な話は阿佐田哲也の本ほどないが、人生の達人から何かを得ようとしている姿が目に浮かぶ。
写真家の加納典明のお父さんと一緒に競輪を見に行く話は何度も読んで頭にこびりついていたが、やっぱり面白かった。あとは阿佐田哲也との別れの話、それまで全国を遊び歩いていた仲間が突如いなくなるさみしさはなんとも言えないものであったと思う。新作まで読んでいないが、早々に読んでみたい。
コメント
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