映画とライフデザイン

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映画「家族を想うとき」 ケン・ローチ

2020-01-05 18:04:02 | 映画(洋画:2019年以降主演男性)
映画「家族を想うとき」を映画館で観てきました。


じつにやるせない映画だ。
「わたしは、ダニエル・ブレイク」ケン・ローチ監督の新作である。宅配業や介護に従事する人の労務環境が悪いのは日本同様英国でも同じようだ。一生懸命に働く父母のことを思えば、少しはまともに生活しようとするのが普通であろうが、息子はぐれるし、娘はさみしがる。子供の面倒を見たくても忙しくて時間がないという八方塞がりの姿を描く。

作品情報にあるケンローチの新自由主義に対する批判はずいぶんと稚拙という印象を持った。でも、映画の作り方はうまい。主人公をはじめとした出演者に圧倒的な試練を与える。行き場のない状態に落とし込む脚本の設定が残酷である。それ自体は現実性をもっている。それだけにやるせない気分になる。

英国ニューカッスルに暮らすリッキー・ターナー(クリス・ヒッチェン)は、マイホーム購入の夢をかなえるために、フランチャイズの宅配ドライバーとして独立を決意する。妻アビー(デビー・ハニーウッド)の車を売り、仕事用の大型車をローンで手に入れ、「ノルマあり」「保証なし」「ペナルティあり」という理不尽で過酷な労働条件の下、家族のために働き続ける。

母のアビーはパートタイムの介護福祉士として、時間外まで1日14時間週6日、働いている。遠く離れたお年寄りの家へも通うアビーには車が必要だったが介護先へバスで通うことになった。アビーは、長い移動時間のせいでますます家にいる時間がなくなっていく。16歳の息子セブと12歳の娘のライザ・ジェーンとのコミュニケーションも、留守番電話のメッセージで一方的に語りかけるばかり。

両親の不在により、家族がバラバラになってしまった子供たちは寂しい想いを募らせてゆく。リッキーがある事件に巻き込まれてしまうのであるが。。。


1.宅配業と労務環境
ネット通販の隆盛は世界中変わらない。英国でも同様で、宅配しているものはネット販売の品物のようだ。宅配時に本人確認のためにIDないしは身分証明書を要求しても素直に提示しない人もいる。宅配先で狂犬にかまれることもある。着ている服装にケチつけられることもある。きっと日本の宅配でも同じような面倒なことは起こっているのであろう。当局の指導で大手運送業は労務環境を改善しているようだが、この映画のように外注の宅配業者というのもいる。


現状、大手会社は労働基準局の査察を異常に気にするようになった。自社の社員について労働時間が三六協定に違反しているかどうかは厳格に査察されるが、外部委託であれば当然管理外である。働き方改革が進めば進むほど、コスト度外視で外部への業務委託が増加せざるをえない現象が散見される。ケン・ローチはどちらかというと経済音痴でコストを考慮して外部委託が増えていると述べるが違うなあ。

主人公の雇い主を悪者にしようとする気配が映画に充満するが、雇い主からすると依頼した仕事を完結するかどうかだけの問題なのだ。自営なら家庭の事情で仕事ができないならそれをなんとしても補う必要がある。仕事が完結できないなら違約としてのペナルティがあるのは当然である。

2.介護
宅配業と介護福祉士とはずいぶんとやっかいな設定にしたものだ。妻は真面目な介護士である。家族で団らんの時を過ごしているときでも、面倒見ている人から困っているという知らせが入るとすぐに駆けつける。だからといってエクストラの残業代はもらっている気配はない。これこそサービス残業である。


3.子供の呼び出し
脚本の設定だから仕方ないとは思うけど、この息子も困ったものだ。両親が生計を立てるために懸命に働いているのに、知ったこっちゃないといった感じだ。校内でけんかして相手をけがさせたのか、このままだと起訴するぞと学校から脅され呼び出しをくらう。両親ともに時間がないのに迎えに行くため無理やり時間を作る。仕事にもしわ寄せが来る。一難去ってまた一難で次は万引きで呼び出しだ。そんな状態なのに親からの説教に対しても、息子は手元で携帯をいじくっている始末、最悪だ。


こんなに大変なら仕事やめてしまったらどうかと思うが、そうはいかないのであろう。夫には両腕にタトゥがある。それなりの人生を歩んできたと考えてもおかしくない。この映画を観て、日本はまだ弱者救済の観点ではましな方だという感を持った。安倍晋三総理は最近批判されるけど、どちらかというと、右翼ずらのふりをして、やっていることは金持ちイジメで中国よりも社会主義者的な政策ばかりだから。
コメント
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