映画とライフデザイン

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映画「君たちはどう生きるか」宮崎駿

2023-07-15 20:09:56 | 映画(洋画:2022年以降主演男性)
映画「君たちはどう生きるか」を映画館で観てきました。


映画「君たちはどう生きるか」は一度は引退を表明していた宮崎駿監督の復帰作品だ。予告編もなく、事前に情報が何もない。徹底した秘密主義である。吉野源三郎「君たちはどう生きるか」との関係がどうなっているのか?すでに80を越えた宮崎駿の創作意欲を確認するために映画館に向かう。さすがに広い映画館内も満席である。声優たちのメンバーリストを見て、超豪華なので驚く。

第二次世界大戦の東京への空襲で母親が入院している病院が爆撃されて牧眞人(山時 聡真)は母を失う。その後、眞人の父親(木村拓哉)が経営する航空機部品工場のある田舎に疎開する。同時に父親は母の妹夏子(木村佳乃)と再婚して、大勢いる使用人のばあやたち(大竹しのぶ、竹下景子、風吹ジュン、阿川佐和子)と大きなお屋敷に住むことになる。そこには鳥のアオサギ(菅田将暉)が何度も眞人にちょっかいをだしてくる。しかし、地方の生活に慣れない眞人が自傷的行為を起こして、イジメではないかと父親がヤキモキする中で夏子が姿を消す。眞人は夏子を探しに、ばあや1人を連れて森に入っていく。アオサギの誘導で入った古い屋敷で奇想天外な世界に巻き込まれる。

ここからは宮崎駿のファンタジーワールドの世界に導かれる。

上質なファンタジー映画である。
吉野源三郎の本に影響されている内容かと想像したが、さほどでもない。亡くなった母のおすすめの本というだけだ。個人的には村上春樹の小説を読んでいる時と似たような感覚を味わった。村上春樹の小説では誰かが突然いなくなることが多い。ここでも同様な展開になる。このファンタジーな世界では生と死の境目を彷徨う。こういうことかと解釈は一通りにはならない。観客それぞれに何かを感じればいいのではないか。眠りに誘われることなく時間を忘れてあきずに観れる。

ここで凄みを感じたのが色彩設計だ。色合いの豊かさに魅了される。生と死をさまよう内容でも明るい色が基調だ。アオサギだけでなく、インコなどいろんな鳥が美しい色でみられる。あとは映像にぴったり合う久石譲の音楽だ。これが近来の映画にないすばらしい音色だ。ここぞという場面にやさしいピアノが基調の音楽が流れる。沈黙の場面も効果的に浮き彫りにする。映画音楽としてこれほどマッチングして、観ている我々の感覚を揺さぶる音楽はないだろう。


改めて、宮崎駿の履歴を見ていると、父親が航空機部品の製造会社の役員だったのだ。宇都宮に疎開したことや若き日に母親を亡くしたことなどこの映画に共通する履歴がある。疎開した先の学校でイジメを受けたことなども実体験としてあったのかもしれないし、大勢のばあやもいたのかもしれない。キムタク演じる父親の気が強い性格もそのまま受け継いでいるのだろう。宮崎駿監督にとっての自叙伝的要素をストーリーの根底においた感じがした。必見だと思う。
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