映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

台湾青春ミステリー映画「共犯」

2016-01-31 21:29:42 | 映画(アジア)
映画「共犯」は2015年日本公開の台湾映画である。


映画の宣伝で少年少女たちが一緒になっている写真が気になり、見ようと思ったが時間がなくてdvdスルーになる。サスペンスというけど、写真に写る少年少女が何の悪いことをたくらんでいるんだろうと思っていた。結局のところ、この全員が映し出されるシーンはない。

こうやって見てみると、最初に少女が死体で発見される場面から思いがけない画面が連なっていくことに気づく。この奇妙なサスペンスのリズムには幻惑される。途中で想像を超える事態の推移に心の底から驚いてしまう。青春物のようで実はホラーじみた青春サスペンス映画であった。

同じ高校に通っているというだけで、口もきいたことがなかった男子高校生、ホアン、リン、イエは、通学途中、偶然同じ時刻に通りがかった路地で、女生徒シャーが変死しているのを発見。奇妙な縁で友達になった三人は行動を共にするようになり、死の真相を探り始めた。。。

最初に水中で少年少女たちがさまよう姿が映し出される。何を意味するんだろうと思ったとき、1人の少年が3人の少年たちにカツアゲされそうになっているシーンが映し出される。何これ?この3人が共犯なの?なんて考えていると、1人の女子生徒が大量出血で倒れている。誰かに殺されたのであろうか?それを見つめる1人の少年が少女に触れる。すると2人の同じ制服を着た少年が何やっているんだろうと近づく。他殺でなくどうやら自殺のようだ。警察に知らせて、第一発見者ということで事情徴収を受けるが、この段階で3人は一緒に帰る。そして精神的にダメージを受けただろうと3人が一緒にカウンセラーを受ける。

最初の少女の変死シーンは冷静に受け止められる。その後3人は自殺した少女の自宅に忍び込み、少女の遺留品を探り出すのだ。謎を探ろうとする姿にヒッチコック的ドキドキ感もある。やがて、この少女は誰かにいじめられていることがわかる遺留品が見つかる。しかも、その少女の名前は判明している。なぜか、この3人が共同してその少女に軽い復讐をしようとするのだ。

この少女にいじめを受けているという証拠をホアンが次から次へと提示する。別にこの時点でもどうってことない。そしてその少女を裏山に誘い、ハメていくのだ。
でもその次に驚く場面が出てくる。想像を超える事態が起きていくのだ。

これはドッキリだ。
この場面が映画に映し出される時から、事態は急変する。そして予想もしない展開となってくる。テレビドラマで言えば、数回にわたって放映できそうな場面を約90分にまとめる。端正な少年少女の顔から想像もつかない妙な緊迫感がある。

この少年少女たちが単独でとてつもない熱演をするわけではない。
でも総合的に見てはまっていく奇妙な映画だった。



(参考作品)
共犯
自殺した少女の謎を追う3人の少年
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映画「俳優 亀岡拓次」 安田顕

2016-01-31 21:29:23 | 映画(日本 2015年以降主演男性)
映画「俳優 亀岡拓次」を初日いきなり映画館で見てきました。


心温まるいい映画で、安田顕演じる主演の亀岡拓次に気持ちが同化してしまう。笑いあり、恋あり、そしてトジありで2時間いい感じで過ごせた。意外に女性の多い館内では常に笑い声が響いていた。

安田顕が脇役俳優亀岡拓次を演じる。亀岡は映画の玄人筋ではひっぱりだこになる脇役だけど、殺されたり、殴られたり、川にぶち込まれたりハチャメチャなシーンに登場させられる。私生活では独身で一杯飲み屋やうらびれたスナックで飲んだくれることも多い。突然もてたり、売れっ子になるわけでもない。そんな彼に焦点をあたえる。ある意味、渥美清の「男はつらいよ」に通じるストーリーだけど、安田顕が抑制のきいた演技で、まったくきどらない。亀岡拓次が自己顕示欲とは無縁の謙虚な人柄であることを示す。しばらく出会ったことのない非常に味がある映画だ。雰囲気に酔いしれる。

亀岡拓次(安田顕)、37歳独身。職業は脇役メインの俳優。泥棒、チンピラ、ホームレス・・・演じた役は数知れず。監督やスタッフから愛され、現場に奇跡を呼ぶ?と言われる“最強の脇役”。呼ばれればどこへでも、なるべく仕事は断らない。プライベートは一人お酒を楽しむ地味な生活。


そんなある日の夜、ロケ先で訪れた長野県諏訪市でのこと。初めて入った居酒屋「ムロタ」のカウンター席でうとうと眠りこけていた亀岡。冷たい隙間風に起こされると、そこには美しい若女将の姿があった。
名は室田安曇【アヅミ】(麻生久美子)。地元の名物だという寒天をつまみながら、気の利いた彼女の会話にすっかり癒される亀岡。「淋しくなったら、また飲みに来てくださいよ」―優しく微笑む安曇に、亀岡は恋をしてしまう。


甘い時間も束の間、再びロケや撮影所など、都内から地方へと忙しく飛び回る日々。はじめて引き受けた舞台の仕事で、劇団・陽光座の稽古場にも通う。ある日、亀岡に大きなチャンスが訪れた。彼が心酔する世界的巨匠、アラン・スペッソ監督が極秘で来日しており、その新作オーディションを受けることになったのだ。
カメタクの一世一代の恋の行方は?そして初の海外進出なるのか・・・?
(映画の作品情報を引用)

1.亀岡拓次
映画のHPを見て、設定の年齢が37歳ということを知ったが、全くその年には見えない。どう見ても40代後半の設定のようだ。仕事があれば、やりたくなくても引き受ける。独身なので、気楽に地方ロケも行ってしまう。普段は殺され役や殴られ役など何でもこなす。それを演出する監督たちから絶大な信頼がある。ストレス発散なのか、夕方は居酒屋で過ごす。それも一人酒が多い。気がつくとカウンターやソファで寝てしまうこともある。このしがない感じがいい。


飲み屋のカウンターで見る夢と、自室で見る夢と演技している時演じている姿が交錯して、ふらふらしながら亀岡拓次は生きている。そんな亀岡を安田顕が実にうまく演じた。
飲み屋でのパフォーマンスが、1人で自分が飲む時のパフォーマンスに通じていて引き込まれてしまう。




殴られ役を演じているとき、改めて亀岡を撮った映像をみると、目の玉が飛び出している。それを見てみんなから亀岡さん凄いなあといわれている姿がある意味かっこいい。

2.麻生久美子
小さい一杯飲み屋にいる女将という設定である。
これまでテレビ「時間ですよ」で影のある藤竜也が場末の小料理屋のカウンターで一人飲んでいる時、対応する女将篠ひろ子やテレビ日曜劇場「課長さんの厄年」萩原健一が小洒落たバーでしみじみ飲む時、山口いずみママが着物をきて対応する姿、ちょっと違うかもしれないが「はぐれ刑事純情派」で刑事藤田まことが通うバーで対応する真野あずさママなど、男性の自分から見てうらやましいなあ!!と思うような飲み屋のお相手を映像で見てきた。



それらに匹敵するいやそれ以上にいい感じなのが麻生久美子の女将ぶりである。普段着のようなセーターを着て、手作りのたこぶつや寒天をだす。そのしぐさや亀岡に勧められて飲む酒の飲みっぷりのかわいさなどにむちゃくちゃそそられる。客は1人しかいないけど、こんな素敵なママが1人でいたら、それを目当てに次から次へと客は来るよ。いくつもそんな店あるなあ。でもここまで癒し系はいない。

3.映画監督役
山崎努も三田佳子も50年以上映画界の現役で活躍している。凄い話だ。ここでの両者がまたいい味出している。山崎努が演じるのは巨匠のベテラン監督、スタッフからも恐れられている。俳優たちが演じた後、なかなか監督が口火をきらないで、一瞬沈黙の世界だ。この間がおもしろい。OKをだした後、周囲がほっとする感じをうまく横浜聡子監督が描き出している。


あとは大森一樹監督が地のままでている。新井の監督もいい感じだ。フィリピンバーでホステス役のフィリピン人と亀岡拓次の会話を何度も撮り直す時の染谷将太の監督姿がまた滑稽だ。なかなかOKの出ない2人のかみ合わない会話は下手な漫才よりムチャクチャ笑える。


それにしても、日本映画で西川美和、呉美保、タナダユキなどの女流監督の活躍が目立つ。この映画ってちょっとうだつのあがらない飲んだくれの役者という設定だけに普通だったら男性がメガホンとりそうなものだが、横浜聡子監督は見事に演出したと思う。まさに女性監督恐るべしといった感じだ。


(参考作品)
ウルトラミラクルラブストーリー
横浜聡子監督作品
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映画「ブラック・スキャンダル」 ジョニー・デップ

2016-01-31 19:41:25 | 映画(洋画:2016年以降主演男性)
映画「ブラック・スキャンダル」を映画館で見てきました。


ジョニーデップの新作はハゲ頭姿でちがった雰囲気だ。何度か予告編で見て、FBIとアイリッシュ・マフィアと上院議員が共謀する映画だとわかってはいた。ジョニーデップ作品では「ラムダイアリー」などのように世間一般で評価が高くなくても自分には悪くないと思えるものがある。ともかく見てみようと映画館に向かった。


FBIの捜査官としてマフィア浄化に取り組んでいたジョン・コノリー(ジョエル・エドガートン)は、南ボストンのイタリアンマフィアが自分と同じアイリッシュ系ギャング組織を率いるジミー・バルジャー(ジョニーデップ)のことを狙っているという噂を聞き、ジミーに忠告する。そして、イタリアンマフィアをつぶすためにジミーの情報を得ようと密かに協力者にしようとする。FBIの上司(ケビン・ベーコン)はコノリーのたくらみに反対するが、押し切られる。FBIの協力者になったことで、ジミーの組織はあやういことをしても捕まらない。しかも、ジミーの弟は州の上院議員ビリー(ベネディクト・カンバーバッチ)である。

やがて、イタリアンマフィアのボスが捕まると、ジミーはし放題となってしまうのであるが。。。


1.ジョニーデップ
いつもと面構えがちがう。個人的には彼の出演作品で一番好きなのはマイケルマン監督作品「パブリック・エネミーズ」である。稀代の銀行強盗ジョン・デリンジャーを演じた彼の人相はまさに殺人鬼の凄顔だったし、作品のテンポも抜群によかった。正直テンポの良さでは本作品は「パブリックエネミーズ」に劣るが、ジョニーデップのギャングとしての脅しはこの映画の方が効いている。特にFBIの協力捜査官に脅しを入れる場面には背筋がさむくなるような凄味を感じる。

自分の組織の情報を漏らそうとする人間の制裁場面も恐怖を感じさせる。誰も救えない世界で、なすすべもなく密告者は追いつめられる。

2.東映映画「県警対組織暴力」
ハリウッド映画でも実話ものも多いが、どちらかというと「ブラック・スキャンダル」は70年代の東映実録路線の映画に通じるものがある。「仁義なき戦い」との共通点もあるが、1975年の東映映画で深作欣二監督菅原文太主演の傑作「県警対組織暴力」と類似点が多い。「仁義なき戦い」の大ヒットで東映は山口組に関する映画の公開が難しくなっていた。そんな時「仁義なき戦い」名脚本家笠原和夫に警察を主演とする作品をつくらせたのだ。


主演の菅原文太演じる刑事は、ヤクザとの癒着や暴力捜査もやるすご腕刑事だ。松方弘樹演じるヤクザの若衆頭と旧知の中で、互いに情報を共有していた。そこに梅宮辰夫演じるエリート警部が強力な捜査に乗り出して組織潰しに入るという筋書きだ。「ブラック・スキャンダル」をネタバレすると、FBIとアイリッシュ系ギャングの癒着に対して、連邦検察官がメスを入れるという構図に持ち込む。全体的構図は似ている。
演歌の節回しがどれもこれもにかよるのと同じで、ヤクザギャング映画も似たような感じになるんだよね。

エニグマで好演したベネディクト・カンバーバッチはここでは普通かな。適役だと思う。うまかったのがジョエル・エドガートン。「華麗なるギャツビー」ではギャツビーの恋のライバルトム・ブキャナンを演じ、最近日本でも公開になった傑作トムハーディ主演「ウォーリア」ではボクサーを演じる。徐々に腐敗に手を染めていくワルをうまく演じて、ジョニーデップの怪演を引き出したと言える。

(参考作品)
県警対組織暴力
日本版「ブラックスキャンダル」警官の腐敗を描く(参考記事


パブリック・エネミーズ
稀代の銀行強盗を演じるジョニーデップ(参考記事)
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