映画「バードマンあるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」を映画館で見てきました。
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何と言っても本年のアカデミー賞作品賞の映画を見逃すわけにはいかない。4月になって毎日のように宴席でくたくたになって映画どころではなかったけれど、体調整えてじっくり鑑賞した。初期の「バットマン」におけるマイケルキートンは好きで、迫真の演技が見れるという噂で今回は楽しみにしていた。脇を固めるエドワード・ノートンとエマストーンが期待通りに活躍し、監督とは何度もコンビを組んでいるナオミワッツもそれなりの存在感を見せる。
監督のアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥは「21グラム」「バベル」では時間軸を前後に揺さぶる手法をとっていたので、この映画もそうかと思っていたらちがっていた。黒澤明監督「生きる」の外国版の色彩をもつ「BIUTIFUL ビューティフル」もよかった。彼の映画には確かにハズレはない。ただ、この映画でひたすら感心したのが撮影である。当代きっての撮影監督エマニュエル・ルベツキの連続アカデミー賞受賞は当然というべき映像にうなってしまう。
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かつて、ヒーロー映画「バードマン」で、大スターとなったリーガン(マイケル・キートン)は、いまや落ちぶれていた。ヒットした「バードマン」シリーズの第4作目の出演を断って以来、すでに20年が経過している。結婚はしたもののうまくいかず、離婚。一人娘のサム(エマ・ストーン)とは、うまくいっていない。サムは、薬物に手を出している様子である。
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なんとか起死回生のカムバックをと、リーガンはブロードウェイの舞台に立とうと決心する。リーガンが愛読するレイモンド・カーヴァーの短編小説『愛について語るときに我々の語ること』を、リーガン自身が脚色、演出、主役までこなそうとする。
父娘の関係を修復しようと、リーガンは、サムを付け人にする。稽古をはじめて、すぐ問題が起こる。プレビュー公演を控えているのに、共演者の男性が大けがを負う。すぐに、代役を見つけなければならない。
舞台の共演者は、リーガンの現在の恋人ローラ(アンドレア・ライズブロー)、下積みが長く、やっとブロードウェイで初舞台となるレズリー(ナオミ・ワッツ)である。レズリーは代役としてレズリーの恋人である実力派舞台俳優のマイク(エドワード・ノートン)を連れてきた。芝居はうまく客の呼べる俳優だが、マイクはなにかと問題のある。それでも、舞台のプロデューサー、ジェイク(ザック・ガリフィナーキス)は、「マイクなら客は入る」と大賛成だ。
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マイクは、リーガンの書いたセリフに、いちゃもんを付ける。リーガンはとりあえずマイクの提案を受け入れる。マイクは、サムにちょっかいを出す。さらに、ギャラをふっかけてくるので葛藤がうまれる。プレビュー公演にこぎつけたのに、とんでもない失態で、芝居を壊してしまう。
しかも、リーガンたちにタイムズの取材がくる。マイクは、リーガンが話したことを、さも自分が話したように、でっちあげる。リーガンは怒る。そのたびごとに、リーガンの前に「バードマン」が現れ、責め立てる幻聴に悩まされるのであるが。。。
マイケルキートン自らの人生に照らし合わせるかの如くのストーリー展開だ。まさにキャラクター「バードマン」が現れるし、影の声が聞こえまくる。でもしつこさは感じなかった。前半は緩慢な部分もあったが、エマストーンの長まわしセリフで目がパッチリしてあとはひたすら行け行けドンドンだ。
少しネタばれありで語る。
1.長まわしの映像
この映画の長まわしには驚く。ビートルズのアルバム「アビーロード」はB面の独立した数々の曲が連続して、切れまなく流れるかのようにつながっていく。見ながら連想したのはその鮮やかな流れだ。連続するだけでなく、1つ1つの場面カットにも時間をとる。セリフも長めだ。これをこなした主たる3人マイケル・キートンとエドワード・ノートンそしてエマストーンはお見事である。
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印象的なシーンが2つある。まずはマイケルキートンとエドワードノートンの取っ組み合いのけんかのシーン。これはカットを挟まずに長めに続く。これってかなり難易度が高い。取っ組み合いをするだけでなく、セリフも続く。1テイクじゃできないでしょう。どのくらいの練習を積んだのか?は知りたい。
もう一つは舞台の切れ間にタバコを一服吸おうと外に出たマイケルキートンが扉がしまって中に入れなくなり、外を彷徨うシーン。これも凄い。ふと気がつくとブロードウェイの街並みを歩いていて、タイムズスクウェア前のメイン通りに出てしまう。その時はパンツ一丁の裸だ。しばらく外を彷徨い、リーガンじゃないかとみんなに騒がれながら、再度劇場に戻り、客席側からはいって演技を続けるシーンが実におもしろい!!
2.ドラムスの響き
バックでジャズ調のドラムスがずっと流れている。これが効果的に響く。ある意味精神が錯乱している状態が続く主人公リーガンの心の不安定さを示している。メキシコのドラマーであるアントニオ・サンチェスによるドラムスが抜群にいい。でもそれだけではない。途中、マーラーやチャイコフスキーの交響曲や自分が好きなラフマニノフの曲もかかる。音楽は映像のイメージを強化させる役割をもつ。常に不安に付きまとわれているリーガンの心の動きを増長させる。これもお見事だ。
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3.撮影のすばらしさ
撮影監督のエマニュエル・ルベツキはこれまでも自分のブログで絶賛してきた。「ゼログラビティ」もいいけど、ビックリしたのはベンアフレック主演「トゥザワンダー」の構図の美しさだ。そこでは今回とは真逆のカット割りの多い映像であった。今回は手持ちカメラなのであろうか?ひたすら登場人物を追いかける。全編ワンカットという宣伝文句は多少言いすぎの気もするが、この映像どうやって撮ったんだろうという場面が数多くあった。やっぱり一流の人というのは何でもできるんだなあと改めて感じる。
(参考作品)
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何と言っても本年のアカデミー賞作品賞の映画を見逃すわけにはいかない。4月になって毎日のように宴席でくたくたになって映画どころではなかったけれど、体調整えてじっくり鑑賞した。初期の「バットマン」におけるマイケルキートンは好きで、迫真の演技が見れるという噂で今回は楽しみにしていた。脇を固めるエドワード・ノートンとエマストーンが期待通りに活躍し、監督とは何度もコンビを組んでいるナオミワッツもそれなりの存在感を見せる。
監督のアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥは「21グラム」「バベル」では時間軸を前後に揺さぶる手法をとっていたので、この映画もそうかと思っていたらちがっていた。黒澤明監督「生きる」の外国版の色彩をもつ「BIUTIFUL ビューティフル」もよかった。彼の映画には確かにハズレはない。ただ、この映画でひたすら感心したのが撮影である。当代きっての撮影監督エマニュエル・ルベツキの連続アカデミー賞受賞は当然というべき映像にうなってしまう。
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かつて、ヒーロー映画「バードマン」で、大スターとなったリーガン(マイケル・キートン)は、いまや落ちぶれていた。ヒットした「バードマン」シリーズの第4作目の出演を断って以来、すでに20年が経過している。結婚はしたもののうまくいかず、離婚。一人娘のサム(エマ・ストーン)とは、うまくいっていない。サムは、薬物に手を出している様子である。
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父娘の関係を修復しようと、リーガンは、サムを付け人にする。稽古をはじめて、すぐ問題が起こる。プレビュー公演を控えているのに、共演者の男性が大けがを負う。すぐに、代役を見つけなければならない。
舞台の共演者は、リーガンの現在の恋人ローラ(アンドレア・ライズブロー)、下積みが長く、やっとブロードウェイで初舞台となるレズリー(ナオミ・ワッツ)である。レズリーは代役としてレズリーの恋人である実力派舞台俳優のマイク(エドワード・ノートン)を連れてきた。芝居はうまく客の呼べる俳優だが、マイクはなにかと問題のある。それでも、舞台のプロデューサー、ジェイク(ザック・ガリフィナーキス)は、「マイクなら客は入る」と大賛成だ。
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マイクは、リーガンの書いたセリフに、いちゃもんを付ける。リーガンはとりあえずマイクの提案を受け入れる。マイクは、サムにちょっかいを出す。さらに、ギャラをふっかけてくるので葛藤がうまれる。プレビュー公演にこぎつけたのに、とんでもない失態で、芝居を壊してしまう。
しかも、リーガンたちにタイムズの取材がくる。マイクは、リーガンが話したことを、さも自分が話したように、でっちあげる。リーガンは怒る。そのたびごとに、リーガンの前に「バードマン」が現れ、責め立てる幻聴に悩まされるのであるが。。。
マイケルキートン自らの人生に照らし合わせるかの如くのストーリー展開だ。まさにキャラクター「バードマン」が現れるし、影の声が聞こえまくる。でもしつこさは感じなかった。前半は緩慢な部分もあったが、エマストーンの長まわしセリフで目がパッチリしてあとはひたすら行け行けドンドンだ。
少しネタばれありで語る。
1.長まわしの映像
この映画の長まわしには驚く。ビートルズのアルバム「アビーロード」はB面の独立した数々の曲が連続して、切れまなく流れるかのようにつながっていく。見ながら連想したのはその鮮やかな流れだ。連続するだけでなく、1つ1つの場面カットにも時間をとる。セリフも長めだ。これをこなした主たる3人マイケル・キートンとエドワード・ノートンそしてエマストーンはお見事である。
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印象的なシーンが2つある。まずはマイケルキートンとエドワードノートンの取っ組み合いのけんかのシーン。これはカットを挟まずに長めに続く。これってかなり難易度が高い。取っ組み合いをするだけでなく、セリフも続く。1テイクじゃできないでしょう。どのくらいの練習を積んだのか?は知りたい。
もう一つは舞台の切れ間にタバコを一服吸おうと外に出たマイケルキートンが扉がしまって中に入れなくなり、外を彷徨うシーン。これも凄い。ふと気がつくとブロードウェイの街並みを歩いていて、タイムズスクウェア前のメイン通りに出てしまう。その時はパンツ一丁の裸だ。しばらく外を彷徨い、リーガンじゃないかとみんなに騒がれながら、再度劇場に戻り、客席側からはいって演技を続けるシーンが実におもしろい!!
2.ドラムスの響き
バックでジャズ調のドラムスがずっと流れている。これが効果的に響く。ある意味精神が錯乱している状態が続く主人公リーガンの心の不安定さを示している。メキシコのドラマーであるアントニオ・サンチェスによるドラムスが抜群にいい。でもそれだけではない。途中、マーラーやチャイコフスキーの交響曲や自分が好きなラフマニノフの曲もかかる。音楽は映像のイメージを強化させる役割をもつ。常に不安に付きまとわれているリーガンの心の動きを増長させる。これもお見事だ。
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3.撮影のすばらしさ
撮影監督のエマニュエル・ルベツキはこれまでも自分のブログで絶賛してきた。「ゼログラビティ」もいいけど、ビックリしたのはベンアフレック主演「トゥザワンダー」の構図の美しさだ。そこでは今回とは真逆のカット割りの多い映像であった。今回は手持ちカメラなのであろうか?ひたすら登場人物を追いかける。全編ワンカットという宣伝文句は多少言いすぎの気もするが、この映像どうやって撮ったんだろうという場面が数多くあった。やっぱり一流の人というのは何でもできるんだなあと改めて感じる。
(参考作品)
![]() | バットマン/バットマン リターンズ |
マイケルキートン&ティムバートンの名コンビ | |
![]() | 21グラム |
アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥの出世作、ナオミワッツのしなやかなボディが印象的 | |
![]() | トゥ・ザ・ワンダー |
エマニュエル・ルベツキ撮影の映像美を楽しむ | |
![]() | 愛について語るときに我々の語ること |
村上春樹のこなれた訳を楽しむ | |